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海の落とし者と釣り竿  作者: うにまる
第五章 ドタバタ続きで王都再訪したら陛下が爆走

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閑話 リドルとリオとリクの工房巡りとルクレイ帰還

「「リドにぃ、おかえりー」」


 領都リガレア伯爵邸マナーハウスにリドルが訪れると双子が飛び掛ってきた。


 ラウンジで一休みしていたリドルはソファーと双子に挟まれて「むぎゅ」と声を漏らした。


「えっ? ルクにぃはまた王都に向かったの?」


 双子に教えられリドルは目を丸くした。


「「ルクにぃは」」「父様に頼まれ」「王都に行った」


 双子はバルテア伯爵にルクレイが仕事を頼まれて向かったこと。王都にいるヴィオナを連れて帰ってくる予定と話した。


『ルクにぃが迎えにってメルカド伯爵もそうするつもりなのか。マナーハウスで報告するって言ってたからもうすぐだな』


 リドルは双子を誘って身支度を兼ねた湯殿に向かった。


 晩餐の場でメルカド伯爵にリューウェンの方針を伝えた。正式に協調して製糸工房対応を進めることになった。魔石はノルド家が全面支援を約束した。


 そして翌日になりリドルと双子はヘラムたち相棒に騎乗して街中をカンコール魔道具工房に向かいゆっくりと移動していた。


「こんにちはー」「「たのもー」」


「これは皆様、良く参られましたが……何かありましたかな?」


 カンコール工房主はキョロキョロと見回して、この場にルクレイがいないことに気が付くと首を傾げた。


「「ルクにぃは」」「父様に頼まれ」「王都に行った」


 カンコール工房主の視線の意味に気が付いた双子は説明した。


「戻って直ぐに王都とは忙しいですな」


「今日は厄介草対策の魔道具の相談に来た。魔石を持ってきたから使ってくれ」


 リドルが話を進め魔石をテーブルに置いた。


「魔石ですか!……これ百個以上ありそうですが……よろしいのですか? こんなに魔石を見たのは初めてですぞ」


 テーブルに置かれた魔石の量にカンコール工房主は驚いた。


「試作を繰り返したら必要になるからな。厄介草対策は優先度が高い。魔石で足踏みは無駄な時間だから気にせず改造を優先してくれ」


 リドルは優先すべきことを伝える。


「あー、そこまで話が進みましたか。魔道具の改造は急いだ方が良さそうですな」


 カンコール工房主は本腰を入れると決めた。


 リドルと双子は工房を後にして騎乗で街中を移動して『ゴリゾン製材工房』と書かれた看板の出ている工房を見つけた。


「こんにちはー」「「たのもー」」


 三人は工房に入り声を掛けた。


「あぁ? なんだお……これはマルセリオ様とフィリクス様。本日はわざわざのお越しありがとうございます。それで……そちらの方を紹介頂けると……」


「ああ、ノルド家のリドルだ。職人に無理は言わないから話しやすい言葉で頼む。今日は製材の状況をリオとリクが勉強に来たと考えてくれ」


「「勉強しに来た!」」


 リドルと双子は事前に相談していた役回りで話を進める。他領のリドルの存在は足枷になる場合があるので勉強の付き添いを装っていた。


「勉強ですか? それはいったい……」


 ゴリゾン工房主は困惑の色が隠せなかった。


「先日は製糸工房の勉強をしてきた。大変な仕事と実感したところだ」


「「製糸工房は大変だった」」


 三人はリドルが説明して双子が反応する役割を決めていた。これは、侮られず場の空気を和らげる良い手段だろうと三人で考えていた。


 ルクレイの会話は相手の緊張を上手く解していた。三人には話術がないので苦肉の策に近いが工夫し実践していた。ルクレイが見たら目を丸くしただろう。


「製材も丸太から木材にするために大変と聞いてはいる。その聞いた知識を現場で見てしっかりしたものにする手伝いを頼むぞ」


 ゴリゾン工房主は「畏まりました」と頭を下げた。


 ゴリゾン工房主は最初に丸太置き場を見せた。多くの丸太が並べられていた。簡単な雨避けも付けられた丸太置き場は広かった。


「「丸太がいっぱいー!」」


「これでも一部です。街の外に本格的な丸太置き場があります。この丸太は木材にする直前と言ってもよい乾燥した丸太たちです」


 ゴリゾン工房主は丸太の説明をした。


「最近になって木材不足という話を聞いた。ここを見るとそうは見えない感じだな。ゴリゾンは何か聞いてないか?」


 リドルは聞きたいことをさりげなく出す。


「正直な話としては、この丸太では本来必要な分には足りません。しかし、丸太の供給が細くなりどうにもならないのです」


「「産業局が動いてないから?」」


 双子が相談していた質問を投げ込む。


「マルセリオ様とフィリクス様は良くご存知ですな。産業局の情報は回ってきました。工房としては入ってきた丸太を製材することしかできません」


 ゴリゾン工房主と三人は丸太置き場から乾燥場に移動した。自然乾燥させた丸太を加熱して追加で乾燥させる施設だが露天に置かれていた。


「丸太に含まれてる水分は自然乾燥で抜きます。それでも多いので加熱してさらに乾燥させます」


「自然乾燥と加熱の乾燥でどの程度の水分が抜ける?」


 リドルは行き詰まっていた木材の水分含有量に繋がりそうな話に食いついた。


「正直なところ目分量と経験です。ただ、重量から換算した記録はあります。自然乾燥で三割ほど軽くなります。その辺りで頭打ちですな」


 ゴリゾン工房主は「ただ……」と補足の説明を加えた。


「多湿な場所の丸太は水分が多く重量で何とかするのが難しくなります。そのため、木の種類と丸太の大きさで基準を経験的に積み上げていきます」


 リドルは「三割か」と呟き追加で質問をした。


「先程、加熱と言っていたがそれでどれぐらいになるんだ?」


「そうですな、元の重量に対しておおよそで四割ほどが目安となってます。追加の乾燥で一割ほど軽くなる計算ですな」


 ゴリゾン工房主はリドルの質問に丁寧に答えた。


「たいへん勉強になった。リオ、リク、あとで一緒に復習をしようね。メルカド領も森林が多いから役に立つ知識になると思うよ」


「「あいあいさー」」


 乾燥後の木材として切り出す場所には巨大なノコギリがあり双子のテンションが高まった。目をキラキラさせて切り分ける姿を見ていた。


「今日はためになった。ついでで悪いんだがテーブルの脚で使えそうな棒材をレベナに多く届けてくれ。あちらで棒に加工する」


 リドルは最後に棒の材料を手配した。


「分かりました。多めに回すよう手配します」


 リドルと双子は工房を後にした。その足で次は鍛冶工房を目指しヘラムたちと街中をゆっくりと移動した。


「こんにちはー」「「たのもー」」


「んぁ?……マルセリオ様とフィリクス様ですか。ここは危ないですぞ。あと……そちらのご子息様はどちらの方でしょうか……」


「ノルド家のリドルだ。職人に無理は言わないから話しやすい言葉で頼む。今日は鍛冶というものをリオとリクが勉強に来たと考えてくれ」


「「リドにぃ」」「この工房は」「めっちゃ暑いよ?」


「まぁ、鍛冶工房は暑いと決まってるからね」


 リドルは双子に苦笑いを向けた。


「最初に鍛冶工房で作っているものを二人に見せよう……工房主の名は?」


「あぁ、失礼した。ブカゾール鍛冶工房のブカゾールです」


「「カンコールさんでしょ?」」「さっき」「会ったよ」


「あっ、いやいや。ワシはカンコールの兄だぞ。弟は鉄より魔法陣が好きで魔道具師をやってる。ドワーフ族は鍛冶師か魔道具師が多いぞ」


「「カンコールさんの兄!」」


 ブカゾール工房主は三人を案内して工房の販売所に連れていき商品を見せた。


「「おぉ!」」「剣カッコ良い」「槍カッコ良い」


「あれ? これって鉄製の滑車ですか? リューウェンでは見たことないな」


「だいぶ前に川の水汲みで頼まれたやつだな。今でも水汲み場を増やしてるみたいで買いに来るやつがいるんだ。木製は気が付くと壊れてるからって話だ」


「増やしてる? 最近は給水魔道具が増えてきてるけど農作業用なのかな」


 リドルは首を傾げた。


「あぁ、果樹園を作ってみてるらしいぞ。黄色い実がなるらしい。まだ木を育てる途中みたいだな。完全に趣味と言ってたが領主様には話したみたいだ」


 カンコール工房主が答えた。


「普段は何をしてる人たちなの?」


「樵だぞ。そこの両刃の斧があいつらからの注文品だな。そのうち取りに来るだろ。そういや鉈の注文もしてたが取りに来てないな……」


 リドルは「形が違わない?」と鉈と言われた商品を見て疑問を口にした。


「あぁ、そいつは刺すこともできる剣鉈というやつだな。藪払いなら鉈でいいんだが……確かに樵と剣鉈は違和感だな。斧がそもそも強力な武具だからな」


 ブカゾール工房主はガハハと笑った。


「工房で使ってる魔導炉はどこで作られたの?」


「うちのはバストリアだな。先代が入れたんだが明らかに過剰な性能だぞ。借金なしで導入したって自慢してたがどうやったんだか……」


「稼働状況ってどんな感じ?」


 リドルは眉を寄せて質問した。


「ぶっちゃけほどほどだな。性能のせいで製鉄できる量が多いから製鉄頻度は少ない。品質が良いのできるから助かってはいるがな」


 ブカゾール工房主はまたガハハと笑った。


「もし嫌でなかったらガラスの生産で貸してもらえるかな?」


「あ?……ガラスか。あいつはガラスを溶かす温度は出せるな。だが魔石をめちゃくちゃ使うぞ? 製品にすれば利益は出るが必要な技術が半端じゃない」


 ブカゾール工房主は難しい顔で答えた。


「僕が原因でルクにぃが硝子工房を作ることになったんで手伝いたくて。硝子工房は魔導炉が必要だけど立ち上げ前に具合は知りたいかなって」


 言いづらそうにリドルは理由を伝えた。


「ルクにぃって……愛し子様か! いいぞ、どんどん手伝うぞ。原料は砂だろ? 海いけばいくらでもあるからいつでも始められるぞ!」


 ブカゾール工房主のテンションが跳ね上がった。


「原料はリューウェンから取り寄せる。分離魔道具が届いたら海岸の砂を試しても良いかな。ガラスはルクにぃが帰ってきてから始めたい」


「任せろ! ガラスをやってみたいヤツがいないか探しておく。ワシに造形の技術がないの悔やまれる! あれば愛し子様の役に立てたのに!」


「いや、鍛冶師もルクにぃには必要だと思うよ?」


 色々な武器や道具の説明を聞いていた双子を回収し三人でゆっくりと帰路につく。双子は鉄の棒を頼んだとリドルに報告した。


「あっ! あれルクにぃ!」「ほんとだ!」


 双子の声にリドルが「えっ?」と前方を見ると騎士とルクレイが移動していた、


「「「ルクにーーーーぃ」」」


 三人が大きな声で叫ぶと前を進んでいたルクレイが振り向いた。ルクレイは笑顔を浮かべて大きく手を振った。


「リオー、リクー、リドルー、ただいまーー!」


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