表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海の落とし者と釣り竿  作者: うにまる
第十三章 小山は思ったより大きく池とSUPのコラボ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/132

第四節 のんびり夕陽と増え続ける二つ名

 メルカド伯爵邸マナーハウスにも夕暮れが近づいていた。新たに造成している小山の上空に水色の板が浮いていた。


 地上では従僕や騎士たちがバタバタと拠点の撤収を進めていた。


「ふぅ、今日の夕陽も綺麗だね」


「えぇ。こうやってレイと空から見る夕陽はとても心が落ち着き幸せです。今日はユミナは別で鍛錬してましたからこのまま駆けて本館に戻りませんか?」


 水壁の上にルクレイとヴィオナは腰掛けて沈みゆく夕陽を見ていた。


「沈むまで見てたら暗くなっちゃうね。後は駆けながら夕陽を見ようか」


 ルクレイは立膝になり座っているヴィオナを優しく横抱きにした。そして立ち上がると本館に向けて水壁を展開し駆け出した。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 夕食の時間になり食堂に集まりルクレイが本日の報告をした。


「なるほど……。つまり池の方は掘り終わったから残るのは調整と庭師の作業待ちという事か。で、小山は一層目は終わったところと……。早くないか?」


 報告の中で気になった点をルクレイに尋ねた。


「やはり池の土だけでは足りなかったので岩を埋め込んでかさ増しをしてます。その辺りのズルで一層目は少し早く終わりました。転圧も簡単でしたし」


 ルクレイは予定より少し早く作業が進んでいる点はズルと申告した。


「いや……その岩が……「まぁいいじゃろ」……母上……そうですね。一層目は出来たという事だから良いペースだな。うんうん。やっぱ早くないか?」


 どうにも腑に落ちないバルテア伯爵にイゼルダ前伯爵夫人の突っ込みが入った。受け入れつつもやはり微妙な顔でルクレイにこぼした。


「いまどういった鍛錬施設を入れるかを再検討しています。坂だけというのも鍛錬の効率を考えると足りないかなって思います」


「あー鍛錬方法か……。騎士団長から報告は受けてる。かなり厳しい鍛錬のようだが取り入れて進めるそうだ。少しの間は騎士たちが減ると聞いたが……」


 どうも鍛錬の定義がズレているような気がしたバルテア伯爵だったが諦めた。


「問題ないじゃろ。元からバルとカリスタがいればどうとでもなっとったろ。そこにヴィオとルクレイがいたら相手が可哀想な状況だぞ」


 諦めたところにイゼルダ前伯爵夫人から再度の突っ込みを受けた。


「そんな事より陛下からの通達を伝えんかい」


 イゼルダ前伯爵夫人がバルテア伯爵に情報の伝達をしろと促した。


「あー、ヴィオとルクレイに伝えておく事がある。陛下から全在地貴族に通達が届いてる。陛下が裁可した通達だから正式に決まったものなんだが……」


 ルクレイとヴィオナが揃って首を傾げ「「通達?」」と声が揃った。


「あぁ通達だ。内容はいくつか正式な名前が決まったから今後は使うようにという命名に関する通達だ。この形の通達は初なんだが……」


 この通達の真意が分からずバルテア伯爵の言葉は濁りまくっていた。


「少し通達で気になった事がある。正式に決まった名前なんだが聞き覚えのあるのが結構あるんだ。『レジン』や『サバ』とか通達前から使ってるよな?」


「えっ?」


 バルテア伯爵の言葉を聞きルクレイは絶句して固まった。その横ではヴィオナがうんうんと頷き「さすが陛下です」と口角が上がっていた。


「端的に言うとルクレイがこれらを命名したから以後はこの名前を使えという通達だ。通達の中にルクレイの名前が入ってるから逃げようがない」


「んがっ……やられた。陛下の悪戯がこっちに来た……」


 ルクレイはニヤニヤと笑うヴァルディス国王の悪戯顔を思い出した。


「でだ、実はノルド家が情報を回してくれたんだが……王都ではもうひとつ、ルクレイに二つ名が増えているそうだ。何でも『名付けの賢者』だそうだ」


「賢者……盛りすぎです……ってエビとカニまでこっちに来てる!」


 バルテア伯爵から通達を受け取り目を通したルクレイが声を上げた。


「やられた……アルフォンスさんの命名分までこっちに来た。アルフォンスさんは逃げ切った形か。はぁ……まぁ仕方ないので諦めます」


 ルクレイは何を言っても二次三次被害で深みにハマるので諦めた。


「相変わらず二つ名の受け入れが早いな。まぁ、これで四個目だから慣れもする……のか? まぁ確かに王都で広まってしまうとどうにもならないな」


 バルテア伯爵は他人事という事もあり流す事にした。


「それにしても二つ名の中に『愛し子』『申し子』『英雄』『賢者』と並ぶと凄い人を想像しますわね。これが一人に集中するというのも面白いです」


「プフッ」


 カリスタ伯爵夫人の言い様にヴィオナが耐えられず吹き出した。


「旦那様、このような場で誠にすみませんが報告があります」


 侍女として控えていたユミナが夕食の場で異例の発言の許可を求めた。


 バルテア伯爵は目を丸くして「ん? 珍しいな。良いぞ」と軽く許可した。


「ありがとうございます。本日、小山を造成している場所でルクレイ様が水属性魔法大全にない発動言語をお使いになった模様です」


「えっ?」「あっ!」


 ユミナの言葉にルクレイは首を傾げヴィオナは口に手を当てた。


「んん?……もしかして『散水』? そういえば水撒きする魔法はないって聞いてたんだけど使ってたか。魔法陣が浮かんだので発動言語なのは確かですね」


「ぜんぜん気が付かなかったわ! さすがわたしのレイだわ〜」


 発動言語と気が付きながら気にしていなかったルクレイと気にもせず独占欲を前面に押し出してきたヴィオナに場の空気に糖分が流入してきた。


「魔法局に報告したばかりなんだが……どうしたものか」


「隠すほうが面倒じゃろ。とりあえずヴィオとルクレイで報告書を作りな。作ったばかりじゃからちゃちゃっと書き終わるじゃろ」


 バルテア伯爵が悩みを見せたのでイゼルダ前伯爵夫人がバッサリ切った。


「魔法陣は確認しましたが覚えようと思わなかったので確認して描き上げます」


 ルクレイは再び魔法局に報告書を書くことになった。折角なので土属性の資料請求を混ぜようと考えていた。


「それにしても池と小山の造成で水撒きする事になった理由が思い付きませんわね。理由は分かりませんがヴィオを見てるとイチャイチャのネタですわね」


 カリスタ伯爵夫人はルクレイとヴィオナを見て「手遅れね」と呟いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「そういえばレベナに工房用の製糸魔道具が到着したみたいだぞ。あれってルクレイが発注したのは報告書と一緒だったよな?」


「えっ?……報告書と同じタイミングです」


 困惑気味のバルテア伯爵の言葉にルクレイも困惑した顔で答えた。


「ノルド家の連絡船で届いたという話だしちょっとよく分からんな。リューウェンにいるリオたちに確認するよう手紙を送るか」


「あー、ナンニルさんが怪しいですね。どうせ必要になるからってリューウェンで使う分を発注する時にうちの分も発注した可能性が高いです」


 ルクレイはノルド家の連絡船が関わっていると聞いて何となく裏側が見えてきた。ナンニル工房主がノルド家に運んでもらった可能性が高かった。


「そうなのか?」


 ルクレイの推測にバルテア伯爵は意味がよく分からなかった。


「工房主たちが妙に気を利かせ過ぎて代金とかそういった部分が雑になってます。うちに来てる原料とかもまだ精算が済んでませんよね?」


「ちょっとノルド子爵と話した方が良さそうだな。場合によってはお互いが領内の精算をして数字をうちとノルド子爵家でやり取りした方が正確になりそうだ」


 色々と精算がおかしくなっている点にバルテア伯爵もまずさを感じた。


「ぶっちゃけ領の経費を考えればたいした額ではない。最近の活性化で回収の目処すら立つ。例の間伐木材もかなり需要を生んでるぞ? 色々とおかしい」


 産業局を直轄で立て直している事もあり動く数値がバルテア伯爵に直接入ってきていた。その辺りの数字がどんどん上振れして活動の活発化を感じていた。


「とりあえず工房用の製糸魔道具が届いたのは僥倖です。厄介草の目処は立ってるからレジン糸も作れるのは大きいです。ガラスも送ってるので尚更助かります」


 レジン糸を生産するための土壌として製糸工房間の交流を深めている段階である。実際の生産が始まれば交流を更に深めることができるとルクレイは考えた。


「リオとリクがリューウェンにいるのも良いですね。レベナで生産が始まる事で調整する必要が出てますが二人なら考えて動いてくれます」


「大丈夫かしら」


 ヴィオナはルクレイの言葉に不安げに問いかけた。


「二人が考えて出した結論が現時点での良い判断になるよ。状況の変化で必要になる調整はお義父さんとお義母さんがしてくれるからそれも勉強になるさ」


 状況を見て判断する力は付いて来ているので問題ないとルクレイは断言した。現時点では失敗する選択肢がそもそもないとルクレイは思っていた。


「外洋船の帆布が動き出してるので製糸工房には頑張ってもらう必要があります。改善案で王国内にどれだけの余力が作れるかで忙しさが決まります」


 ルクレイは趣味の領域で撥水糸を作れば良いと割り切っているので撥水糸の生産に関しては他人事となっていた。


 ルクレイは呑気に造成をしているが周囲は活発に動いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ