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発情と根源魔法

前略、我が国の第三王女様に押し倒された。

メンヘラタヌキに助けられた。


「ありがとうビヨン」

「…………」

「……ありがとうビヨン?」

「聞こえてなかったわけじゃないんですが!!」


タヌキは叫んだ。何なら威嚇もしている。

両手を挙げて【うぅーっ!!】と言わんばかりに。

いや可愛いんよ。


「なんでこの女にあっさり押し倒されてるんですか!!」

「いや、だって王女様相手に乱暴できないし……」

「あのままだと、ボクのご主人がこの女に奪われてたんですよ!!」

「ビヨンのじゃないし、既に許嫁だし。

 ついで言うとこの後NTRされるし」


つい勢いで原作のことを口走ってしまったが、ビヨンは頭にハテナを浮かべるだけで追及はしてこない。

たぶんこの世界NTRという言葉がないのだろう。うん、その方がいい。NTR、滅すべし。


「そんなことより……どうして漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスでデバフが解除されなかったんだろう?」


僕は改めて生成(クリエイト )したハンカチを手に持ってみる。

間違いなく付与魔法(エンチャント)が施されている。


相当高度な魔法で、今の僕の魔力量では解除出来なかった、とかだろうか?


「そんなこと!?

 ですがまぁ、理由は簡単です」

「そうなんの?」


ビヨンは気絶している殿下の額に肉球を押し当てるときっぱりと言い切った。


「この人は魔法なんて受けていません。

 ただ単純にご主人に発情していただけです。」

「なにそれ、そっちのが怖いんだけど!!」


信じられない。

まさかチョロいだけであれほど発情していたというのだろうか?


「どうやらこの痴女―――こちらの女性。

 栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングの因子を少しだけ所持しているみたいですね」

「シャイニング―――あぁ、光の魔法のことね」

「もしかして正式名称をお忘れでした!?」


ビヨンは抗議の肉球ぷにぷにをしてくるかそちらは無視して思考を進めた。


―――なるほど、オフシャルガイドブックに書かれていた光の魔法というのは栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングのことだったのか。

ちょっと原作の裏話を知れて嬉しい気持ちがあるが……。


つまりゲーム内で栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングを持っていたエミリア殿下は、相反する力、漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスをもつルイスと魔力が反発していて、本能レベルで嫌っていたり警戒していた、ということなのだろう。

―――ん?


「それってつまり、殿下の持っている力と僕が今持っている力は同じってこと?」


うっかり忘れていたが今の僕が持っているのは厳密に、正確に、あえて正しく表現するならば栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングだ。誠に遺憾ながら。

それはつまりエミリア殿下も同じ魔法を持っているということであり。


ビヨンから貰った力だけど……つまりはビヨン自身が渡した?


「この女の持つ栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングは同じものですが量も質も出涸らしレベルです。

 生成(クリエイト)付与魔法(エンチャント)といった魔法は使えません」

「そうなんだ……」

「ご主人が大海なら、この女のは吐き捨てた唾同然です」

「わかりやすいけど、何だかエミリア殿下の当たり強くない?」

「気のせいですよ、ご主人」


メンヘラペットだから襲われたことに大変ご立腹なのだろうか?

明らかにいつもと反応が違うものの恐ろしくて追及などできなかった。


「けど栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングを持っていることと発情するのと何か関係あるの?

 もしかして僕もそのうち発情とかするの?」


それならすぐにでも返却したい所だけど、どうやらそういうことでもないらしい。


「栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングは根源魔法です。

 この世界の創造主がこの世界に魔法を作りだした際に存在した最古の魔法。

 その中でも七賢者と呼ばれる魔術師たちが研究をして―――」

「ごめん、ゴメン要約して」

「……要は、凄い昔からある魔法で、人間の遺伝子レベルで刻み込まれているということです。

 動物の火への恐怖とか、そんな感じです」


なるほど、根源魔法がそんなことになっていたのか。

禁忌と呼ばれるのは強さ以前に人間の本能に起因しているのだろう。


「屈はわかったけど、それがどうして発情に?」

「ご主人の栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングの量があまりにも多すぎて、本能が遺伝子レベルで屈服し、繁殖欲求が刺激されたわけです」

「エ○漫画でしか聞かないような説明!!」


もちろんこの世界にはないんだろうけども。

つまりは魔法とかの効果ではなく、栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングの所為で本能が強制的に刺激されている状態ということなのだろうか。


「正直、ご主人の魔力量が10分の1になっていてよかったですね。

 もし100%だったら、多分出会った瞬間―――いえなんでもありません」

「すっっっごい怖いんだけども!!」


割と危機一髪だったの、僕!!

ていうかこれ、エミリア殿下ともう一人の僕を合わせたら大変なことになってこと!?


「とりあえず本能レベルで発情しているだけなら、これで解決かな?」


僕は漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスで指輪を作りだした。

性欲を抑えるような付与魔法エンチャントを施した指輪だ。


「うん、これでなら日常生活を送れるはずだ。

 指輪に関しても許嫁の証ということで付けて貰えば建前にはなるだろうし」


流石に僕と出会う度に気絶させ続けるわけにはいかないだろう。

ただでさえ少ない魔力器を更に永続的に減らしてしまうことには抵抗はあるが…今後襲われ続けることを考えると必要経費だ。


それにきっと学園編では命の危険もないだろうし、そんなに魔力は使わないと思うしね。


「ご主人、よかったのですか?」

「魔力消費のこと?仕方ないさ、まともに日常生活を送る為にはさ」

「いえ、そちらではなくて…」

「?」


ビヨンは少し考えた様子を浮かべながら、それでも意を決したように口を開いた。


「発情という本能に消滅という概念はありません。今はあくまで魔法で押さえ付け感じにくくしているだけです。その間にも徐々に徐々に蓄積していっています。」

「……」

「それに加えて発情の原因である栄光の到達点ビヨン・ザ・シャイニングを常に身に着けているわけで、発情するスピードは加速度的に増していって…」

「えっと……それって……」


大変嫌な予感がした。正直続きを聞きたくないとすら思った。

だけど無慈悲にビヨンの口が開かれた。


「指輪を外した瞬間、これまで蓄積されていた性欲が一気に爆発します」

「なにその時間停止モノみたいな展開!?」


今だ寝息を立てている許嫁を見つめる。

寝ている無防備な姿すら大変美しいけれど…指はが外れた時のことを考えると心底ゾッとした。


「よし、考えないようにしよう」

「ご主人…」


呆れた様子のビヨンを無視して、僕は部屋から出た。



「そういえばビヨン、やけにエミリア殿下に当たり強くなかった?」

「……あの王女様を見ると、嫌な記憶を思い出すんですよ。かつての仲間に瓜二つで、突然裏切られまして」

「エミリアはタヌキじゃないよ?」

「タヌキの話じゃないです!!」


想像するのはタヌキが切り株の周りで会議する光景。

なんとも微笑ましい光景だけど……。


(タヌキ会議で裏切り者がいたんだろうか……)


「絶対ろくでもない想像してますよねご主人!!」

「うーん、うん!」

「否定してくださいよ!!」



======================================


エミリアの許嫁と呼ばれた男が部屋を出て、私は静かに姿を現した。

まさかここまで入って来るとは思わず、内心は戦々恐々としていた。


「……彼女、やはり怒っていましたね」


無理もない。かつての仲間を封印したのは、私自身なのだから。

それがどんな事情によるものでも、赦されはしないだろう。


今なら、全てを打ち明けても良い。

それで元の関係に戻れるなら――どれほど良かったか。

だが、それは私の“傲慢”なのだろう。


問題は彼女ではなく、他の仲間たちだ。

あの子のように、善意を抱いてくれているとは限らない。


各々が欲望のままに突き進んだ結果、私は封印という最終手段を取った。

もし他の者たちの封印も既に解けてしまっているのなら―――


「私も……主人を見つけなくては」


当てはある。

いや、他にいないとすら思っていた。


だから今日、“我が家”へ戻ってきた。


我が子孫。

私の根源魔法を受け継ぐにふさわしい逸材を探すために。


虹色の羽を翻し、そこに現れたのは――クジャクであった。


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