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チャプター1 セシリア奪還作戦

【チャプター1 セシリア奪還作戦】


「シイナ、セシリアを載せた馬車の移動ルートと、襲撃のあったポイントを教えてほしい?」

「はい、こちらに」


流石の準備の良さと思うべきか、僕が止めなければ一人で行くつもりだったということか、シイナはメイド服からまとめられた地図を取り出した。

中には既に赤い線と〇印が付けられており、僕の要望を見透かしたかのようにメモまでされていた。


「すでに王国側も隣接する都市から憲兵を派遣している頃かと思います」

「ただ犯人も襲撃場所からかなり遠くに行っていると思う。

 その中で主要都市から離れているとなると―――」


僕は屋敷側一体の気になる部分にペンを走らせた。

その姿にシイナは驚いた表情を浮かべた。


「どうしてわかるのですか?」

「あっ、うーん。わかるというより、あまり憲兵が来れない位置を捜索したほうがいいかなって」


実際にはいくらか事情が違った。

前世の知識から、憲兵たちはセシリアを見つけたのはかなり遅れてからだったはずだ。


となると考えられるのは、捜索範囲上での見落としか。

それとも時間内に捜索出来る範囲にセシリアがいなかったかの2択。

勿論、前世の記憶のことをシイナに言うわけにはいかないので、下手な言い訳になるのが心苦しいが。


正直前者の可能性も十分あったが、それでも今は3人しかいないのだから無理やりにでも絞るほかない。

絞るほかないのだが―――。


「それでもまだまだ広いですな、ご主人」

「そうですね、リミットが襲撃者も動きやすい日の出と考えると、

 3人で探すにはとても時間が足りません」


そう。まだマップで言うところの3分の1以上が捜索範囲となっている。

既に日も沈んでおり、マップのほとんどは山林であり視界がとても悪い。


屋敷の使用人たちは現在ある事情で床に伏している。

なにより仮に手配したとしても、襲撃者に撃退される可能性が高く、そうでなくても夜道を素人が歩くのは野獣、魔物の格好の標的になってしまう。


「それは大丈夫だよ。

 3人じゃないから」


僕は立ち上がり、前世の記憶を頼りに思い出す。

夜目が利いて、移動速度が速くて、それでいて黒くてカッコいい生き物。


漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス

 我が眷属となり現出せよ」


瞬間、僕の影(演出)から、無数の小動物、鳥が現れる。

その数およそ100匹ほど。


「なんですか、これは?」


一瞬で刀を構えたシイナを僕は制止した。


「大丈夫。これこそが僕の魔法。

 漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスだよ」

「シャイニングですよ!!」


生物の生成(クリエイト)

それはゲーム内でルイスがやっていたことだった。


生み出した生物がルイスの目となり耳となり、隠密や工作などの任務をこなす。

僕の合図と共に生み出した生物たちは四方へ、上空へと散開する。


その光景を見た後……僕はその場に腰をついた。


「ご主人!!大丈夫ですか!?

 一度にあれほどの物質を生み出すなんて、無茶し過ぎですよ」

「あぁ、そうみたいだね。

 カッコつけすぎちゃった」


練習時の3倍程の魔力と魔力器を、それも一瞬で使いきった。

魔力不足のせいで貧血に似た症状。

魔力器不足により内臓でもえぐられたような気持ち悪さが感じられた。


さらにもう一つ。

その理由の所為で、僕はまるで車酔いにも似た症状を感じていた。


「ごめんシイナ。僕はしばらくここにいさせてもらうよ。

 シイナは先に襲撃ポイントまで移動していて。

 痕跡が見つかり次第すぐに知らせるから」

「わかりました。

 必ずやセシリア様を見つけ出します」


この世界にはワープのような魔法は存在していない。

ゲーム内では最終的にドラゴンに乗ることできるが基本的には馬車だ。

まぁ、シイナの魔法と身のこなしならば馬車より早くは移動出来るが、

物理的に距離が空けば埋めることは至難の業なのだ。


「あとこれも持って行って」


漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスでインカムを作り出す。

一般魔法を使えない今、通信魔法を使うのも一苦労だ。

最も、一般魔法を遥かにしのぐ通話距離と音質ではあるが。


「それと日本刀を貸して貰えるかな」

「? かしこまりました」


シイナから日本刀を預かる。

とても丁寧に手入れされた刃先に軽く触れた。


漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス


刀身に薄い膜を張る。


「今のは?」

「触れただけで気絶させることの出来る付与魔法(エンチャント)を施したよ。

 いくら相手が人殺しの誘拐犯とは言え、僕はシイナに人殺しをしてほしくないからね」

「……ありがとうございます。

 流石ルイス様はお優しいのですね」


甘い考えだとは思うけれど、今のシイナにゲームのような無機質な殺戮者にはなって欲しかった。

そのきっかけですらもだ。


「それじゃあお願い」

「わかりました」


そういうとシイナは音もなく走り出した。

今更ながらに思うのはサムライではなく忍者なのでは?という疑問だったわけだが…。


「ふぅ、もういったよなぁ?」

「はい、ご主人。お疲れさまです」



僕は地面に倒れるように仰向けになった。

貧血と頭痛と、そして何よりも視界の先で慌ただしく動く視界。


「今のご主人は練習分を含めると半分以上の魔力器を消費しているのですよ。

 安静にしていてください」

「それでも半分は残っているんだ」


ゲームみたいに魔力残量を確認する術がない。

体力同様、どれぐらい疲れているかで判断する他ないのだ。


それでも思ったより疲れたと感じるのは、普段の魔法練習ではここまで魔力を消費することがないからだろう。

既に未知の苦しみを感じている。


「ご主人の魔力量で半分ですよ。

 並みの魔術師なら5回は疲れ切って死んでいます」

「そんなにか……」


以前セシリアに並みの魔術師の10倍の魔力があると言われていた。

てっきりおべっかと思っていたのだが、本当らしい。


「ていうかビヨンは魔力残量がわかるんだね」

「はい、契約している相手のならば。

 なのでご主人以外の魔力はわかりませんが」


それでも僕の魔力量だけでも教えてくれるのは助かる。

魔力器を使い切ると死んでしまうのならば、うっかり使い切ってしまうなんてことは避けたかった。


「しかし…くっそ。

 …思ったより使いにくいな」


僕は意識を慌ただしく動く視界に目を向ける。

目線の先には100等分された画面が映し出されている。

それらは全て先程召喚し散開した眷属の視界だった。


まるでパソコンウインドウを無数に開かれたように視界には入っているもののその一つ一つがあまりに小さく、別々の動画を見ているような感覚。

この無数の視界の中から1人の少女の痕跡を探しださなければならない。


咄嗟のことだったとはいえ自分の思慮の浅さを後悔した。

結局眷属を召喚したとは言え、アナログ的な見つけ方しか出来ないのだ。


他にもっと上手い方法がなかったのか。

たとえば痕跡を見つけたら自動で信号を送るとか。

ではその“痕跡”って何だ?

足跡?落とし物?―――そんなものアイツらが隠していたら?

1つでも見逃せば、致命傷になる。ならばどうす――――


「落ち着け僕。今更後悔をするな!!」


自分自身を叱咤する。

眷属を戻す時間すら惜しい今、考えても仕方ない。

むしろ思考をそっちに取られることで痕跡を見逃してしまうことを警戒すべきだった。


「…ご主人」

「すまない、驚かせたね」


視界が目まぐるしく変わる成果、それともセシリアが攫われたことに対する不安と焦りからか、語句がきつくなってしまう。

そうだ、今できることをするしかないのだ。


僕は改めて目まぐるしく変わる視界を見つめてみる。

今の所痕跡らしいものは見当たらない。

幸いなことは出現させた生物が夜目が利く為、日の落ち始めた森の中ですら比較的クリアな視界を維持できていたことだろう。

だが、それでもだ。


(明らかに情報処理のリソースが足りてない。

 キリがいいからと100分割にしたが半分に減らすべきか?)


よほど大きな痕跡ならばともかく人の足跡レベルの痕跡では見逃す恐れがある。

だからと言って半分まで減らせば情報量も半分だ。

だが見逃す可能性があるなら意味がないのでは―――


堂々巡りの思考。その思考すら情報処理に置いての無駄だと思い振り払う。だがすぐに疑念がわいてくる。いたちごっこだ。


(何か方法があるはずだ)


漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスは何でもできる魔法だ。

不可能があるのならそれは僕自身の問題。

発想力、能力の理解、システムの構築、もしくは常識という足枷。

確固たる想像力があればどんなものでも作り出せる、文字通り魔法のような魔法。


「あっ……」

「どうしたんですか、ご主人?」


僕の表情を見てかビヨンは心配そうに声を掛けた。

きっと今の僕の表情はさぞ強張っていることだろう。

セシリアの命という人命が掛かっている今ですら、やるべきか、やっても良いかを悩んでいるのだから。


一つだけ思いついた。この場面を解決する方法を。

脳の情報リソースを減らす方法を。

人手不足を解消する方法を。


漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス―――」


僕は意を決し、縋るような思いで魔法を唱えた。


「ご主人…これは…流石に…」


ビヨンが声にならない声を上げた。

わかっている。こんなことはこの世界でも禁忌であることは、ルイス=ストレイの記憶からもわかっている。


そして元の世界では尚更だ。


ルイス=ストレイと同じ容姿、同じ記憶を持つ生物。

魔力で作られたクローン人間。

沼男(スワンプマン)と呼ばれる思考実験が生み出した存在。


僕は人体の生成(クリエイト )を行った。

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