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フォーチュン・ライト  作者: おじさま
第二章 愛を伝えよ、白銀の獣龍 〜辿り追う者の意志〜
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第四十五話 情報屋、エーテル&コルヴァス

「おー! 戻ってきたなサイト! それにランスも。お疲れ様だぜ、色々と」

「サイト君、おかえりなさい! さぁ、ここに座って座って! このシチューすっごくまろやかで美味しいんだから!」


 ギルドに戻り、食堂へと足を運んだサイトとランスを出迎えてくれたのは、ソウジとアリスで。

 二人も食事の最中であったそうで、食欲をそそる匂いを放つシチューとふっくら焼き上がったパンを口にしていた。

 机の上には大量の食器も置かれており、それらは全てアリスの前に並べられている。

 多種多様な料理、かなりの量。

 その光景を見て苦笑いをしつつ、サイトはランスと共にソウジとアリスの向かい側にある椅子へと座っていった。

 

「なんとかなったから、良かったよ。っていうか、僕自身は特別何かをしたわけじゃないんだけどね」

「そうなのか? 姫様の護衛っつーから、かなり大変な事をしてたんだと思ったが……まぁ、何もなかったんなら結構なこった!」

「うん、まぁ。後で何をしてたのかとかは説明するよ。それよりアリス、どうしたの? ランスさんのことをさっきからジッと見つめてさ。話してたよね? ランスさんについてはさ」


 軽い会話をソウジと交わした後、サイトはアリスの視線が気になって思わず話しかける。

 会話を振られたアリスは「えっ」と一瞬だけ肩をはねさせた後、バツが悪そうに後頭部をかいた。


「なんて言えばいいんだろう。ランスさんから感じ取れる気迫? 気力? みたいなものが凄いなぁって思っちゃって。思わず観察しちゃってた。ごめんなさい、ランスさん!」


 手を勢いよくパンと合わせて謝罪するアリスの姿に、ランスは少々面食らったものの特段嫌がる素振りは見せずに首を振った。


「いや、気にしなくていい。初対面で会う者の中には、俺の事を怖がったり不思議がる者もいたからな。慣れているさ。それに、俺の方こそ先に謝っておこう。君の事を視て、頭を捻っているからな」

「君の事を視て……あっ、人の魂が視れるってやつですか!? えへへ、なんか恥ずかしいですね。私の魂ってどんな形してるんだろー」

「……まぁ、追々話すさ。それよりも、だ。二人は既に作戦についてを聞いているんだろう? どういった概要だったのか、説明してくれないか?」


 ランスからの問いに対し、ソウジが頷く。

 そこからは、食事を取りながら作戦についての説明だ。

 愛情を暴走させる薬、それらを製造する洞窟に向かっての製造の停止。

 洞窟へと向かった他のギルド員の行方が分からなくなっていること、その全てを説明したソウジが一息ついた頃に、サイトが口を開いた。


「ねぇ、ソウジ。今回の一件に、厄者は絡んでいないのかな? そういう情報があったりはしないの?」 

「ん? あー、俺は詳しく知らねぇな。ランスなら何か知ってるんじゃねぇのか? ラヴィーネで起きてる事件なら、過去の事件と照らし合わせて厄者と関連付けることは出来ると思うしよ」

「ふむ……過去にラヴィーネで殺戮の限りを尽くした厄者、即ち()()()()()は、その当時にラヴィーネの内部に潜り込んで王に有用な薬を多数売りつけていた事例があったな。そうして信頼を勝ち取ったメーディアは、内部からラヴィーネを崩壊させかけたと。今回の薬の混乱とはまた違うが、似ているな」


 ランスの言葉に、サイト達は各々が深く考え込んでいく。

 過去に薬関連でメーディアの事例が起きており、今回もそんな薬による事件。

 であれば、メーディアとの関連性を疑うのは自然なことになっていく。

 警戒するに越したことはないな、とサイトが考えていたそのタイミングで。


「ちょっとすまん! 相席してもいいかい?」


 気さくな声が、頭上から降りかかった。

 見れば、そこにいたのは隼の獣族(ベスティアノス)

 ニコニコと口角の端を上げながら、彼は手に別の人物を引っ掴んで立っていた。

 もう片方の手にはトレイが乗せられており、今から食事を取る所らしい。

 そんな人物に掴まれたもう一人の人物は、恨めしそうに隼の男性を睨みながら声を上げる。


「ちょっとコルヴァス! 何でわざわざ他人と一緒に食事を取ろうとしてんのさ! 食べるんなら別に僕ら二人だけでもいいだろう!?」


 声を上げた耳長の男性、エルフ族(ナチュラノス)の人は悲痛な声色でコルヴァスにそう話す。

 しかし、コルヴァスはどこ吹く風だ。


「いーじゃんかエーテル! この人ら興味深い話をしてたし、俺らも作戦に参加するんだし! 情報共有とかやっといた方がいいだろー?」

「情報共有って言ったってね! まだ一つの情報しか得られていないんだよ! 三日間も時間があるし、その時に情報はもっと沢山揃えるつもりなんだ! だから! 今! 彼らと話す必要性は! 微塵も! 無い!!!!!」

「そう言わずにさー! なんならこの人らから情報を得ればいいじゃんか! それで問題も解決だな! うんうん!」


 能天気に明るく話すコルヴァスに、エーテルは声にならない喉の奥から絞り出すような唸り声をあげていく。

 二人が勝手に盛り上がっている状態であるが故に、どこか置いてけぼりになっていると感じたサイト達。

 誰が話しかけるか、という視線をそれぞれが交わし、やがてこの中で最も交流に適した人物であるソウジにその役目は託された。

 恐る恐る(おそるおそる)といった調子で、ソウジは彼らに話しかけていく。


「えーっと、取り敢えず二人とも座るか? 立ったまんまじゃ、落ち着いて話すことも出来ないだろ?」

「おぉ、良いのか!? いやぁ〜聞いといた手前(てまえ)、了承されるかどうか分かんなかったからありがたいよ! んじゃ、お隣失礼するね。ほら、エーテルも!」

「……全く、何で僕まで。すまないね君たち、この馬鹿(コルヴァス)に付き合わせてしまって。大して重要な話も出来ないだろうから、先に謝罪しておくよ」


 こうして席に座ったコルヴァス、そしてエーテルは、その流れのままにまだ顔を合わせていなかったサイトとランス二人に簡単な自己紹介を済ませていった。

 そうして、話の流れは厄者メーディアと今回起きている事件の話題になっていく。


「それで、エーテルにコルヴァス。君たちの持ち得る情報とはなんなんだ?」


 ランスから問いかけられ、返答するのはエーテルだ。

 彼は咀嚼していたパンを飲み込んだ後、頬杖をついて悩ましそうに口を開いた。


「僕らが調べてたのは、今回の事件に何が関連してて、どういった経緯で事件の主な原因である薬が売買されるに至ったのかっていうこと。それで、今のところ得られたのは一つの情報」

「それは、一体何が分かったの?」

「……薬を売買している店、その裏に関わっていたのは貴族の者たちだった。その店の主人と古くから関わっている商人が言うには、貴族の者が薬を酷く欲するようになったんだと。飲むと気分が果てしなく高揚(こうよう)して、嫌なことを忘れられるし幸せだから。そして、その幸せを民衆(みんしゅう)にも分け与えなければという使命感もあったそうだよ」


 エーテルの言葉に、その場の誰もが顔を顰める(しかめる)

 人の精神が暴走するような薬を、よりにもよって貴族が欲しがっていた。

 あまつさえ、そんな貴族がなんの関係もない民達にもその理解し難い多幸感を味合わせる為に、このような広まり方をしているのだ。

 サイトは拳を握りしめる。早く解決しなければと決意を滾らせていく。

 無論、それはソウジやアリスも同様だったようで、真剣な表情でエーテルの話に聞き入っていた。

 しかし、その中で一人。

 明らかに、民達を助けなければといった使命感以上の、燃え上がる感情の昂りを発する人物がいた。


 それは、ランス。


 彼の表情は、それこそいつも通りの真顔。

 しかし、サイトには。いや、なんならソウジやアリスにも伝わるであろうその感情の正体は。

 最早、『()()』とでも呼ぶべき、悪感情そのもので。

 そんな圧に気が付いたのだろう、エーテルもランスの方をジッと見つめていく。


「……僕、良からぬことを話してしまったのかな? 少し、怖さを感じてしまう程の圧だよ?」


 ド直球な物言いに、サイトが冷や汗を流す。

 今のランスにその言い方は、更に地雷を踏み抜きかねないと。

 しかし、ランスは一転してその悪感情を落ち着かせていくと、エーテルに向かって頭を下げていった。


「すまない、エーテル。俺の個人的な私情を挟んでしまった。お前に落ち度は一切ないと言っておく」

「そう? ならいいや。ともかく、僕が持ち得てる情報はこれだけ。厄者との接点も今のところ分かってないし、これから話し合いをするにしても憶測の域を出ないかなーって思うね」

「ふむ、そうだな。ひとまずの作戦は洞窟に向かい製造の中止をさせることだが、それらの話も念頭に置いておこう。事件が解決した後、必要になる情報かもしれんからな」


 気が少し緩むような、そんないつも通りの調子で話し始めた二人に、サイトとソウジ、アリスの三名は一つ息を吐いた。

 特に、サイトはランスが抱える過去の出来事についても少しだけ知っている為、尚のこと安心する。

 どうにか場の空気が持ち直されたかと思った、そのタイミングで。


「なぁ、ランス。単純に気になったんだけど、何でさっき一瞬あんなに怒ったんだ?」


 爆弾が、ぶち込まれる。

 発した本人、コルヴァスは混じりっ気なく純粋にその疑問にぶち当たったらしい。

 悪気なく放たれたその言葉に、全員が呆気にとられる。

 ランスは、視線を落としたまま何も言わない。

 また、空気が凍り付いた。

 冷え切る空気の中で、エーテルがバシバシと強めにコルヴァスの頭を引っ叩いていく。


「馬鹿、マジモンの馬鹿でかつ阿呆鳥(あほうどり)! さっき彼が私情だっつってたろうが! プライベートでデリケートな話題なんだよ察しろよ!」

「えっ! あっ、あー……そっ、そうだったのか! ごめんランス! 俺、無神経にあんたの気持ちを踏みにじっちまった! この通りだ! 本当にごめん!」

「ほんっとうに……! ランスさん、僕からも謝罪を。申し訳ない、気分を害しただろう?」


 頭を下げるコルヴァス、並びにエーテルからの謝罪を受けたランスは、首を横に振って彼らに返答していく。


「いや、問題ない。悪気があったわけでもないし、そもそもこれは俺の未熟さが招いたことだ。だから、お前たちが気に病む必要はない。……まだ料理が残っているな。冷めきる前に、早く食べてしまおう」


 そう言って、ランスはまだ残っていたパンとシチューを食べていく。

 話題を変えようとしてそう言ったのだろう事は、すぐにサイト達には分かった。

 だからこそ、彼らも特に何も言わずに料理を共に平らげていく。

 そして、全ての料理が無くなった後。

 ランスはトレイと空になったバケットを手に取り、立ち上がった。


「では、俺はこれで失礼する。作戦の当日、どうなるかはまだ分からないが……もし共に行動することになれば、その時はよろしく頼む」


 淡々と、それだけを告げてランスは去っていった。

 もうそこに悪感情は感じられず、普段通りのランスではあったのだが……サイトはどこか気がかりで。

 ソワソワした気持ちでいたところに、アリスから声がかかる。


「サイト君。ランスさんのこと、気にしてるの?」

「えっ!? うんまぁ、そう、だね。気になってる」

「やっぱり。じゃあ、行った方がいいね! 片付けとかは私達がしておくからさ。ほらほら、急いで急いで!」


 急かすように、アリスはサイトの背中をグイグイと両手で押していく。

 そんな彼女の強引な方法に、サイトは戸惑いながら他の面々の顔を見た。

 コルヴァスは手を振りながら「いってらっしゃーい」と呑気に間延びした声色で見送る姿勢で。

 エーテルはチラリとサイトを一瞥するのみで、後は知らないふり。

 ソウジは生暖かい視線を送りながら、サムズアップしている。

 三者三様、ある意味背中(せなか)を押してくれているのであろうかとサイトは内心ため息をこぼす。

 しかし同時に、ありがたくもある。

 サイトは皆に流されるまま、ランスの後を追っていった。


 そんなサイトを見送ったソウジ達は、そのまま片付けの態勢に入る。

 それぞれが手際よく皿やバケットを片付けていく中で、ソウジはアリスに嬉しそうに声をかけていった。


「アリス〜。さっきの助け舟、すっげぇ良かったじゃんかよ〜! 俺、感動しちまったぜ!」

「えぇ? そんなに良かったかなぁ? 私はただ、サイト君が悩んでそうだったから、その手助けが出来ればと思ってやっただけで……特別な事は何もしてないよ」

「そんなこたぁない! 困ってる奴を見て、ほっとけなくなって、だから助ける! それはな、誰にだって出来る事じゃないんだ。他人を思いやれる優しい奴だからこそ、出来る事なんだぜ?」


 ソウジは嬉しさのあまり、尻尾を勢いよく振りながらそのように話した。

 とてつもなく、いつも以上に褒めちぎる様子にアリスは照れ笑いをするしかなくなってしまう。

 そんなソウジの言葉に更に乗っかる人物が、一人。


「俺も俺も! 俺も思っちゃったぜすんごくカッコよかった! いやぁ、この優しさは世界を救えるね、マジでそう思った! エーテルにも見習わせたいぐらいかも!」

「……流れで僕を巻き込むのやめてくんない?」

「なっはっはっ! えーっと、アリスちゃんだったっけ? 君も、それにソウジ君も追いかけていったサイト君も! みんなみんな、善き人だねぇ〜!」


 うんうんと頷きながら、コルヴァスも嬉しそうに話す。

 話の流れで軽く貶されたエーテルは、呆れと疲れからか覇気がない。

 そうして会話が弾む中で、褒められ過ぎて顔がかなり真っ赤になっていたアリスは、話題を変える為に口を開く。


「あの! コルヴァスさんとエーテルさんは、どうして今回このラヴィーネに来たんですか? 雇われたんだとは思うんですけど、一応聞いておきたくて」


 アリスの問いに、コルヴァスとエーテルは顔を見合わせる。

 エーテルが逆手でひらひらとコルヴァスに手を振り、それを見たコルヴァスが片手でオッケーのサインを作ると、彼はアリスに向き直って会話の態勢に入った。


「俺らは、()()()なんだ! 世界中のありとあらゆる場所に赴いて、様々な情報を仕入れてそれらを人や組織なんかに売ったりするのが主な仕事さ! 今回は情報収集したくて、この作戦に参加させてもらったんだ〜」

「情報屋だったんだ……! あっ、だからエーテルさんはやけに情報に対して並々ならぬこだわりがあったんですね。人の行動を簡単に左右しかねないから……」

「……ふぅん。君、結構いい事を言ったよ。そう、情報は便利に使える時もあれば、簡単に人を破滅に追いやる事も出来る。だから、そこら辺の取り扱いには最大限に気を付けるのさ」


 アリスがエーテルに向けた言葉。それが少しだけ関心を寄せたのか、アリスに対して視線を向けて会話を始めるエーテル。

 気分を良くしたのか、彼の口からどんどんと言葉が溢れ出てくる。


「そも僕らの扱う情報というのは、起きた事象を裏付ける為の確たる証拠を指してるんだ。人々が噂している話を更に深堀りし、綿密に調べ上げて安心できる情報を提供する。それが僕らのポリシーであり、仕事として成り立つに値する程の情報屋として活動できる証なのさ。更に言うなら情報というのは単に一人の人物が発したものだけでは確定的なものに出来るわけではない。様々な者が同じような話をしていて、そこに目撃証言や実際の証拠品なんかも交えられていって初めて情報として扱えるかどうかの指標になってくる。ここで厄介なのはそれらの苦労を重ねて得た情報でも、扱えるかどうかは僕ら自身で精査しなければならないのがまた大変で愛おしい作業なんだ。更に更に話を加えていくと、僕らは他者を貶める為に情報を扱っているのではなく、あくまで真実を――――」

「はいはいそこまでだぜエーテル」

「あふん」


 徐々に加熱するエーテルの答弁に目を回し始めたアリスを見かねてか、コルヴァスが頭に軽く手刀をかまして止める。

 気の抜けた声をあげたエーテルは、その次の瞬間には自身が行った事を思い出したのかばつが悪そうに顔を背けてしまう。

 そんな様子に、ソウジも半ば面食らったような顔をしながらも感心したような声をあげていった。

 

「はー、エーテルはすんごく色んな事を考えて情報屋の仕事をやってんだなぁ。すげぇもんだ。俺なんかは考えることが多すぎて、頭ふっとーしそう」

「あっはは……でもまぁ、実際凄いんだよなエーテルは。そういう情報集めの大半は、こいつに任せっきりだもん俺。頼りっぱなしってなもんだ」

「……なんかいい感じに纏めてるけど、君がアリスの事を僕に見習わせたいって言ったの覚えてるからね?」


 ジト目で見るエーテルに、軽い調子で謝るコルヴァス。

 そんな彼らを見て笑うソウジの傍ら、アリスは何かを考え込むようにして俯いていた。

 神妙な面持ちの彼女に気付いたソウジが、心配するように声をかける。


「アリス、どうした? 凄く真剣な顔だが」

「あぁ、えっと、その。エーテルさん達に、聞きたい事があって。でもいいのかな、出会って間もないのにそんな急に尋ねても……」

「えぇーなになに? アリスちゃんからの質問ならオールオッケー何でも聞いていいよー! じゃんじゃん質問しちゃってー!」


 コルヴァスが軽く承諾し、エーテルも返答をすることこそしなかったが、目くばせで了承をする。

 二人の了承を得たアリスは、一つ深呼吸を挟むと……ある質問を投げかけた。


「二人は、どういう経緯で情報屋をやるようになったんですか? そこまでのやる気を見出すほどに、貴方達がその道を志す事が出来る理由を知りたくて」


 問いかけたのは、どうして情報屋をやるようになったのか。

 そして、何故そんなに自分らしく在れているのか。

 問いかけられ、まず先にコルヴァスが(くちばし)を撫でながら答える。

 

「何で情報屋になったか、か。俺は、自由を求めたから、かな。窮屈な世界が退屈で、嫌で。だからこそ、大空に羽ばたいてどこまでも飛び立ちたいって思って行動してたら、いつの間にかそうなってたよ」

「自由を……エーテルさんは、どうですか?」

「……質問へ答える前に、気になってた事を聞いてもいいかい? 君、もしかして勇者じゃあないのかな? ギルドでは珍しい、覚醒石を保有していない一般人だったりして」


 朗らかに答えたコルヴァスとは対照的に、エーテルの視線は鋭くなる。

 けれどそれは敵意、というよりは……興味深そうな視線の様だった。

 そんな彼に対し、アリスは下手な言い訳もせずにありのままを話す。


「そう、です。私は、覚醒石を持ち合わせていない、ただの一般人です」

「ふーん。分かった、じゃ少しだけ答えるよ。僕は周りの村の連中が嫌いだったんだよ。閉塞的で、薄暗くて……世の現状を憂うだけで何も変えようとしない、周りがね」

「周りが、嫌い」


 ありのままを話したアリスに待っていたのは、そんな、アリスからすればかなり驚きな言葉で。

 アリスは周囲の人々を、村の人の事をこの上なく愛していたから、尚の事。

 エーテルは続けて話していく。


「だから、僕が変えてやるって。こんな暗くて嫌な世界を、良い出来事だけで埋め尽くしてやるってね。だから、先んじては情報を集めて広める職種になったのさ。まぁ、何が言いたいかって言うと……どんな状況下にあっても、諦めなければ必ず道は切り開けるって事さ」


 彼の言葉を、アリスは真剣に聞いていた。

 一つ一つの言葉を、胸に刻んでいくかのように。

 話し終えたエーテルは、椅子から立ち上がる。


「じゃ、これで僕は失礼するよ。楽しかった、また機会があったら話そうよ。それじゃね」

「あっ、エーテル待てよ! 俺もこれで失礼するね! また会おう! ばいばい!」


 そうして、二人は立ち去っていった。

 話を聞き終えたアリスは、ソウジの方に顔を向け勝ち気な笑みを浮かべて宣言する。


「ソウジ。私、頑張るよ。今よりももっともっと頑張って、皆を守れる自分になる!」

「へへっ、おう! 応援してるぜ、アリス」


 二人は拳を突き合わせて、友情を交わす。

 その想いが、決意が。

 後に希望となり得ることを、信じて――――。

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