ふふふ
「氷室さん、つまりあなたは、サンライズファンドに恨みを持っていた。それに関わった五人を、全員殺す計画を立てた」
「そう」
「そして、山籠もりというイベントを持ちかけ、五人を一か所に集めた。そして、その五人の間で、ドミノ倒しのように殺しの連鎖が進むよう仕向けた」
「そう。神崎にイベントを持ちかけるよう若月さんに仕向けたのも私。『良かったら、誘ってみるといいかもよ』って、軽くね、敢えて。若月さんが自発的に神崎に提案する形になるように。もし神崎が、私が持ちかけた提案と知ったら、犯人は私と確信してしまうから。……計画は完璧だった。ただドミノは最初の一つ目が倒れないと何も起こらない。実は私、不安だったの。黒木の殺意が、神崎のことは後回しになって、犯人だけに向かないかって。だから、ちゃんと神崎にも同じ殺意を持っていると分かったとき、嬉しくて泣いてしまったわ。ああ、これで全てのドミノが動くって」
西日が雲で隠れて薄暗くなる。
健が、メモを取る手を止める。
「しかし、いくらなんでも上手く行きすぎじゃないか? こんな簡単に、人が人を殺すよう誘導できるとは思えないのだが」
「ふふふ」
「どうした? なぜ笑う?」
「いえ、あなたは入念にこの事件を調べ上げて、このドミノ殺人に辿り着いた。それを、犯人であろう私に直接ぶつけてきた。それでもなお、本当にそんなことができたのか信じられないなんて──と思ったの」
「ああ、信じがたいな。このドミノ殺人、正直、半信半疑でぶつけてみたが、どうやら本当らしいとは思っている。あなたの回答は全て的を射ていて、説得力もある。ただ一点、なんでこのドミノ殺人が実現可能と思えたのかが分からない。俺は、起こった結果から推測して辿り着いただけだ。だが、そもそも、こんな計画を立てたところで、実際に五人がその通りに殺し合うなんてあり得ない──普通はそう考えて実行に移せないだろう」
「うーん、これまでの私の話、信じられないかしら? 嘘はついていないのだけど」
「あなたは賢い。ここには二人しかいない。この会話は誰も聞いていない。メモに意味はない。仮に録音して警察に持ち込んでも、『仮の話をしていただけ』とシラを切れば、どうとでもなる。──あなたは、そう思っている」
「そうよ」
「そうして今、このネタばらしの状況を楽しんでいる」
「正解」
「そして俺が来た理由も分かっている」
二人は、静かに互いを見た。五秒ほどだったが、もっと長く感じられた。




