一つ目
「まず一つ目のドミノは、黒木さんによる神崎さんの殺人です。黒木さんは、もともと正義感の強い人だった。このグリーンライフファンドにも──もちろんサンライズファンドの頃から──こんなことはやってはいけない、という思いを持っていた。奥さんが、そう言っていました。自分も共犯者ではあるが、その正義感が暴走して神崎さんを殺した。これは、あり得なくはないかと」
「まさか……信じられません。でも、奥様がそんなことを……」
「はい、涙ながらに。しかも、黒木さんは元医学部。心臓を一突きできるのは、八人の中で彼一人でしょう。これは警察も認めている。だからこそ、彼が犯人だとの見方がある」
「確かに、外部犯を除けば、黒木さんの可能性が高い、というお話はあったかと思います。ただ、推測でしかありません。証拠もありませんし」
健は続ける。
「二つ目のドミノは、白石さんによる黒木さんの殺人です」
「え? 白石さんがなぜ?」
「白石さんは、神崎さんに想いを寄せていた。複数の関係者が証言しています」
「はい、それはその通りです。誰の目にも明らかでした」
「その神崎さんを殺したのが黒木さんだと知ったら、白石さんはどう思うか。彼女の手帳やインビテーションレターにも記されていた狂信的な内容を考えれば、黒木さんを殺したとしても不思議はない。もちろん、誰かが白石さんに『神崎さんを殺したのは黒木だ』と吹き込んだ、という前提は要りますが」
氷室は、黙って聞いている。
健は続ける。
「三つ目のドミノは、赤沢さんによる白石さんの殺人です。赤沢さんは誰よりも金に執着していた。異常なほどに。前の法律事務所も金銭トラブルで辞めている。神崎さんが死に、二号ファンドはもう無理だとなった時点で、一号ファンドの取り分だけを持って海外逃亡するのが最善と判断した。そんな中、それでも二号ファンドを立ち上げようとする白石さんはリスク要因だった。白石さんを殺せば人数が減り、自分の取り分も増えるので一石二鳥、というわけです」
氷室は、今度は真顔で健を見ている。
「そして四つ目のドミノ。赤沢さんを、兄が殺す。兄は白石さんを愛していた。いや──生きる理由だった。敵を討ったあと、生きる意味を失って、自ら死んだ」
「その自殺は、正確には、神崎が仕込んだ毒入り葉巻を吸って、だけどね」氷室は言った。




