追加戦士の悲哀①
振りでも天音たちと敵対するのは嫌だ。
正体を偽るのだってやりたくない。
本音はそれだがシロの提言がご尤もなのもまた事実。
結局、私は彼女の頼みを受けることにした。
――――そして一ヵ月。
「またあんたなの!?」
その日私は正体を偽ったまま天音たちと三度目のエンカウントを果たしていた。
一回目、二回目と本当に大変だった。
先んじてレムナントを倒すということは先んじて察知し動かねばならぬということ。
そこの問題どうするんだとシロに聞いた際、
『私が三人の感知を誤魔化すにゃ』
と言われたがやり過ぎれば違和感を覚えられてしまう。
ないよりはマシ程度のデバフだったので常に余裕がなかった。
だがそれも今回で終わり。
シロの立てた予定では三度成功したら次のステップに進むことになっているからだ。
「あの、あなたは何者なのですか?」
「……へえ、今回は話を聞いてくれるんだ」
足を止めた私を見て乙姫が探るような視線を向ける。
これまでは無言で立ち去っていたからね。
少しでも情報を得ようと身構えているのだ。
三人組の頭脳担当らしい振る舞いに私はちょっと興奮していた。
(そうそう。こういうの、こういうのなんだよ)
キャラによる役割分担ね。
天音がガー! っと突っ込む役で乙姫が一歩引いて俯瞰する役。
咲耶は控えめで自己主張はあまりしないがいざという時のブレーキ。
三人組のお約束って感じで実にグッド。
(よし、良い感じにテンションを上げられたし頑張ろう)
次のステップに移れるのはありがたい。
でもそれはそれとして気乗りしないのも事実だったからありがたい援護射撃を貰った。
「……浮かばれないな」
「「「?」」」
「君たちは自分がどんな存在であるかを理解っていないんだろうな」
何言ってんだテメェ? と思われるかもしれない。私もそう思う。
でもこれがシロの脚本なのだ。
ふわふわ意味深なこと言って戦う流れに持ってけってさ。
「は? どんなって魔女なんですけど?」
「天音さん天音さん。見習い忘れてます」
「こういう時は吹かすぐらいが丁度良いんだって!」
こそこそやってるのキャワワ!
「何故、一度滅んだ魔女がまた生まれたのかを考えたことは?」
「……あなたは知ってるって言うの?」
あの時、シロが語った新世代の魔女誕生に纏わる経緯。
それを彼女らはまだ知らない。
まだ語るべき時ではないとシロが判断したのだ。
変に重いものを背負わせたくないという配慮だと私は知っている。
知っているのにこんなこと言わなきゃいけないんだからホント、やってらんない。
「さてどうかな」
あからさまに見下した態度を取れば予想通り天音が噛み付いて来た。
「馬鹿にして……! んな思わせぶりな態度しといて何言ってんのあんた!?」
ホントにな。
「あのさ、会話する気ないなら何のために足を止めたわけ?」
少し苛立ったように乙姫が言う。
大人びていてもやっぱり子供なんだなと少し安心した。
「テスト」
「は?」
さあ、いよいよ本番だ。
「危ない乙姫!!」
割って入ったのは天音だった。
私の蹴りをステッキの腹で受け止めしばし競り合う。
だが膂力の差で押し切られ吹き飛んでしまう。
「何のつもりか知らないけどやってくれたね!!」
「こ、の! よくも天音さんを!!」
足手纏いにならないようにと距離を取っていた乙姫とようやく意識が追いついた咲耶。
二人は同時に左右へ別れ私を挟み込むとステッキから光弾を放った。
弾幕と呼ぶに相応しい量のそれだが、
「甘い」
その場から一歩も動かず剣を振るって全て叩き落とす。
しかし二人の顔に焦りはない。
何故かって?
「甘いのはどっちかしらねェ!?」
天音だ。
弾幕はあくまで目くらましで本命は天音。
示し合わせたわけではないだろう。
この連携は互いの信頼の下に成立しているものだ。
天音ならばやられっぱなしで終わるわけがない、と。
(最ッッッッ高に燃えるシチュエーションだわ!)
正直、食らってあげたい。
でもそれだとシロのオーダーに背くことになってしまうのだ。
「ぶっ飛――――」
「甘いのはどっち? そっちだろ」
天音の狙いは超至近距離からの砲撃だ。
「がっ……!?」
だからカウンター気味に剣の柄を腹に叩き込む。
「「天音!!」」
再度、吹っ飛ばされた天音。
咄嗟に飛び出した二人が受け止めるが勢いを殺し切れず諸共に吹っ飛んでしまう。
「……あんたが何考えてんのか知らないけどさ」
「普通に話をする気がないのはよ~く分かったよ」
「ここからは、本気で行かせて頂きます」
これまでは私が状況を動かし、それに対応していただけ。
だから完全に意識が追いついていなかったのだろう。
けど、これで完全に意識が切り替わったようだ。
(てか流されてる状態でもあんな連携取れるあたり……やばくない?)
中身おばさんの私は良いよ。
あっちは正真正銘のJSよ? 将来が末恐ろしいわ。
(今は私のが強いけど正直、その内追い抜かれそうだよね)
言うて追加戦士枠だから私。
最初は強キャラ感あるけどやっぱ最終的にはメインに帰結するっていうか。
「悔しいけど、今のあたしたちじゃ一人でアイツどうにかすんのは無理よ」
「……となると、“あれ”っきゃないよね」
「でも、普通にやっても無理ですよね」
小声で囁き合う三人。
何をやろうとしているかは見当がつく。例の合体攻撃だろう。
確かにあれなら私も倒せると思う。
でもそれは当たればの話だ。モーションが大きいので普通にやってもまず当たらない。
「分かってる。だから――上手いことやるわよ!」
「いや曖昧か」
「フフ、でも天音さんらしいじゃないですか」
三人が表情を引き締めステッキを突き出す。
「気合十分って感じかな? でも残念」
白けたように溜息を吐き言ってやる。
「もう終わってる」
「「「!?」」」
一瞬で距離を詰め三人の間を通り過ぎる。
三人は咄嗟に動こうとするも地面から飛び出した黒いリボンに拘束され阻まれてしまう。
「ちょ、何これ……離しなさいよ!!」
どれだけもがいても引き千切れない。
魔法を使おうにも上手くいかない。
完全な詰みである。
「君たちに新世代の魔女を名乗る資格はない」
そう言い残してぎゃーぎゃー言ってる三人を置いてこの場を去る。
そしてそこそこ離れた場所で見守っていたシロクロに合流。
「……これで良いの?」
「バッチリにゃ! 要ってば女優ね!!」
「お前本当に空気が読めないな。要、君の仕事は終わった。早く戻ると良い」
クロが気遣うように言葉をかける。
そう、私、遊んでたんだよね。あの三人と。
(どんな顔で天音たちを迎えれば良いのよ……)
ああ、早く正式加入したい……。




