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アラサーOLが転生して王子様キャラを気取った結果  作者: クマン蜂兵衛


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白猫のお願い

(最高の一日だった)


 時刻は午前零時前。

 良い子はそろそろ寝る時間だ。女の子なら尚更、夜更かしは美容の大敵だから。

 今日一日の楽しかった思い出を噛み締めながら私も眠りに就きたいところなのだが、


「そろそろ来るそうだ」

「了解」


 これからシロとの話し合いが待っている。

 天音と一緒に暮らしているらしく彼女が寝たら抜け出して来るとのことだった。

 猫なんだから自由にやれば良いと思うがあっちにはあっちの事情があるのだろう。


「お待たせしたわね。これ手土産にゃ」


 時計の針が頂点で重なったところで窓がノックされた。

 開けると背中に風呂敷を背負ったシロがぴょんと中へ入って来た。

 お土産はケーキらしい。何時買ったとかお金持ってるのとか色々気になるがまあ良い。


「さて。じゃあ事情を説明してもらおうか」


 一人と二匹分のお茶をテーブルに並べ切り出す。

 こんな時間に甘い物食べるのはちょっと背徳感あるけど、子供だしまだセーフ。

 色々気にするのはもっと大きくなってからで良いだろうと自分を納得させる。


「そうね。まずはどこから話すべきかにゃ」

「お前が生きていた理由からだろう。……私が要らぬ懸念を抱かせてしまったからな」

「気にしなくて良いにゃ。実際、不審に思う気持ちも分かるし」


 紅茶で軽く舌を湿らせてからシロは語り始めた。


「結論から言うと私が生きているのは御主人たちが生かしてくれたからにゃ。

でもそれはクロのような感じではにゃいの。勿論、そういう気持ちがなかったかと言えばあったとは思うけど」


 一番ではなかった。

 もっと大きな理由があったのだという。

 ちなみに他の使い魔が存命時に姿を見せなかったのは眠ってたからだとか。

 どうも決戦で負った傷が癒えていなかったらしい。


「ある段階で御主人たちは勝利を確信したのにゃ。一人残らず魔女は死ぬけど勝てると」

「それは」


 勝ち取った未来に自分たちの居場所はない。

 それは一体どんな気分だったのだろう。

 少しだけ胸が痛くなった。


「……あなたは優しい子にゃのね。フフ、天音たちもそうだけど本当に嬉しい」

「……顔に出てたかな?」

「ええ」


 話の腰を折ってごめんと謝罪すると良いのよとシロは笑った。

 淑女猫だな。可愛さだけでなくお淑やかさも兼ね備えてる。


「問題は勝った後。恐怖の大王は倒れても、死後の影響力は残るんじゃにゃいかと懸念を抱いたの」

「……レムナントの出現を予期していた?」

「そう。にしても違うタイミングで遭遇したのに同じ名前をつけるだにゃんて不思議ね」


 フフ、と笑いシロはこう続けた。


「あれほどの超越存在。その死体が遺るだけでも後世に何かしら良くない影響を及ぼすのは間違いない」


 力のある魔女が一人でも残ればその人に対処を任せれば良い。

 だが全滅は避けられない。ならばどうするか。


「新しい魔女の出現に賭けたの」


 分の悪い賭けというか、まったく根拠がなかったわけではないらしい。

 長くなるのでそこは省くとのことで私も同意した。

 私にとっての本題は別にあるからだ。


「つまり君はそのサポートとして?」

「ご名答。より正確に言うにゃら発掘係でもあったわ」


 曰く、新しい魔女が誕生するにしても自然には生まれ得ない。

 何かしらの刺激で分厚い岩盤を破ってやる必要があるとのこと。


「ねえクロ、それって」

「ああ。期せずして私たちも同じことをしていたらしい」


 クロの御主人が力を注ぐことで開花を阻む壁が壊れた。

 結果、私は目覚めたというわけだ。そして天音たちも。


「あちこち世界を巡って遂に私は素養を持つ子たちを見つけたにゃ。

最初は天音、次は咲耶、その次は乙姫って感じで。

保護者としての贔屓目もあるけど三人は優れた素養を持つ子たちよ」


 でも、とシロは深々と溜息を吐く。


「……不安があるのもまた事実にゃの」

「不安?」

「それを話す前に確認だけど要は寄生型のレムナントを知らにゃかったのよね?」

「ああ。分かり易い怪物みたいなのとしか戦って来なかった」


 そう答えるとシロは更に溜息。


「始まり、ベースは怪物型でそこから派生したものが寄生型にゃんだと思うわ。

でも私たちの場合はむしろ怪物型より寄生型と対峙する方が多かったにゃ」


 憑りつかれた人々が悪事を犯そうとしていたのを阻止し引き剥がして倒して来たらしい。

 何か本当に変身ヒロインものみたい。

 悪者に欲望を増幅させられて悪事に走るのを止めるとか定番だもの。


「エンカウントに差異が生じた理由はまあ置いておくとして何で寄生型のようなものが居ると思う?」


 シロに問われ考えを巡らせる。

 何故、何故か。ベースは怪物型でそこから派生したというのがシロの見立てなのよね。


「…………学習? 進化? 或いは適応?」


 考えに考えて一つの仮説を思いつく。

 だがそれは肝が冷えるようなものだった。


「大元である恐怖の大王は真っ向からぶつかって魔女たちに敗れた」


 だから同じ轍を踏まないためにアプローチを変えた。

 もしこの仮説が正しいとするなら……。


「私もシロから話を聞いてそこに思い至った。そして今、君が抱いている懸念にもな」


 つまり、


「……連中は人間の悪意を学習している?」


 人間の悪意に際限はない。

 もしそれをレムナントが完全に学習してしまったのなら。

 三人の子供を排除することぐらい容易だろう。

 言いたくはないが私でも間接的なやり方を幾つか思いつくぐらいなんだから。


「ええ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って。じゃあ、何かい?」


 何故、私が正体を晒すことを止めたのか。

 懸念を理解した上で考えれば自ずと私に求められる役割も見えて来る。


「――――私に“安全な敵”になれと?」


 何時か訪れる未来への予行演習として非情に振舞えと言うのか。

 私がそう問えばシロは慌てた様子で首を横に振った。


「さ、流石にそこまでのことは頼めないにゃ! しっかりしてるとは言え要もまだ子供にゃんだし」


 意思持つ存在が敵になるかもしれない。

 そんな危機感を持たせるぐらいで今は十分だとシロは言う。


「……じゃあ具体的に私にどうしろと?」

「邪魔をして欲しいのにゃ」


 普段なら天音たちが先に倒すはずのレムナントを私が先んじて討伐。

 そして姿を見せてあれこれ意味深なこと言って欲しいのだとか。


「他にも力を見せてみろとか言って三人と軽く戦って圧倒してみるとか?

実力差から言って本気で傷付けずとも無力化出来ると思うし。

ああでもまったくのノーダメはあれだから適度に、適度に頼むにゃ。

それで君たちに魔女の資格はないとか突き放すのも良いかも?

こう、何ていうのかにゃ。敵か味方かみたいな振る舞いをして欲しいっていうか」


 いや、あんた、それ、


「ほら、要って属性を持たないし変身した後の衣装も三人とは全然違うじゃにゃい?

良い感じの胡散臭さを醸し出してるから三人も良い感じに危機感を抱いてくれたりしにゃいかなって」


 どう考えても追加戦士枠の初期ムーブじゃん!!

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そのポジション下手したらずっとカッコいい認識が入るから魔法使いたい放題になるのでは?
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