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アラサーOLが転生して王子様キャラを気取った結果  作者: クマン蜂兵衛


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お約束 後編

(よし、そろそろ追うか)


 興奮しつつもやるべきことは間違えない。

 万が一があった時、直ぐに飛び出せるようコッソリ着いて行くつもりだ。

 良い感じに距離が離れたのを確認してから私も変身して飛び出す。

 例の魔道具は常に所持してあるので偽装に関しては完璧だ。


(どれど――――……は?)


 気配を辿った先では戦闘が始まっていた。

 ここまでは良い。問題はここからだ。


(に、人間……?)


 私の知るレムナントは様々な異形の怪物だった。

 昨日三人が戦っていたのもそう。だが今、戦っているのは違う。

 黒い靄のようなものが纏わりついた人間が信じられない馬鹿力で大暴れしているのだ。


(何だあれは……寄生、されてる……?)


 単純に人の形を取ったわけではない。

 どう見ても普通の人間にレムナントの気配が重なっているようにしか見えないのだ。

 初めて見るタイプのレムナント。しかし、天音たちに焦りはない。


「っとにさー! 空気読んでくんない!? マジモテないよあんた!!」

「レムナントが異性にモテるかどうかを気にするのでしょうか……?」

「怒りに任せてテキトー言ってるだけだから真面目に考えなくて良いよ。っと!」


 極々自然に対処している。

 つまり初見ではないということだ。

 これはどういうことなんだろうと困惑していると、


【私だ要。今、どこに居る?】


 クロから念話が届いた。

 経緯を説明し戦場に居ると答えると丁度良いとクロは自分の居場所を伝えた。

 そこに向かうと、


「え、何で」


 そこには例の白猫エヴァが居た。

 クロもエヴァも魔道具の効果で私を認識出来ていないようで普通に言葉を交わしている。


「あなたの御主人はにゃんて?」

「……主人、ではない。友人で、相棒だ」


 それはそう。

 クロにとっての主人は生涯、御主人さんだけだろうから。

 私もそれについてどうこう言うつもりはない。

 それよりこうして敵意もなく話せているということは問題はなかったのだろう。


「にゃ!?」

「来たか」


 ならばと二匹を抱き上げ私を認識させる。

 エヴァの方は突然のことに驚いたようだがクロは平然としている。


「可愛らしい猫ちゃん二匹が仲良く並んでるってことはそういうことで良いんだよね?」

「にゃ……可愛いだなんて、あなたお上手ね」


 ぽっと頬を染める白猫。何だこの子滅茶苦茶可愛い。

 さっきも思ったけど喋り方がめっちゃ猫っぽい!

 そんなもう変身ヒロインのマスコットの王道一直線みたいなことある!?

 許されるなら今直ぐキスして頬擦りしたいんだけど。


「ああ。話はまとまった。エヴァにも」

「シロ」

「失礼。シロにも彼女らにも問題はないと見て良いだろう」

「そっか」


 ならもうこんなマスクも要らないな。

 今直ぐ加勢してさっさと――――


「待って欲しいにゃ!」

「……えーっと、シロちゃん?」


 パンパンと前足で腕を叩かれ止められてしまう。

 一体どういうことだと困惑する私にクロが溜息を吐く。


「ここで長々と話す時間はないから今夜だ。夜中にコイツも含めて話をしよう」

「天音たちは大丈夫。あれぐらいの寄生型なら問題にゃいし万が一の時は私たちが出るにゃ」

「……分かった」


 完全に納得は出来ない。

 だが何か考えあってのことだろうと理解出来ないほど子供でもない。

 頷くとシロはほっとしたように息を吐いた。


「ありがとう要。恩に着るにゃ」

「どういたしまして。でも事情は後でしっかり説明してもらうからね」

「にゃ!」


 ……クソ! 可愛い!

 要の発音がさあ! “かなめ”じゃなく“かにゃめ”なの狙い過ぎじゃない!?

 私の最推しは冥様だったけどマスコットの妖精のぬいぐるみとかも集めてたんだ!

 クロもこんな感じで喋ってくれないかな。

 いや今のクロも良いんだけど一回ぐらいは……。


「おっと、何やらアホを見る目」

「ああ。君が何かアホなことを考えていそうでな」


 当たってる。いやでもこれもアリか。

 王道一直線のシロと並べるなら逆にこれがベストな気もして来た。

 これまで感じてなかったマスコット的キュートさがむくむくと。


「乙姫! 咲耶! 一気に決めるわよ!!」

「「了解!!」」


 三人はステッキをくるくる回しながら背中合わせになるとそれぞれが口上を述べ始めた。

 空、海、大地。それぞれの属性になぞえらた詠唱だ。

 これは……これは、まさか……!?


「「「闇を貫け――――トリニティレイ!!」」」


 合体攻撃だぁああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

 三人が突き出したステッキからそれぞれ放たれた三色の光。

 それが混ざり合い一つの光となって敵を飲み込む――最高か?


「……要は何でこんなに目をキラキラさせてるのかしら?」

「さあ? 基本的には大人びた子なんだがな」


 そりゃ興奮するでしょ。しないわけがないでしょ。

 変身ヒロインの合体攻撃を生で拝めるとか最高じゃん。

 というかあれだね。私、マジで何なの?

 あん中混ざれる可愛さ足りてなくない?


(これ中二ファンタジーで何とか機関! みたいなノリのキャラが着てそうな感じなんだけど)


 衣装変わるよね? 黒を基調とした可愛い系か綺麗系かになってくれるよね?

 得物もファンシーなステッキとかじゃなくて剣とか槍なんですけど。

 いやでもリボンが変形するのはそれっぽ……。


「それよりさっさと戻るべきではないか?」

「そうにゃ。三人は後始末もあるから直ぐには無理だけど」


 二匹の声で現実に引き戻される。


「あー……うん、そうだね」


 名残は尽きないが致し方ない。

 ここで正体をバラせない以上、戻るしかないんだよなあ。


「じゃあ、うん、また後で」

「すっごくしょんぼりしてるわ」

「……後でコイツを好きにさせてやるから元気を出してくれ」

「にゃ!?」


 元の場所に戻った私はスーパーの直ぐ近くにある本屋へ入った。

 立ち読みしててとは言われたが流石にね。


「ありがとうございました」


 文庫本を一冊だけ購入しスーパーの外に設置されたベンチに座る。

 ここで本を読んでましたって体で出迎えるつもりだ。

 足を組んで本に目を通しながら待つことしばし。


「ごめんごめんお待たせ!」


 ようやく三人が帰って来た。


「おかえり。何だったんだい?」

「えっと」


 咲耶がちらりと乙姫を見る。

 乙姫は一度頷くと前に出て「これ」と紙袋を見せてくれた。


「お腹空いたし何か食べよって言ったでしょ? それでさ、ちょっと思いついたの。

折角なんだしカナちゃんが転校して来たお祝いをしたいなってさ。

それなら惣菜よりケーキとかの方が良いんじゃないかって。これ私のお気に入りのお店のなんだ」


 こ、これは……!


(一般人の友達に対するカバーストーリー!? お約束! 迸るほどにお約束!!)


 しかもこれ考えたの乙姫だよね多分。

 すごいそれっぽい! 立ち位置! キャラが完璧!

 リアルでこんなシチュエーションに遭遇出来るなんて。


「……くっ」

「ど、どうされましたか?」

「ごめん。ちょっと感動しちゃって」


 思わず目頭を押さえる私を見ておろおろする咲耶に大丈夫と告げる。

 それで多分、勘違いしたのか三人は優しい顔になった。


「大袈裟ねえ。さて、ここじゃ何だし公園にでも行きましょ!!」


 いや本当……良い人生だぁ……。

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