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アラサーOLが転生して王子様キャラを気取った結果  作者: クマン蜂兵衛


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花園咲耶 前編

 ゴールデンウィークに入った。

 他所のご家庭は連休を利用して家族で旅行などをしているのかもしれない。

 だが生憎と間宮家は父子家庭で忙しいのでそうもいかないのが実情だ。


「……すまないね要。色々任せっぱなしにして」


 今も朝食を共に出来ているがこの後、父は大学に行かねばならない。

 連休明けの初講義に向けた準備等が色々あるとのことだ。


「それは言わない約束だよおとっつぁん」

「何で急にコテコテの時代劇ワードを……?」

「いや最近クロがハマってて……」


 加入してるサブスクで時代劇特集みたいなのやってて試しに観たらクロちゃん大興奮。

 どうも人情系の話に弱いらしい。

 クロってばクール気取ってるけどやっぱり情に厚いよね。

 まあ猫が時代劇に夢中とか言ったら頭の心配をされるのでそうとは言えないけどね。

 ただ私は私で楽しんでるのでハマってるのというのもあながち間違いではないのだが。


「ほぉ、いや意外だね。そういうのに興味があるなんて」

「殺陣がカッコ良くて……」


 あと男前が多いのも好印象。

 私の初恋冥様は涼やかなイケメンだけど中々どうして。

 眉毛の濃い漢! って感じの殿方も良いじゃないかと思い始めた今日この頃です。


「フフ、男の子みたいだな」

「失礼だな。乙女だよ」

「ごめんごめん。でもまあ、この埋め合わせは必ずするよ。そうだな夏休みなんてどうだい?」

「夏休み?」

「うん。その頃にはもう落ち着いてるだろうしキャンプにでも行こうじゃないか」


 キャンプか。

 フィールドワークのプロである父さんならさぞ充実したキャンプを楽しませてくれそうだ。


「お友達なんかも誘って……どうだい?」

「良いね。天音もそういうの好きそうだし」

「天音?」

「ああ、父さんには言ってなかったっけ。この前、こっちで初めての友達が出来たんだ」


 ここ数日の出来事を語り聞かせる。

 父は嬉しそうに私の話に耳を傾け本当に良かったと笑う。


「……正直、不安だったんだ」

「不安? 何が?」

「これまでも現地で友達を作れていたのは知っていたけれど……日本はまた勝手が違うからね」


 外国を巡り違う言葉を身に着け、違う文化に触れる。

 子供の内からそんな経験をしている者は中々居ない。

 知識や感性は豊かになるが、その分浮いてしまうのではないかと父は不安だったらしい。


(友達も誘って、っていうのは父さんなりの願望だったのか)


 それと私への遠回しな激励。

 友達と一緒にキャンプという話で友達作りのモチベをって感じでさ。


「特に要は世界で一番可愛いからね。そういう面でもやっかみを受けるんじゃないかと」

「世界一可愛いは親馬鹿過ぎるでしょ」

「自分の娘を世界で一番可愛いと思わない父親は居ないよ」

「そういうもんなんだね」


 私には分からないことだ。

 前世でも親になる前に死んじゃったし。

 ……こう言うと何だかいずれはみたいな予定があったみたいだな。

 背伸びした自己弁護のようでちょっと恥ずかしい。


「まあ何にせよ友達が出来たと聞いて安心したよ。天音さんだったかな?

その子が乗り気でご両親の許可が得られたなら一緒にキャンプをしようじゃないか」


 約束だ、と父が小指を差し出したので小指を絡めて指切りをする。

 子供っぽくて恥ずかしい……いや子供だったわ今の私。


「ふぅ。ご馳走様。今日も美味しかったよ。ありがとうね」

「お粗末様です。もう行くの?」

「ああ。少々話し込んでしまったからね」


 父は手早く身支度を済ませると家を出て行った。

 残された私が片付けをしていると、


「……おはよう要」


 クロも起床してダイニングへやって来た。

 前足で顔をくしくしやってるのが実にキャッツ。可愛い。


「おはようクロ。朝食はどうする?」

「んー……いや、良い。昨日食べ過ぎてちょっと胃がもたれてるし……」

「了解。でも牛乳ぐらいは飲んでおきなよ」


 そう言うとクロも頷いたので餌皿に牛乳を注いでやる。

 ゆっくりお食べなさいな。


「今日は……どうするんだい? 私は引き続き調査に赴くつもりだが」

「んー、そうだなあ」


 調査に同行というのはなしだ。事前に断られている。

 魔女の存在を示唆された翌日、私も一緒にと言ったんだ。

 けど、


『使い魔と行動していれば正体が気取られかねない』


 普段は一目でそうと分からずとも使い魔と一緒なら疑惑が生じる。

 現状、こちらが魔女であることも判明していない。

 どころか新たな魔女が来たことさえ気付いていない可能性が濃厚だ。

 わざわざアドバンテージを捨てる必要はないとのことで同行は却下されてしまった。


「図書館にでも行ってみるよ」


 天音が暇なら遊びに誘うのもありだろう。

 けど昨日、RINEでお喋りしてる時に田舎のおばあちゃん家に行くと言ってたからな。


「ほう、図書館か」

「うん。勉強で使うこともあるだろうし、天海原の郷土史を調べてみるのも面白そうかなって」

「はは、考古学者の娘っぽいことを言う」

「ぽいかなあ?」


 いやでも昔の私なら郷土史なんて興味はなかっただろうしそうかも。

 父の影響を受けているというのはちょっと嬉しいな。


「まあ存分に学んで来ると良い。知識は宝だからな」


 一見使い道がないように思えるようなものでさえ、ひょっとしたらがある。

 この世に無駄な知識はないと諭すクロ。

 良いこと言ってるけど猫の姿だとやっぱりシュールだな。


「うん、そうする。でも」

「分かっている。何かあればしっかり連絡はする」

「それで良し。私の方でも何かあったらちゃんと念話飛ばすからさ」

「うむ……ご馳走様。では私はこれで」

「ああ。いってらっしゃい」


 私も片付けを終えてから家を出る。

 白い雲、青い空、本日も快晴で連休初日としては良い滑り出しだ。


(こんな日に室内でというのもちょっと惜しい気はするが……いやそれも乙か)


 少しゆっくり歩いて市営図書館に到着。

 かなり大きいところで蔵書量には期待出来そうだ。


(父さんはもう足を運んだのかな?)


 そんなことを考えながら館内を歩く。

 急いでいるわけではないのだ。一直線に郷土史コーナーに行く必要はないだろう。


(漫画のラインナップも結構充実……おや?)


 少し離れた棚のところに居る少女に目が留まる。

 白い髪を背中のあたりまで伸ばした眼鏡の女の子。歳はタメぐらいだろうか?

 踏み台を使って上の本を取ろうとしているが高さが微妙に足りていない。

 背伸びをしているがこれでは、


「ぁ」


 やっぱり。

 ぐらりと大きくバランスを崩した。

 嫌な予感がしたから魔法を発動させていたが正解だったようだ。


「失礼」

「ひゃぅ……!?」


 咄嗟に抱き止め事なきを得る。

 まさかこんな短期間で二度も女の子を受け止めることになるとは……。

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