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アラサーOLが転生して王子様キャラを気取った結果  作者: クマン蜂兵衛


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11/13

立つ鳥跡を……

 時間が経つのは早いもので気付けばもう三月も下旬。

 インドを出る一週間前の今日。友人たちがお別れ会を開いてくれることになった。

 場所は裕福な家の子が提供してくれることになり料理などは皆が用意してくれるとのこと。

 準備が整ったら呼ぶからテキトーにブラついててくれとのことで私はクロと共に町を散策していた。


「……ここも、もう見納めか」

「寂しいか?」

「当然。二年ぐらいはここに居たからね」


 屋台のおじさんお兄さん、青果店のおばさんなど顔見知りも沢山増えた。

 行きつけのダヒプリも、もう食べ収めだし本当に寂しい。

 アーシャが子供の気持ちを思い出させてくれたから余計にそう思う。


「でもそれは悪いことではないんだろうね」

「その心は?」

「寂しく思うのはそれだけこの土地を、そこに住まう人々を愛せたってことだろう?」


 素晴らしい出会いがあった。

 胸を張ってそう言えるということなのだから。


「さて。時間的にそろそろかな? クロも準備しないとね」

「私か? 準備も何も全裸がフォーマルだぞ」

「全裸をフォーマル言うな」


 私は懐から最近ようやく見つけたそれを取り出す。


「これは……リボン?」

「ああ。君が御主人から貰ったリボンは私のものになってしまっただろう?」


 かつてクロの首に巻かれていたそれは今は私の左手首にある。

 これを解いて変身するから肌身離さず持ってなきゃいけない。

 それはもう君のものだとクロ自身が申し出たとは言え、だ。


「時々寂しそうにしてたのを私は知ってるよ」

「……む」

「だからさ。似合いそうなリボンを探してたんだ」


 ただどうにもしっくり来ない。

 テキトーなものをというのはなしだ。

 だって御主人が与えた前のリボンがあまりにもピッタリだったんだもん。

 クロだけの、クロに似合うものをと隙を見てはアーシャと二人で探していたのだ。

 そしてついこないだようやく見つけた。


「……そうか」

「ああ。早速つけよう。むず痒いかもだけどじっとしててよ」

「普通の猫と一緒にしないでくれ」

「ごめんごめん」


 言いつつその首に手を回しリボンを巻いてやる。


「出来た」

「どうかね?」

「似合っているよ。私とアーシャの見立ては間違っていなかった」


 その毛並みによく映える、どこか百合の花を想起させる上品なデザインのリボン。

 理知的で愛情深いクロにはこれが似合うと思った私たちの感性は正しかったようだ。


「要、お呼びがかかったようだよ」

「みたいだね」


 スマホに着信が来たので確認すると準備完了のスタンプ。

 クロを抱き上げパーティ会場へと向かう。


「どうカナ? これ私たち皆で作ったのよ!」

「美味しそうでしょ? ほらこれ私担当!」

「こっちはね、あたしであっちが」


 家に入ると友人たちに腕を引かれて食卓へ連れて行かれた。

 並んでいるのはどれもこれも私の好物ばかりでその心遣いに少し泣きそうになる。


「あー……良い、良いねえ。実に食欲をそそる。どれから行こうか迷っちゃうな」


 パッと目についたこのミサルとか滅茶苦茶美味しそう

 ミサルというのは豆類のカレーにスナック菓子をトッピングしたものだ。

 これをパンに浸して食べるのだが使われている菓子が私のお気になあたりが実に嬉しい。


「あれ、これは……」


 ふと皿の中に馴染みのあるようなないようなメニューを発見。

 おさげの女の子チトラレカが気付いた? って顔をして手を挙げる。


「ライスボール! カナの国の食べ物なんでしょ? 教えてもらって作ったのよ」

「なるほど」


 おにぎりってよりはそのままライスボールって感じの見た目だ。

 折角だしとここから手をつけてみることにした。

 中身はこれ……タンドリーチキン? 普通に合うな。


「どうかしら?」

「最高」

「じゃあ次、ねえカナメ! 次は私の食べてよ!」

「あ、ずるい!」


 ……全部食べられるかな?

 いや食べられるかなではない全部美味しく食べるのだ。

 友人たちの真心は余さず受け止める。それが女ってもんだからね。


【……見事に女だらけだな】


 クロが私にだけ聞こえるようぽつりと呟いた。

 そりゃそうでしょ。男の子の友達も居るけど数で言えば女子の方が多い。

 男子からすればこの空間に混ざるのはハードルが高かろうて。

 その子らにも餞別は貰ったしね。


【いやそういうことじゃないんだが……美味しいなこのキャットフード】


 何なんだか。


「お腹も膨れて来たし皆でゲームをしましょう?」


 と会場を提供してくれたドーラが提案する。

 皆、口々に賛成賛成と乗っかり出したので私もそれに倣う。


「折角だしカナメの国の遊びをやりたいんだけど皆、どう?」

「良いじゃん良いじゃん。日本の遊び気になる」

「私もー」

「どんな感じなの?」

【……何か白々しいなこの子たち】


 白々しいって何だ。私の友達をどういう目で見てるんだ。

 というか日本の遊びって何だ?


「パパが日本に行った時にやった遊びでね。王様ゲームっていうんだけど」

「ちょっと待って。ドーラのパパ大丈夫?」


 ママキレてない?

 王様ゲームやるような状況ってどう考えても……ねえ?

 ってか古いよ王様ゲーム。若い子で今もやってる人とか居るのかしら?


「ママには内緒って言われた」

「あ、はい」


 あ、やっぱ大丈夫じゃないんだね。


「えーっとルールはねえ」


 とメモを見ながらルール説明。私の知るそれとまんま同じだった。

 シンプルなので特に引っ掛かることもなく全員でゲーム開始。


≪王様だーれだ!!≫


 ……あら残念。私のくじは三番だ。

 まあ昔からくじ運悪いしなあ。こういう時でも発揮されちゃうんだそれが。

 王様はディビアで命令は、


「五番と三番がキーッス!!」


 キャー! となるがちょっと待て。

 いや私は良いけどさ。


「いやそれはどうなんだい? 流石にその、初めてだろう? 私は平気だが」


 五番の誰かがと言ったところでドーラが手を挙げた。


「えっと、別に平気よ? そ、そんなにこだわるものじゃなくない? ねえ?」

「そ、そうそう! これぐらい遊びなんだし」

「変に考える方がどうかなって」


 ……そういうものなのか?

 この子たちからすれば中身おばさんだし、ついてけないだけなのだろう。

 じゃあ、まあ、そういうことならやらせてもらおうか。


「では失礼」

「ぁ」


 あんまりウダウダやって空気を壊すわけにもいかない。

 皆が納得してるならと私は早速ドーラに近付きその顎を指で持ち上げた。

 やっぱり緊張しているが嫌ではないらしくすっと目を閉じたので私も目を瞑り軽く口づけを交わした。


(……よく考えればこれ、前世含めて初めてだわね)


 唇を離し様子を窺うと皆、顔を真っ赤にして黙り込んでいる。

 同性同士でもやっぱり子供だもんね。そりゃこういう空気になるわ。

 でも目は興味津々って感じなのが実にもう。おませさんだわねえ。


【なるほど理解した。そういうことか……女誑しめ】


 それはさておき、次は負けたくない。

 少しピンキーな空気のまま次のゲームが始まった。

 今度こそ王様をと思ったが残念ながら二番。王様はドーラだった。


「じゃ、じゃあ今度は二番と四番が――――」

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