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契約その244 Heroineハワイ大捜索網!

 丁井先生の叫び声を聞き、慌ててビーチパラソルの下へ戻って来たユニ達。


 当の丁井先生は、そこで呆然としていた。


「丁井先生!どうしたんですか!?」


 ユニの声を聞いた丁井先生は、ぐるりと体を向けるとユニ達の方を向いて頭を下げた。


「瀬楠!そしてみんな!すまない!アタシがうたた寝してたせいで!荷物を誰かに盗られた!」





「それで、なくなったのは何ですか?」


 由理が聞く。


「それが、財布と携帯、そしてパスポートだ……」


「パスポートまで……」


 ユニ達は戦慄した。


 海外旅行において、もっとも重要と言われているのがパスポートである。それがなければ出入国ができないのだ。


「誰か現場を目撃してるかも知れない。辺りで聞き込みをして、警察にも届け出よう」


 ユニが指示を出す。


「本当にすまない……教師……いや大人として失格だ」


 丁井先生はその場にへたり込んでみんなに謝罪した。


「こんないい天気で、風も気持ちよくて、その上『旅行』っていうシチュエーションですから。寝てしまうのも無理ないですよ。だから、気を落とさないで下さい」


 ユニは丁井先生に自分の手を差し出しながら言う。


「瀬楠……みんな……すまない……」


 せめて自分が率先して動かなくてはならない。ユニの手を借りながら、丁井先生はそう決意するのであった。


 まもなく現地警察がやってきて、ユニ達に事情を聞く。


 痩せ型の若い男性警察官と、太っていてヒゲを蓄えた中年警察官の二人である。


 コミュニケーションはどれみが取ってくれたが、ユニの英語力でもその内容をおおかた認識できた。


 現地警察曰く、最近日本人を狙った窃盗被害がハワイで多発しているらしい。


 お盆で日本人観光客が増えた影響である。


「日本人は、自国の治安のよさからか旅行先でも油断する人が多い。あまりに多いと国際問題に発展する恐れもありますから、警察の方でも捜査を継続しています」


 太った男性警察官がおそらくそう言った。


「手口としては、今回の様に寝ている所を狙ったり、人混みの中で財布をスッたりするケースが多い様です」


 若い警察官がタブレットを手にしながら付け加える。


 二人の警察官は敬礼をして去っていった。ユニ達も釣られて敬礼を返すのであった。


「さて、これからどうしようか。みんな、聞き込みして何かわかった事はある?」


 ユニが聞くが、彼女達は首を横に振った。


「そうか……」


「そうじゃ!」


 突然、紫音が何かを思い出したかの様に大きな声を上げる。


「びっくりした……どうしたの?」


 ユニが聞くと、紫音は丁井先生に向かって聞く。


「丁井先生、さっき携帯も一緒に盗まれたと言いましたね!?」


「ああそうだが……それが何だというんだ?」


「実は全員分の携帯にはGPSを仕込んでいて……誰か一人の携帯でもあれば、全員分の携帯の位置がわかる様になってるんです。それを見れば少なくとも携帯の場所はわかる」


 それを聞いたユニ達は一斉に顔を見合わせると、「それだァ!」と叫ぶのであった。



 幸いにも、買い物に出かけていたメンバー(藤香、萌絵、エリー)の携帯は無事だった。


 紫音は萌絵から携帯を借りると、GPS機能を作動させて各携帯の位置情報を見た。


「思ったより位置がバラバラになっとるのう……GPSに気づいて捨てたか、あるいはバラバラに逃げたのか……」


「気づいて捨てたなら、反応がひと塊になってるはずだ。バラバラに捨てる理由がないから。たぶん分かれて逃げたんだろうな」


 ユニが言う。


「となると、どうする?私達も分かれて追おうか」


 由理の言う通り、そうするしかないだろう。


「残ったスマホは三つ。となると三手に分かれるか?」


「いやGPSの受信端末は全員分あるから、そこは臨機応変に分ける事が可能じゃ」


 スマホ状の端末をどこからか取り出しながら紫音が言うのだった。


 その後、ユニ達は各自複数人で分かれてスマホの行方を探すのであった。


 丁井先生とペアになったユニは、怪しい一人の男を一緒に尾行した。


「見た目は日系人……少なくともアジア系ぽいですね」


 後ろ姿の為わからないが、犯人と思しき男の特徴をユニは推察する。


「どうする?ボコるか?」


「いやそれもいいですが、丁井先生は顔を知られていて、顔を見られたら逃げられる可能性があります。おれは知られてないけど」


「じゃあどうするんだ」


「まあ見てて下さい。おれがアイツをここへ引っ張り出しますよ」


 ユニはそう言うと、丁井先生をある場所で待機させた後に男の前へとさりげなく出ていく。


「Excuse me?(ちょっとよろしいですか?)」


 ユニは流暢な英語で言いながら男に近づく。


 その後いくつか男と言葉を交わすと、その背中を押しながら男を先生の所まで連れてきた。


「何でかわからないけど……」


 丁井先生も、そこそこ丁寧な英語で男に文句を言うと、綺麗な回し蹴りをかまして男を倒すのであった。


 ユニは男からスマホを取り返すと、そのスマホのメッセージ機能を使ってみんなに連絡する。


「こっちは取り返したぞ。みんなはどうだ?」


「こっちもOKだ!」


 全員から連絡があった。どうやらみんなつつがなく取り返せた様である。


 あとは男を警察に引き渡せば大丈夫である。


 警察を待っている間、丁井先生は気になった事をユニに質問する。


「ところで、キミは何て言ってこの男をここまで連れてきたんだ?」


「丁井先生、自分の後ろを見て下さい」


「後ろ……?」


 丁井先生は怪訝そうな顔をしながら後ろを振り返ると、そこには風俗店があった。


「まさか……!」


「はい。自分をそこの店員ってウソついてここまで引っ張って来ました。案外楽でしたね」


「キミって奴は……」


 丁井先生は、呆れながらも安堵した様な表情を見せるのであった。


 その後、男は駆けつけた警察によって難なく逮捕された。


 男はハワイを拠点にする国際的な窃盗グループのメンバーで、今回は日本人観光客をターゲットにする様に指示されていたという。


 そのメンバーが逮捕された事で、窃盗グループに捜査のメスが入る様である。


「何だか疲れたな……」


 ビーチに戻って来たユニ達は、遅めの昼ご飯を食べながらぼやく。


「明日は早いぞ。朝イチでNASAの基地にお邪魔する事になってる」


 紫音が言う。


「じゃあホテルに帰るか……」


 ユニの提案をみんなは了承し、早々にビーチから引き上げていくのであった。


 しかしユニ達はまだ知らない。NASAでの出来事が、ハワイはおろか世界中を巻き込む程の大事件の舞台になるという事を。


 悪魔との契約条項 第二百四十四条

女体化した契約者が、その容姿を利用して相手をダマす事に関しては、問題はない。

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