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契約その245 Ike打ち上げ大作戦!

 翌日。プロペラ機に乗り込んだユニ達は、人工衛星「アイク」打ち上げの舞台となる島へ向かった。


 機内にて、紫音がその島についての説明をしてくれた。


「NASAの基地がある『EDEN』はメガフロートになっていて、米軍や国連の重要施設も入っておるのじゃ」


「へぇ……」


 月並みな反応をするユニ達だった。


「そんなにすごいんだ。そのお風呂って」


「違う違う。お風呂じゃなくてフロート!メガフロートっていうのは、つまり人工島の事じゃ」


 アゲハの勘違いを、紫音は慌てて訂正した。


「人工って、じゃあ島を丸ごと作っちゃったって事?」


「やる事がハデだね……」


 ミズキとヒナが口々に言う。


「建設には火殿建設を始めとした世界各国の建設会社が携わっていて、最近ようやく完成したんです」


 どれみがつけ加える。


「場所的にはハワイのちょうど真ん中にあるから、そろそろ見えてくるはずじゃ」


 タブレットの地図を見ながら紫音が言う。


「もしかして、アレじゃないですか?」


 窓を見ていたモミが指差した先には、確かに大きな人工物が見えた。


 そろそろ着陸するらしい。


 その間際、紫音がユニ達にあるものを配る。


「これは……?」


 見た目は黒いワイヤレスイヤホンといったものである。


「それは『高性能翻訳機』耳につけとるだけで聞こえた言葉を自国語に翻訳してくれる優れものじゃ」


 今はまだ日本語と英語の相互翻訳しかできない様だが、ゆくゆくは他言語にも対応させていくらしい。


「ここでの公用語は英語じゃからな。コミュニケーションに苦労しない様にと昨日何とか作った」


 他にもデザインについてはまだ改良の余地ありだが……と紫音は付け加えたが、ユニ達にとってはありがたいものだった。


「ありがとう。大切に使わせて貰うよ」


 ユニからのお礼に、紫音は満面の笑顔を見せるのであった。


 間もなく、広々とした滑走路に、プロペラ機が余裕を持って着陸する。


 すでに何機かの飛行機が止まっていた。


「これみんな……」


「はい。みんな今回の打ち上げに携わる人達のものですわ」


 ユニの疑問に、どれみが笑顔で答えてくれた。


「ですが、向かいの港の方がもっとすごいですわ。飛行機より船の方が多くの物資を運べますから」


 成程、確かに現代においても船は主要な輸送手段である。


 納得するユニに、どれみは時間があれば見に行きましょうかと言ってくれた。


 紫音とどれみの先導で、ユニ達は大きな建物の前に行く。先程プロペラ機から見えた建物である。


「これがメインの施設ですわ」


 どれみが説明してくれた。


 近くから見ると、尚更大きく感じる。そして建物自体は真っ白なので、何だか無機物感があって近寄り難い。


 芸術的と言えるが、どこか無軌道な建物のデザインもその印象を後押しした。きっとどこかの芸術家がデザインしたのだろう。


 しばらく外観を眺めると、ユニ達は建物の中に入るのだった。


 内部は広々とした研究施設といった雰囲気であった。


「一階がメインロビーで、二階より上が研究施設になってるのですわ」


 どれみが説明する。


 エレベーターに乗り、ユニ達は最上階の研究室へと向かう。


「ここで、打ち上げ予定の『アイク』の管理を行ってます」


 どれみ曰く、出資者はここで「アイク」の打ち上げを待っているらしい。


「他の建物にはロケットとその発射場もあるから、後で見学しようか」


 そう紫音が言ってくれた。


 打ち上げは今日、つまり今はまさに打ち上げ直前であり、研究室内は物々しい雰囲気に包まれていた。


 紫音も様々な所に呼ばれて最終チェックなどを行っている様だ。


 そんな中、どれみはある人物を見つける。


「どうしたんだどれみ」


 ハッとしたどれみに気づいたユニが聞く。


 どれみはその人物の方へ向かっていくと、その人物と二、三言言葉を交わし、その人物を伴ってユニ達の方へ戻ってきた。


「皆さん、紹介致しますわ。ハワイ一のセレブにして今回の打ち上げの最大出資者の……」


金賀(かねが)アリアマリーです。よろしくお願い致しますわ」


 その人物……いや女性はユニ達に深くお辞儀をして挨拶をする。それに釣られて思わずお辞儀を返すユニ達。


 見た目と名前からして日系アメリカ人らしい。


 黒いスーツに赤いフレームのメガネを身につけ、長い黒髪をアップに結った美人だった。


 セレブというよりかはキャリアウーマンという印象である。


 それと日本語が上手い。


「高性能翻訳機」のお陰で聞こえてくる言葉は全て日本語に翻訳されているのだが、この人の日本語は機械を通していない自然な感じがする。


「お上手ですね、日本語」


 ユニは英語でそう伝える。


 伝わったかどうか自信がなかったが、何とか伝わった様で、金賀は笑顔を返してくれた。


「金賀さんは、人工衛星のセキュリティにも単独で携わっているすごい方なんですわ」


 どれみがそう説明してくれた。


 その後、金賀はボディーガードと思われる男達に連れられて立ち去って行った。


「何かボディーガードも強そうだな」


 ユニがそう呟くと、どれみは各方面に敵がいて、彼女の身を守る精鋭だと伝えた。百人前後がいるらしい。


 そうこうしている内に、いよいよ人工衛星「アイク」の打ち上げが始まる様である。


「ロケットに乗せた上で数時間かけて衛星を軌道に乗せるんじゃ。軌道に乗せた後は、通信や宇宙開発などに生かされる」


 紫音がそう説明してくれた。


「へえ宇宙……」


 萌絵が呟く。


「おれ達もいずれ行けるのかな」


 ユニがそう言うと、紫音はいずれ宇宙旅行が当たり前になる時代が来ると断言するのであった。


「それこそ、わしらが生きてるうちにな」


 そう紫音は付け加える。


「そうか……じゃあさ」


 ユニは彼女達の方を振り返りながらこう言う。


「いつかそんな機会があったらさ、その時はみんなで行こうな」


 ユニの言葉に、彼女達は大きく頷くのであった。


 程なくして、研究室の巨大なモニターが人工衛星の現在の映像を映し出す。


 打ち上げが近いのである。


「そろそろ始まるそうじゃ」


 紫音が言う。


 ユニ達も、その打ち上げを見届けようとモニターを注視する。


 ユニ達だけではない。その場にいる全員がその瞬間を固唾を飲んで見守るのであった。


 ついにその瞬間がやって来た。


 打ち上げのカウントダウンが始まる。


「5」


「4」


「3」


「2」


「1」


 この場の全員の期待通り、人工衛星を乗せたロケットは、火を噴き上げて宙へと浮かぶ。


 その衝撃がユニ達のいる研究所にも伝わって来た。思った以上の衝撃である。


「宇宙まで行くんだ。当然か」


 そして人工衛星と多くの人の期待を乗せたロケットは、空へと消えていったのであった。


 打ち上げは成功である。それがわかった瞬間、研究所内は歓喜の渦に飲まれたのであった。


 この時はまだ何もしていないユニ達も、それに釣られて何だか嬉しくなったのであった。


 打ち上げを見届けたユニ達は、EDEN内のカフェテリアでランチを取る事にした。


「日本のと比べて大きくない?」


 手に持ったハンバーガーを見て、ルアが驚いた様な表情を見せる。


「これがアメリカンサイズって事なんだろうな」


 ユニは構わずそのサイズのハンバーガーにむしゃぶりつくのであった。


 そんな穏やかな雰囲気の中、しばらく経って研究員の一人がカフェテリア内に飛び込んできた。


「大変です……!『アイク』が……アイクが!」


「『アイク』が!?一体どうしたと言うんじゃ!」


 詰め寄る紫音。


 聞かされた「アイク」の現状に、ユニ達は絶句するのであった。


 悪魔との契約条項 第二百四十五条

人間自身の叡智で、人間は宇宙へも行ける。

読んで下さりありがとうございます。

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