契約その221 King girlの超秘密!?
自らをアザエルと名乗った転校生は、華麗に自己紹介をした後、ユニの方を見るなりこう言った。
「お前、いいな。よし、おれ様の臣下にしてやろう」
「え?」
ただでさえ突飛な自己紹介に冷えついたクラスの雰囲気が、この発言で一気に氷点下まで下がってしまったのだった。
放課後。部活がある者は部活へ、そうでない者はそそくさと帰っていく中、アザエルは大声でユニを呼ぶ。
「ユニ臣下!おれ様と帰ろうぞ!」
今日は彼女の誰も予定が取れなかったのでちょうどよかった。
特に断る理由もないユニは、アザエルと一緒に帰る事にしたのだった。
「いやーこうやって誰かと一緒に帰るの初めてだなー!」
アザエルはケラケラ笑いながら言った。
「転校前に友達とかいなかったの?」
ユニが聞くと、アザエルは微妙な顔をした。
その表情を見たユニは、全ての事情を察するのだった。
それを誤魔化そうとしたのか、アザエルは突如高笑いしながらこう言った。
「フハハどうだ!?ユニ臣下、おれ様と一緒にお茶でもしようではないか!」
そこでユニ達は、通学路にある喫茶店に足を運んだ。
二人は、店内の一番奥の席につく。
席につくなり、アザエルはユニに言う。
「おれ様はすでに注文品を決めているが、ユニ臣下はどうだ?」
「えっと……おれ臣下は……」
アザエルに急かされ、ユニは慌てて注文を決めた。
店員にそれぞれ注文した後、ユニはアザエルの顔を鬱陶しくない程度に観察した。
一人称や口調、性格のせいであまり目立たないが、よく見たらだいぶかわいい顔をしている。
長く伸ばした金色が混ざった銀髪に、くりっとした大きな目。お冷を飲む仕草も、かなり絵になっている。
「よし……」
何かを決意したユニは、アザエルに単刀直入こんな質問をした。
「なあアザエル。キミは堕天使か?」
それを聞いたアザエルは、飲んでいたお冷を上に向かって思い切り吹き出した。
それはまるで噴水の様であり、うっすらとだが小さな虹がかかる。
「ゲホッ……エホッ……い……いいいきなりなぜそれを!?」
明らかに動揺しているアザエル。
「おれは悪魔の、正確には悪魔の振りしてた神との契約によって生まれた人間だ。そのおれに接触してきて、一体何の目的だ?」
「……」
アザエルは黙っていた。
「話したくないなら、話さなくてもいいよ」
「いや、話そう。おれ様の目的もあるしな」
アザエルは、自分の目的を話し始めた。
「これはお前達人間にとってもつい最近の話だ。ある天使が、天から地上へ堕とされた。『ラファエル』の件の、その連帯責任としてな」
「『ラファエル』……」
ユニは、かつての「ラファエル」との激しい戦いを思い出していた。
そういえば、「神」は「ラファエル」に「勝手な事をした」と言っていた。
あれで「ラファエル」が処刑されたのだとしたら、確かに関係者も処罰されたとしてもおかしくない。
「地上に堕とされた天使っていうのは……」
「ああ。おれ様の事だな」
アザエルは自分を指差しながら言い、話を続けた。
「天から堕とされるにしても、色々バリエーションがあるんだ。おれ様は地上で済んだが、二千年前には魔界まで堕とされた奴がいたらしい」
その存在を、ユニは知っている。ルーシーの母、「セラフィム」の事である。
「そんで地上に堕とされるっていう事は、『力』とかそれら諸々を奪われて、『人間』として生きろって事なんだ」
ここで、アザエルが頼んだブラックコーヒーとパフェ、ユニが頼んだコーヒーが届く。
アザエルは、コーヒーを苦そうな顔をしながら飲みつつ、話を続けた。
「で、地上に堕とされた後は大変でさ、一文なしだし……とりあえずバイトしながら暮らしてたんだ」
「成程なあ……」
ユニは、砂糖とシロップをドバドバ入れたコーヒーを飲みつつ相槌を打った。
普通は甘すぎて飲めたものではないが、甘党のユニにはちょうどいいものである。
「時に……お前達は神と戦う事になると思う」
「神と……?」
ユニは首を傾げた。確かに神とは因縁がある。しかしまだそうとは決まったわけではないと思っていた。
「否応にも仕掛けてくるだろうな。だってまだ『瀬楠由衣』の代償は払い終えていない。そう本人が言ってた」
「神本人が!?」
その事を聞いて、ユニは身を乗り出した。
「キミは色々な情報を持ってそうだな……。話せる情報だけでもいいから、話してくれる?」
ユニのお願いに、アザエルは大きく頷きながらこう言う。
「勿論だ。元よりそのつもりだったからな!」
落ち着いて話す為に、場所を変えようと言うアザエル。いつの間にか、ブラックコーヒーもパフェも食べ終えていた。
会計は別々なので、アザエルは自分の分のレシートを持ってレジへと行く。
ユニも慌ててコーヒーを飲み終え、その後を追うのであった。
「落ち着いて話す場所って、一体どこなんだ?」
前を進むアザエルに、ユニは聞く。
「おれ様んちだ」
そうアザエルは答える。
そしてそのまましばらく歩いていると、ある所でアザエルの足が止まった。
「着いたぞ。ここだ!」
「ここだ」と示された場所を見て、思わずユニは自分の目を疑った。
「いや、ここって……」
ユニが自分の目を疑うのも無理はない。「アザエルの家」と示された場所は、何の変哲もないただの公園だったのである。
アザエルは、その中でも一際目立つ海賊船を模した遊具にユニを招き入れた。
「さあ、入ってくれたまえ」
「いやいやいや!」
さすがにユニは後退りしつつ拒否した。
「大丈夫だって。この時間帯に子供は遊びには来ない。だから喫茶店で時間を潰したんだ」
「いやそういう問題じゃなくて!
「人間としての尊厳はどうした」と、ユニはアザエルに聞く。
「いや尊厳も何も、おれ様は元々堕天使だからな……」
アザエルが言うには、夜にはゴザを敷いて寝て、電気は外に小型の太陽光パネルを設置して賄っているらしい。
「トイレは公園のを使えばいいし、風呂は銭湯を使えばいい。『住めば都』ってやつだぞ」
「すぐ遷都しろそんなもの!」
とにかくここで暮らすのは酷だと言って、ユニは自分の家までアザエルを引っ張っていった。
「話だったらおれの家でもできるだろう」
もうすでにルーシーが帰ってきているはずである。
ユニは、堕天使アザエルを伴って、玄関のドアを開けて中へ入るのであった。
悪魔との契約条項 第二百二十一条
罪を犯した天使は、地上や魔界に堕とされる。
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