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契約その220 二人の悪魔の超power!

「だいぶ遅れたけど、本題に入りたいと思う」


 由衣が自らの過去とユニの出生の秘密を語り終えた所で、ルーシーが言う。


「これはおれがおれの親から聞いた事なんだが、契約によって生まれた子供、つまりユニは悪魔の力が使えるらしい」


 何回か使った事はあるはずだとルーシーはユニに言った。


「でもそれは、キミがおれと契約した事で一時的に使える様になったってだけで、出生とは関係ないんじゃないか?」


 ユニが反論する。


 ユニが言っているのは、別の悪魔と戦う時に、ルーシーと契約して戦った事である。


「いや()()()じゃない。おれが言ってるのは、こないだ七海達と陸上大会に参加した時の……」


 ルーシーが言っているのは、ユニ達が助っ人として参加した陸上大会への道中で、旧陸上部員達と対峙した時である(契約その10参照)。


 そこでユニは、本物の悪魔の様な形相をして、元部員達を威圧した。


「それが、おれの『悪魔の力』の片鱗って事か?」


 ユニの質問に、ルーシーは大きく頷く。


「おれの母親の話ではな。つまり、おれとお前、二人の『悪魔の力』が合わされば、この傷ついた町すら元に戻せるはずだ」


「よしやろう!今すぐ!」


「ちょちょちょっと待て!」


 立ち上がるユニを、ルーシーは慌てて制止した。


「そんなに簡単に決心して貰っても困る。そもそも人間が、悪魔と契約せずに悪魔の力を使う事自体、だいぶイレギュラーなんだ」


 それからルーシーは、声のトーンを落として言う。


「……人間じゃいられなくなるかも知れない」


 ルーシーのその言葉に、由衣もまた深刻そうな顔をした。


 だがユニも、その可能性を考えていないわけではなかった。


「……元々男だったのが女になってんだ。大丈夫さ。それに、おれが人間じゃなくなっても、みんなおれの事愛してくれるだろ?」


 それを聞いたルーシーは、再びユニの覚悟を問う事はなかった。


 ユニ達は瀬楠家の屋上へ登る。そこには、ユニの彼女達全員がいた。


 ルーシーが呼んでいたのである。


「一体何をする気なんだ?天体観測か?」


 丁井先生が聞く。


 確かに空は雲一つなく、星が光り輝いていた。とても人々の生活を一変させた雨が降ったなんて信じられない程である。


「前みたいに、みんなの思いの力を合わせるのか」


 ユニが聞く。確かにそっちの方がより強い力を発揮できるはずである。


 ルーシーは、集まってくれたみんなに事情を話す。


「結論から言うと、ユニには『悪魔の力』が宿っている。その力とおれの力とを合わせて、さらにみんなの思いの力を合わせれば……」


「この町を元に戻せるかも知れないって事だ!」


 ユニが言う。


「そんな事が……本当にできるのか?」


 紫音が問う。


「やってみせる。絶対に!」


 ユニがここまで言い切る時は、必ずやり遂げる時である。


 彼女達は、二人の言葉を信じる事にした。



 屋上の真ん中付近にユニとルーシーの二人が立ち、それを彼女達が円形に取り囲む。


 これで準備は完了である。


 あとは二人が「悪魔の力」を使い、彼女達が二人へ思いの丈をぶつければいい。


「なあルーシー。『悪魔の力』って具体的にどう使えばいいんだ?」


 ユニにそう聞かれ、ルーシーは少し唸りながらもこう答えた。


「何か、お腹の中から湧き上がってくるものとかないか?それが『悪魔の力』だ。意識すれば必ず……」


「湧き上がってくるもの……」


 ユニは目を閉じ、集中する。確かに、意識すれば湧き上がってくるもの……どこか熱いものがお腹の辺りにあるのがわかる。


「たぶんこれか……」


 その時、ユニの体から黒い稲妻の様なものがバリバリと発生した。


「これでいいのかな」


 ユニが聞く。


 その制御方法のあまりに早い習得に、ルーシーは驚く。


「悪魔の力」の制御は、悪魔の子供でも難しいものである。


(人間で言う所の)だいたい三歳ぐらいまでは制御ができず、親の力を借りる。


 ルーシーはそれを考慮して、自分が制御の手伝いをしようとしたのだが……ユニは自分一人で制御に成功してしまった。


「ポテンシャルは悪魔以上って事か……」


 そのポテンシャルを持つのがユニで本当によかったと、ルーシーはとても強く思ったのだった。


「さて……やるか」


 ユニはそう呟くと、ルーシーの手を強く握ってこう叫んだ。


「よしみんな!おれとルーシーに思いの丈を思い切りぶつけるんだ!」


 その言葉を受けて、みんなは強く頷くと、二人へ思いをぶつける。


「私達は!二人が好き!」


「いいや!大好き!」


「大大好き!」


「大大大好き!」


 その莫大な思いの力が二人に注がれる。


「すごい力だ……!これなら……!行くぞルーシー!」


「おう!」


 二人は息を合わせて「悪魔の力」を天に向けて放つ。


 その悪魔の力は、まるで噴水の様な形になって地上へと降り注ぎ、壊れた町を修復していった。


 町の修復が終わると、二人は屋上で大の字になって倒れた。


「ハア……ハア……完了だ……。とはいえなくした命は戻らないけど……」


「でも!これで救われた人はきっと何百人……いや何千、何万人も……」


 二人はそう言い合うと、互いの拳を突き合わせた。


「これで!」


「ああ!任務完了だ!」



 だが、町が突然直った事に対して何かしらの追求があるのではないかという問題があった。


 しかし、どれみ曰く上手く火殿グループが口裏合わせをしてくれるらしい。



 徐氏堂市のとあるビルの屋上にて、謎の少女が佇む。


「まさか町一個を元の状態に修復するとは……彼女達の力さえあればきっと……」


 その謎の少女は、突然バッとビルから飛び降りる。


 投身自殺をしたのではない。


 その少女は自分の肩甲骨の辺りから黒い翼を生やし、まだ暗闇の空へと飛び去っていった。



 朝になり、由衣は再び我が家を旅立とうとしていた。


「次はいつ帰ってくるんだ?」


 玄関先でユニが聞く。


「そうね……仕事が途切れたら……でもいつ途切れるかわからないから……その時連絡するわね」


 由衣はスケジュール帳を見ながら言った。


 それから由衣は、ユニ達に背を向けて外へ出ようとするも、何かを思い出したのか、ユニ達の方へ振り返って言う。


「ユニ。あの時私のした事は間違っていないって言ってくれてありがとう。正直あなたに拒絶される事も覚悟してたし、それが当然だと思ってたから……」


「母さん……」


 ユニはそう呟くと、由衣の頬にキスをした。


「え?」


「ほら由理も」


 ユニの考えを察した由理は、動揺する由衣にユニがしたのとは逆の頬にキスをした。


「これは……」


「『行ってらっしゃいのキス』だよ。お仕事頑張ってね」


 それを聞いた由衣は、また泣き出すのだった。


「グスッ……でももう飛行機に遅れるといけないから、もう行くわね」


 由衣はそう言うと、玄関のドアを開ける。


「うん。行ってらっしゃい!」


 ユニ達は、玄関のドアが閉まるまで手を振っていたのだった。



 学校が再開したのはその一週間後の事である。


 梅雨も明け、夏の暑さが再びやってきた。


 そんなユニ達のクラスでは、ある噂で持ちきりだった。


「転校生が来るんだって!」


「転校生!?このタイミングで!?」


 確かに時期は高三の夏、転校してくるには中途半端である。


「みんな、席につけ!転校生を紹介するからな!」


 丁井先生の声に、みんなは慌てて席につく。


「では入ってき……」


 丁井先生が言い終わるより前に、教室のドアが強く開き、転校生はこう自己紹介をする。


「おれ様の名前は天上・ド・アザエル!いつの日か、魔界の王になる女さ!」


 悪魔との契約条項 第二百二十条

契約によって生まれた人間なら、「悪魔の力」を使える。

読んで下さりありがとうございます。

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