契約その207 ドキドキのbath time!
ホテルへやって来たユニは、ようやく今回自分の泊まる部屋へとやって来た。
「あ。来たんだ」
ユニの彼女達とは違い、淡白な反応をする羽寺さん。
羽寺芽乃子さん、彼女はその名の通り全ての始まり、ルーシーと契約したその日に告白し、そして振った少女である。
振られて以降疎遠になっていたが、くじ引きの結果同室になったのだ。
「また問題起こしたんだ」
「バカだね。怒られたでしょ」
同じく同室の佐布頼子さんと狭山光子さんが口々に言い合う。
彼女達は、以前ユニ達が海に遊びに出かけた際にナンパして来た男達の、その妹なのだが、ユニは知る由もない。
あと、一人黙々と本を読んでいる会永法子さん。彼女はかつてアキと生徒会長を争っていた。
もっとも彼女は生徒会長には興味なかった様だが。
そんな四人が、今回のユニの同室である。
「まさか誰一人同室にならなかったとは……」
いやむしろ、ユニの彼女達の争いを防ぐ為にもそっちの方がよかったのかも知れない。
ユニはそう思う事にした。
「あ、そうだった」
何かを思い立ったユニは、部屋を出て隣のモミと七海の部屋へと出かけた。
部屋の前まで来たユニは、「コンコン」と二回ノックする。
「あ、ユニ」
出迎えてくれたのはミズキだった。
「モミと七海いる?」
「うん。みんなまだ荷解きとかしてる最中だから」
全てを察したミズキは、気を利かせてモミと七海を呼んできてくれた。
「用って何?」
七海が聞くと、ユニは持っていた二人の財布を差し出した。
「あいつが持ってたんだ」
ユニは、きっちり奪われた財布を取り返していた。
「みんなの大切なものは、おれにとっても大切なものだから」
「ありがとうございます!」
二人はその財布を大事そうにギュッと握りしめた。
「……」
ユニは、その様子をどこか嬉しそうに眺めるのであった。
19時になり、ユニ達の夕食の時間になった。
「すげェ!バイキングか!」
ホテルの大広間へ通されたユニ達は、並べられたたくさんの料理に驚く。
部屋ごとに席につき、手を合わせてきちんといただきますと言ってから食べ始めた。
早速配膳場所にやって来たユニは、まずはその種類の多さに驚いた。
「カレーにミートソーススパゲッティにカルボナーラにサラダに餃子、シューマイにうどんそばまで!迷うなー!」
ユニは手当たり次第に好きなものを取って席につき、味わいながら食べ始めた。
「うまいなどれも」
ユニのがっつきぶりに慣れないルームメイトの四人は、それにドン引きしながら見つめていた。
食べ物に囲まれながら、ユニはふと思う。
「留守番しているみんなも、元気でやってるかな……」
同時刻の瀬楠家。
「はい、今日はカレーです」
由理がちゃんと人数分のカレーを持って来て言った。
そのままいただきますをした後、厳か……というより静かな雰囲気で食事が進んでいた。
「何というか……寂しいですね」
ふとみすかが言う。
「そりゃ……いつもいるみんなの大半がいないわけじゃからな」
紫音が言う。
「そんなにいつも騒がしいのですか?」
エリーが聞いた。
「いや騒がしいというより、何というかにぎやかな感じがしないという事ですわ」
カレーを口に運びながら、どれみが言う。
「まあ、明日と明後日……それまでの辛抱ですから」
由理は、気分が沈んでいたメンバーを励ます様に言うのだった。
一方のユニ達は、夕食を終えて入浴の時間になった。
入浴は別に部屋ごとというわけではなく、クラスごとに決まっている時間内で入る事になっている。
当然ユニは彼女達と入る事にした。
「わー!広い!」
さすがは火殿グループのホテルである。広さも深さも、普通に泳げそうな程ある。
入り口に「遊泳禁止」と掲げられているので泳げないが。
「おれが一番乗りだ!」
そう叫びながら湯船に飛び込もうとするルーシーを、ユニは慌てて止めた。
「ダメだよ。こういう時は頭や体をちゃんと洗ってからゆっくり浸かるんだ」
数千年の人生の中で、ルーシーに旅行先の風呂の入り方を教えてくれる人はいなかった様だ。
気を取り直して、ユニは洗い場にあるイスに腰掛け、頭から洗おうとする。その時である。
「なァユニ。背中の洗いっこしようか」
ルーシーが提案してきた。
「あ……洗いっこ!?背中の!?」
そのあまりに刺激的な提案に、ユニはイスから転げ落ちそうになった。
「それいい!賛成!」
アゲハや他の彼女達も諸手を挙げて賛成した。
「いやちょっと待って!?忘れてるかも知れないけど、おれ精神は男だぞ!?」
慌ててユニは反論する。
「でも肉体は女性でしょう?」
萌絵が言った。
「いや確かにそうなんだけど……何というか……イヤじゃない?」
「イヤなら誰も賛成しないよ」
陽奈が言った。
確かにその通りか……。ユニはそう自分を納得させた。
そしてみんなの背中の洗いっこが始まるのであった。
備え付けのボディソープを、濡らしたタオルでよく泡立たせる。それ程力もいらずに泡立った。
「へへっよろしくな」
照れくさそうに言うルーシーの背中に、ユニは恐る恐る泡立ったタオルをつけ、ゴシゴシとゆっくりと洗い出した。
「うわァ……背中とかすごいキレーだなあ……」
そのきれいな背中を泡だらけにする事に、どことなく羞恥心を感じながらも、ユニは何とか全員分を洗い終えた。
「それじゃあ……次はユニの番っ!」
ユニもまた、彼女達の手によって揉みくちゃに洗われる事になるのだった。
「どう?さっぱりしたか?」
「う……うん……まあ……」
ルーシーの問いかけに、ユニは顔の下半分を湯船に湯船に沈ませながら答えた。
長居するのもアレなので、ユニ達は風呂から上がる事にした。
ドライヤーで髪を乾かし、高校の指定ジャージに着替え、外に出る。
途中で男子にすれ違ったが、どこかユニ達の風呂上がりの姿に見惚れている様だった。
「うんわかる。すごくわかるぞお前ら……」
ユニは心の中で彼らに問いかけたのであった。
入浴が終わると消灯時間までは自由時間となる。
修学旅行は、ある意味ここからが本番といった所である。
部屋に戻ってひと息ついていたユニを、アゲハが呼びにきた。
「ユニち!えへへ呼びにきたよ」
「呼びにきたってまさか……」
「そう!今日はオールナイトだよ!寝させないから!」
どうやらユニ達の夜は、まだまだ終わりそうもない様である。
悪魔との契約条項 第二百七条
悪魔は数千年生きるとはいえ、常識を身につけているとは限らない。




