↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

九話

「とりあえず、二人で写真撮るか?」

 携帯電話を見せながら私がそう言うと、え?と声を出してサチは目を丸くした。

「お姉様、そんな人に気を配るような事言えたんですね」

「止めるか」

「撮りましょう」

 撮りたいのによくそんな事言えたもんだよ。もう口と性格の悪さを隠そうともしてないな。私の前以外だとこいつどんな感じなんだろ。

 私の携帯電話は放っておいて、サチはすぐに自分の携帯電話を取り出した。ちょっと操作してからカメラのレンズを向けてくる。

「はい、撮りますよ」

 言うが早いが一枚撮ったと思うとそれを確認してからもう一度カメラを構えた。

「目が泳いでますね。はい、もう一枚撮りますよ」

 そう言われてカメラを見た次の瞬間、サチは私の頬にキスをした。

「おい」

 私の声を無視して写真を確認して、それを見せてくる。

「ほら、ばっちり撮れましたよ。決定的瞬間。お姉様にも送りますね」

「ちょっと待て。何してくれてんだ」

「?」

 サチお得意の何言ってるの? と言わんばかりの微笑みを浮かべながらこっちを見てくる。私これ人に見られたらヤバくないか?

「大丈夫ですよ、あくまでサチがお姉様にしてる写真ですから。逆ならロリコンの決定的証拠でしたけど」

「ああ、それもそうか」

「ついでに、これに免じてしばらくはあんまり露骨なのは控えて差し上げますね。もっと疑り深かったら何か企んでるって気付いたでしょうに、あっさり引っ掛かってくれたお姉様のお人好しに免じて」

「そうかよ。まあありがとうな」

 けどやっぱり手玉に取られてる気がするな。もしサチが本気で詰める気があるんなら、もっと逃げる事も断る事もできなくされていそうで。

 勿論それだって憶測に過ぎないけど。もうちょっとでいいから手の内と心の内を話してくれれば、もう少しぐらい良好な関係を築けるんじゃないかと思うけど。

 ひとまず本人が一旦は控えてくれるって言ってるんだし信じとくとしよう。

 サチを見ると、相変わらず胸元がはだけていて、下着はつけていなかった。

「ほんとに控える気あるのか?」

 私が問うと、サチは胸元を隠す。

「お姉様のえっち」

「そういうのいいからさ。早く着ろって」

「はーい」

 そう言うとサチはシャツを脱ぎ始めた。

「何で脱いでんだよ」

「脱がないと中着れないじゃないですか」

「それもそうか」

 ひとまず向こう向いとこう。また何言われるか分かったもんじゃないし。

「見ててもいいんですよ?」

「ウワーッ!」

 突然耳元で囁かれて、思わず大声を出してしまった。近付いてきてるのに全然気付かなかった。

サチの方をみると、サチは上に何も着ていなかった。

「脅かすな。ていうか脱いでんじゃないよ。何で脱いで脱ぎっぱなしなんだよ」

「見てなくていいのかなーって思いまして」

「早く着ろ。控えるってどこいったんだよ。乳しか控えてないじゃねえか」

「お姉様、サチ相手なら何言ってもいいと思ってません?」

「いいから着ろ。背中に洗濯板押し付けんな」

「いい加減ぶん殴りますよ?」

「じゃあさっさと着ろよ。生乳押し付けれるキャラじゃないだろ」

「泣きましょうか? 警察呼ばれるぐらい」

 そこでサチの声色が変わった事にようやく気が付いた。さすがに本気で怒らせてしまっただろうか。というか警察沙汰はさすがにまずいだろ。社会的に死ぬ。

 いや、まずそういう問題じゃないな、これ。

「それとも、もっと真剣に誘惑でもしてみましょうか?それこそ我慢なんてしたくないと思えるくらいに」

 サチの声が耳に近付いてくる。

「ほら、逃げるチャンス、今しかないですよ? サチのことを力付くで振り払って。ねえ。……できません?」

 耳にふうと息を吹きかけて、私の頬を撫ぜる。その息が、その指が、その匂いが、その声が、その体温が。サチの全てが私の心を雁字搦めに縛り付けていく。

 言葉が出ない。止めろという拒絶の言葉が。理性はちゃんと止めろと言っているはずなのに。サチを拒絶できない。それどころか、サチが欲しいとすら思い始めている。

「……サチ……」

「はい、サチですよ。おねえさま」

 サチの唇が私の耳に触れる。いつの間にか、サチの手は私の胸に触れている。首筋を、暖かく湿った感触が流れるように滑っていく。これは舌なのだろうか。その気持ちの良さに身震いがする。

 ああ、本当に抗う気も起きなくなる。拒絶の意思なんて溶けて消えて、全てサチの思うままになってしまいたくなる。もっと気持ち良くして欲しい。そう、もっと。

 これがサチのいう、真剣に、ということなのか。

……ああ、そうか。

「……っ!?」

 振り払われ、サチは声にならない驚きの声を上げた。私が振り払えるはずなんてないのに、振り払ってみせたから。

「お姉様、なんで……」

 口の中が血で満たされていく。思ったより出血量が多い。口から血が垂れる。

「まさか、舌を噛んで!?」

 サチの催眠術だか洗脳術だか知らないけど、破るにはそれぐらい必要だろうし、それぐらいしかできる事もないし、と思ってやってみたけど、ビンゴだったな。漫画でこんなの見た事あるけど、ほんとに有効なんだな。

「こんなに拒絶されるなんて思いませんでしたよ。舌を噛んで、なんてほんとにそんな事しますかねえ」

 サチは一度天井を見上げてから大きく息を吐いた。

「わかりました。今度こそ本気で止めておく事にしますよ。流石に自傷してまで拒絶されると、サチもそんな気分じゃなくなりました」

「…………」

 何でこいつ、こんな格好付けてんだろ。やろうとした事って、レズレイプなのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。