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魔力1令嬢と欠陥王女は魔法が使いたい! ~誰も使えない古代魔法で人生逆転します~  作者: 鳥助
第一章

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9.信じる心

「では、今日の授業を終わります。放課後は問題を起こさないように」


 そう言って、先生は教室を出ていった。すぐに教室中がざわつくのを感じながら、カバンを持ってすぐにティアリスの席に行く。


「ティアリス、昨日の続きをしよう!」


「は、はい」


 ようやく授業が終わって、楽しい古代魔法の時間だ。ティアリスが立ち上がり、教室を出ようとすると――私たちの前にローゼリアと取り巻き達が立ちはだかった。


「何やら、古代魔法を使わせようとしているんですって? その欠陥王女に? 無理なことはおやめになった方がいいのではなくて?」


 しょっぱなから嫌味を言ってくるなんて……。どうやって、ここから去ろうか考えていると、ローゼリアの嫌味は鋭さを増す。


「今の魔法が使えないから、古臭い魔法に頼るなんて……なんて無様なの。古代魔法なんて、何百年も前に廃れた時代遅れの技術でしょう? そんなものを今さら学ぼうだなんて、笑わせないでくださる?」


 ローゼリアが笑うと、取り巻きたちも声を上げて笑う。


「現代魔法に劣るから廃れたのでしょう? 欠陥には欠陥らしく、過去の欠陥された技術にすがるしかありませんのね」


「ちょっと、それ以上は――」


 表情が凍り付いたティアリスを守るように前に出ると、今度は私へ視線を向ける。


「それに、ルシアさんでしたかしら?」


「……何?」


「あなたもずいぶんと夢見がちな方ですのね。魔力が1しかない人間が、今では誰も使えなくなった古代魔法を実現させる? 随分と大きく出ましたこと」


 挑発するように肩をすくめる。


「歴代の宮廷魔法師や王国最高峰の学者ですら解決できなかった問題を、一介の学生が解決できるとでも?」


 その言葉に教室の空気が静まり返り、ローゼリアは勝ち誇ったように笑った。


「古代魔法など、歴史書の中で埃をかぶっているのがお似合いですわ。研究する価値も、実用する価値もありません。そんなものに希望を抱くなんて、時間の無駄ではなくて?」


「そっ――」


「そんなことありません!」


 反論しようとすると、後ろからティアリスが怒鳴り声を上げて前に出てくる。ローゼリアを睨みつけると、堰を切ったように喋り出す。


「古代魔法を馬鹿にしないでください! ルシアを馬鹿にしないでください! 確かに、古代魔法は今では誰も使っていません。でも、それは価値がないからじゃありません。現代魔法が広まって、必要とされなくなっただけです」


「何を言って……」


「ルシアはちゃんと調べていました。私の体を調べて、魔法が使えない理由を見つけてくれました。そして、その原因なら古代魔法でなら解決できるかもしれないって……誰も教えてくれなかった可能性を示してくれたんです!」


 ティアリスの声は少しずつ力を帯びていく。力強い言葉に私の心が励まされていくような感じがする。


「ルシアは誰よりも考えて、誰よりも研究して、私を諦めませんでした。『魔法が使えるようになるまで離れない』って約束してくれました」


 その言葉に、教室のあちこちから小さなどよめきが起こる。ティアリスは構わず、一歩前へ踏み出した。


「だから私は、ルシアを信じます。古代魔法も信じます。まだ何も始まっていないのに、最初から無理だと決めつけるあなたの言葉には従えません」


 少しだけ震えていた声は、最後には王女らしい凛とした響きを帯びていた。いや、そこにティアリスの覚悟を見た気がした。


「ルシアは夢を語っているんじゃありません。誰も救えなかった私を救おうと、本気で挑戦しているんです。だから、邪魔をしないでください」


 そう言うと、ティアリスは私の手を握って、ローゼリアたちを避けて教室から出ていく。


 私はじっとティアリスの後姿を見ていた。いや、見ていたんじゃない……ティアリスの言葉を思い浮かべていた。


 胸の奥がじんわりと温かくなる。こんな気持ちになったのは、いつぶりだろう。今まで誰かのために研究をしても、こんなふうに信じると言ってもらえたことはなかった。


 それなのにティアリスは、みんなの前で私を庇ってくれた。私の研究も、私の夢も、一緒に守ってくれた。握られた手から伝わる温もりが、嬉しくてたまらない。思わず、その手を握り返してしまう。


 ……私の方こそ、ティアリスに勇気をもらっているんだ。だから私は、この手を絶対に離さない。


「私は……」


 突然、ティアリスが足を止めて呟いた。


「私はちゃんとルシアを信じてますから。約束してくれたから、だから……ちゃんと信じたいです」


「……うん、ありがとう。私もその期待に応えられるように頑張るね」


 その気持ちが嬉しかった。あまりこうして正面から信じるって言われたことがないから、ちょっとドキドキしている。


 握り返した手をまた握り返される。それだけで、心が一つになったようだ。なんだか、こそばゆい気持ちだ。


「杖づくり、頑張りましょう。色々と教えてくださいね」


「大丈夫。最高の杖を作らせるから」


 私たちは真っすぐ前を向いて歩き出した。

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