82毎回こちらを邪魔してくる男に勝つためにカードゲームを作った悪役令嬢は不敵に笑って勝負を仕掛けると彼は楽しそうに笑って受けて立ったがどうやら相手が一枚うわてだったみたい
ざまぁなし
「これで、うちの店の売り上げは、ゼロになったわね」
目の前で静かに微笑む男に精一杯の強がりを言った。男は国随一の公爵家嫡男であり、商売のライバルでもあるカウクス・アシュテルツ。微笑みは嘲笑っているようにしか見えなかった。
「スーノリミ様、貴方の商売はいつも、私に負けますね」
唇を噛んだ。言う通り、街で新しく商売を始めようとするたびに一歩先を読んで商売を、ことごとく潰してきた。
しがないコレクターだったのに気がつくと伯爵令嬢スーノリミ・トトフェルトになっていて、前世でハマっていた乙女ゲームの世界にいたわけだ。
ライバル令嬢、悪役令嬢としてゲームの主人公をいじめる役、ゲームのメイン攻略対象の男の婚約者でもある。最終的に断罪し、ヒロインと結ばれる運命を避けるためにこの街で自分の力で生きていくことにしたのだ。
知識を活かして様々な商売を始めた。洋菓子店、喫茶店、花屋。しかし、始める商売はいつもこの男、カウクスに潰されてきた。
「スーノリミ様、もう諦めてはいかがですか?」
慈悲深い笑みを向けられる。
「諦めないわ。絶対に貴方に負けない」
相手は面白そうに笑った。
「面白い。では、次も貴方の商売をすべて潰してあげます」
去って行ったカウクスにどうしたら勝てるのか、頭を悩ませた。勝つためには知らない、新しい商売を始めるしかないと前世の記憶を必死に思い出した。何か世界にないものはないか?
そして、一つのアイデアを思いついた、カードゲームだ。トランプのようなゲームは存在する。しかし、それは貴族たちが暇つぶしにやる単純なもの。
考えたのはもっと複雑で戦略的なカードゲーム。すぐにゲームのデザインを始めた。カードのデザイン、ルールの考案、ゲームの世界観。
寝る間も惜しんでゲーム作りに没頭し、ついに一つのゲームが完成した。ゲームをこの街で流行らせることに。
問題はゲームをどうやって街の人に広めるか。街の人は新しいものに警戒心が強い。特に貴族たちが怪しいと思うものは見向きもされないゲームを貴族たちに受け入れてもらうことから、始めることにした。
有力な貴族たちに招待状を送り、作ったカードゲームを披露。
貴族たちはゲームに最初は興味を示さなかったが、ゲームのルールを説明し実際にプレイしてみせると次第にゲームに夢中になっていってからは大成功だった。流行らせることに成功したのだ。
カードゲームは大流行し、貴族たちだけでなく一般市民たちも、ゲームに夢中になった。経済を大きく動かして大儲けしたので、カウクスに勝ったのだ。勝負を挑んだ。
「カウクス様、勝負してください」
面白そうに微笑んだ。
「何の勝負?」
「私の作ったカードゲームで、勝負してください。貴方が勝ったら私の作った、カードゲームをすべて、貴方のものにします」
男は目を丸くして驚いたような顔をした。
「スーノリミ様、貴方は本当に面白いことを言いますね」
勝負を受けてくれた。ゲームを始めた。カウクスに負ける気がしなかったし、ゲームのすべてを知っている。しかし、予想を遥かに上回る強敵だったと、戦略をすべて見抜き裏をかいてきて、負けた。
負けた。悔しくて悔しくて涙が止まらない。
「スーノリミ様、貴方の負けですね」
静かに言う。
「私の作ったカードゲームは貴方のものです。どうぞご自由に」
悔し涙を拭う。
「えーっと、スーノリミ様、貴方は本当に面白いですね」
彼は微笑みかけた。
「貴方は私に、一つ、教訓を与えてくれました。貴方は私の知らない新しい世界を、私に見せてくれました」
驚いた。
「どういう意味ですか?」
手を取り、真剣な眼差しで見つめた。
「スーノリミ様、貴方の作ったカードゲームはとても素晴らしい。貴方とこのゲームをもっと広めていきたいです」
胸が熱くなった。
「ルードヴィッヒ様、私と一緒にゲームを広めてくれるのですか?」
「はい。そして、私は貴方と一緒に国のすべてを変えていきたいです」
プロポーズした言葉に涙が止まらなかった。ライバルとして見ていたけれど、それだけではなかった。才能を認め、一緒に未来を創りたいと思ってくれていたのだ。
プロポーズを喜んで受け入れた。
そして、国のすべてを変えていく新しいカードゲームを創っていくことに。
人生を賭けたカードゲームは人生を変える、最高のゲームだった。
プロポーズを喜んで受け入れ、すぐに結婚の準備を始めた。結婚は国のすべての貴族を驚かせた。特に父は娘が自分の商売を潰してきた男と結婚することに、少し戸惑っていた。
「スーノリミ、本当にカウクス様でいいのか?」
父は何度もそう尋ねた。
「はい、お父様。彼と一緒に新しい世界を作っていきたいのです」
父は頷いた。結婚式は盛大に行われた。純白のドレスをまとい、隣に立った。優しく微笑みかける。
「スーノリミ、君は本当に美しい」
彼の真っ直ぐな言葉に顔が熱くなった。結婚式が終わるとカードゲームの事業を本格的に始めた。一緒に新しいカードのデザインを考えたり、新しいルールを作ったり。
作ったカードゲームはさらに大流行した。国の経済を大きく動かしたのだ。そして、二人の子供に恵まれた。幸せだ。カウクスと子供たちと幸せな日々を送っていた。
ある日、カウクスに一つの質問をした。
「ねえ、カウクス。どうして私の商売を、いつも潰していたの?」
困ったように笑った。
「スーノリミ、君は本当に面白いことを聞くね」
手を取り、真剣な眼差しで見つめた。
「スーノリミ、僕は君のことが好きだった。でも、君はいつも僕から逃げるように商売をしていた」
胸が締め付けられるような痛みを感じた。
「君をもっと僕のそばに置きたかった。だから、君の商売をすべて潰したんだ」
涙が止まらなかった。愛していたのだ。そして、自分のそばに置きたくてあんなことをしたのだ。
「カウクス、どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
言葉に優しく抱きしめた。
「スーノリミ、ごめん。不器用だった。でも、君とカードゲームで勝負ができて本当に良かった」
微笑んだ。出会えて本当に良かった。人生を賭けたカードゲームは人生を、大きく変える最高のゲーム。
そして、最高のゲームをこれからもカウクスと一緒に、創り続けていく。




