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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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81/106

81追放されたけどスープ一杯で専属料理聖女としてスカウトされてしまった。その後の元家族たちは風の噂では失敗して今では家もないとか

グルメ

「ララナナ、本当に無能ね。そんな泥臭い料理ばっかり作って聖女の品格ってものがないのかしら?」


 キンキンと響く高い声。目の前で扇子をバサリと広げているのは、姉のハメラルだ。豪華なドレスに身を包み、いかにも選ばれし聖女という顔をしているけど中身は空っぽ。できるのは魔力で見栄えのいい光の粒を振りまくことくらい。


 だけど、家ではハメラルが絶対で雑用係として毎日毎日、家族や使用人たちの食事を作り続けてきた。


「……お姉様。料理は健康を考えて栄養バランスを整えた。魔力も込めてあるから疲れも取れる」


 ハメラルは鼻で笑った。


「どうでもいいのよ。婚約パーティーでは、魔法が必要なの。料理は私が魔法で生成したものとして出すから。ネズミの相手でもしてなさい」


 前世の記憶を持ってブラック企業の社員食堂で、朝から晩まで包丁を握っていた栄養士が転生した。食材の声が聞こえる舌というスキルを持っていた。けど、国では派手な攻撃魔法や治癒魔法だけが聖女の力とされる美味しい料理を作るだけでずっと無能扱い。


 パーティー当日に仕込んだフルコースは、ハメラルの手柄として発表された。

 会場からは「魔法でこんなに美味しい料理を出すなんて!」「すごいわ」と称賛の嵐。用済みに待っていたのは、信じられない言葉。


「ララナナ。追放する」


 冷たく言い放ったのは父である公爵。ハメラルが隣でニヤニヤしながら付け加える。


「邪魔なの。不潔な料理女は国境の森で食べられて」


 着の身着のまま魔物がうようよいるという絶望の森に放り出されたが服の埃を祓う。


「一人になれた!」


 森の入り口で伸びをした。普通なら泣くところだろうけど清々しい気分。ブラック家庭、こっちから願い下げである。


「お腹が空いた」


 周囲の食材を鑑定する。


「すごい宝の山」


 アイテムボックスから取り出したボロボロの鍋を火にかけて湧き水に食材を放り込み、魔力をじっくりと馴染ませていく。アクを取り除き、塩だけで味を整える。やがて、森の中にあり得ないほど芳醇な、黄金色の香りが立ち込めた。


「よし、完成!聖女の黄金コンソメスープ!」


 スプーンで一口、熱々のスープを啜ると美味しい鶏の濃厚なコクが、森のキノコの滋味深い香りと混ざり合い、体に染み渡る。魔力が細胞の一つ一つに栄養を届けていくのがわかる。その時、ガサガサガサッ!!猛烈な勢いで茂みが揺れ、何かが突っ込んできた。


「ン……!天国を煮詰めたような香り!?」


 現れたのは、熊……ではなく豪華な服を着たパンパンに太った少年。彼は鼻をヒクヒクさせながら、私の持つ鍋を、獲物を狙う肉食獣のような目で見つめている。


「君!その手に持っている、輝く液体は!?」


「え、あ、スープで」


「スープ!?嘘をつけ!鼻は欺けないぞ!一口、いや一滴でいい僕にそれを飲ませてくれ!」


 勢いに圧倒され、予備のカップにスープを注いで渡した。少年はそれを奪い取るように受け取ると、一気に飲み干した次の瞬間。


「……っ!!」


 少年の顔が真っ赤になり、体がブルブルと震え出すと森全体に響き渡るような大声で絶叫した。


「美味すぎるうう!」


 足元にガバッとひれ伏した。


「専属料理聖女としてスカウトする!一緒に美食の国へ来るんだ!!」


 世界を変える出会いだった。偏食すぎる将軍との。


「ララナナ!次は!次は何を食わせてくれるんだい!?」


 そうして問いかけてくる彼に笑みを浮かべて味見させる未来があるなんて思いもしなかった。

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