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令嬢たちのざまぁコレクション(大体一話完結/短編集)  作者: リーシャ


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208/213

208硝子の指先。捨てられた令嬢は処刑台の騎士を自動人形として再構成する。雨の断罪は叫びにかき消されることはなく。苦痛を感じるたび、心地よい振動が伝わってくる……最高のリラクゼーション

 王立魔導学院の卒業パーティー。エルゼ・ニノルウェルは婚約者である第一騎士団長候補のヴィクターから、大衆の面前で剣を突きつけられた。


「平民の聖女メースルに嫌がらせを続けた陰険。お前のような心のない女は、我が騎士団にも私の隣にも不要」


 エルゼは学院一の魔導人形工学の天才。研究に没頭する姿をヴィクターは「気味が悪い」「女のくせに可愛げがない」と蔑んでいた。エルゼは無表情に一言だけ。


「言葉、記録しました。後悔なさらないで」


 それから一年。ヴィクターは聖女メースルを娶り、若き英雄として頂点に立っていた。しかし、隣国との戦争が勃発。聖女の加護は偽りであることが発覚し、ヴィクターは罠に嵌まって四肢を失う重傷を負い、国を敗戦の危機に追い込んだ大罪人として処刑を待つ身となる。


 冷たく湿った地下牢。処刑を翌日に控えたヴィクターの前に黒いドレスに身を包んだエルゼが現れた。


「エルゼ……!助けてくれ俺が悪かった!お前の技術があれば、俺の体を治せるだろう!?」


 エルゼは彼が「ゴミだ」と切り捨てた魔導工具を弄びながら、冷たく微笑む。


「ふふ。治して差し上げますわ。騎士としてではなく……作品として」


 翌朝、ヴィクターの処刑は執行されたと発表された。しかし、公式記録にはない特注の人形が、エルゼの工房で産声を上げる。


 数ヶ月後。隣国の軍勢が王都に迫った時、戦場に一体の異形の人形が現れた。全身を黒銀の装甲で固め、声帯を潰された代わりに魔導回路の唸り声を上げる最強の自動人形オートマタ

 ヴィクターの脳と神経だけを抽出し、自意識を保たせたまま絶対に主人の命令に逆らえない回路を組み込まれた生体魔導人形。


「あ、あ、ああ……っ!」


 装甲の中で、ヴィクターの意識は叫んでいた。目の前で愛した聖女メースルが、敵軍に媚びを売って自分を見捨てていく姿を見せつけられ、それでも彼は自分を捨てたエルゼを守るために剣を振るわされる。


「見てヴィクター。守りたかった聖女は、今あんなに醜く這いずっていますわ。斬り捨てるのが今のあなたの役割」


 エルゼの指先が魔導糸を弾くとヴィクターの体は本人の意志を無視し、無慈悲に聖女を、自分を裏切った騎士団の仲間たちを蹂躙していく。

 戦争はエルゼの人形軍団によって終わる。しかし、ヴィクターに安息はない。エルゼの寝室の隅に配置された、精巧な人間椅子リビング・チェアとしての役割を与えられていた。


「ヴィクター震えないで。神経をこの椅子のクッションに繋いであるのですから。苦痛を感じるたび、心地よい振動が伝わってくる……最高のリラクゼーションですわ」


 ヴィクターは、一生鋼鉄の体から出られない。食事も睡眠も排泄も必要ない。エルゼの冷たい美しさを特等席で見せつけられ、服従を魂に刻み込まれるだけ。


「次はあなたの心臓の鼓動を動力にして、街の時計塔を動かしましょうか。街にあなたの絶望を刻むの」


 エルゼの優雅な笑い声が言葉を失ったヴィクターの脳内に、永遠に響き続けた。

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