198 宝石の檻(ジェイル・オブ・ジュエル)偽りの輝きとガラクタの原石。無能は公爵家の面汚し。婚約は破棄、家からも追放すると言われるけどあなた達が愛でているそれは寄生虫なのです
この国じゃ成人の儀で宝石拍動、またはジュエル・パルスってのが測られる。心臓の鼓動がどんな宝石と共鳴するかでその後の身分が決まる。ダイヤモンドなら王族、ルビーなら武官。
で、公爵令嬢の私はどうだったかって?
計測不能。つまり、石ころ以下の無能でガラクタ。
「無能は公爵家の面汚し。婚約は破棄、家からも追放する」
などと吐き捨てたのは、婚約者の第一王子のバーラハ。横には、きらきらと輝くサファイアの拍動を放つ、義妹レーナが寄り添う。
「お姉様可哀想……石ころと結婚する王子様なんて歴史の笑い草ですものね?」
何も言わずに屋敷を出た。胸元に母から譲り受けた真っ黒な泥みたいな石のペンダントを握りしめて。
追放から一ヶ月。バーラハとレーナの結婚式。豪華絢爛な大聖堂で二人が誓いのキスをしようとした時だ。レーナの胸元のサファイアが、突如として不気味な黒いひび割れを起こした。
「なっ、何!?サファイアが……!」
石から溢れ出したのはどろどろとした黒い液体。実は他人の拍動を奪って輝く寄生石というパラサイト。レーナは無能と判定された才能を石で盗み取っていた。心臓と共鳴していたのは世界の根源。
すべての宝石の母体である黒鑽石。
私が会場の隅でフードを脱ぎ、胸元の泥のような石に触れる瞬間、石の表面が剥がれ落ち、大聖堂全体を飲み込むほどの圧倒的な純白の閃光が放たれた。
「ぎゃあああ!目が、目がぁぁ!」
バーラハとレーナは、光の圧力に耐えきれず壇上から転げ落ちた。拍動を奪いすぎていたレーナの寄生石は本物の主の光に耐えられず粉々に砕け散る。
宝石を失った彼女は一瞬で老婆のような姿に変わり、バーラハもまた無能を妃に選んだ愚か者として集まった列席者から冷ややかな視線を浴びることになった。
「行くよ」
震えながらこちらを見上げる元婚約者たちを一瞥もせず、教会の扉を蹴破って外に出た。外には漆黒の馬車と跪く仮面の男たちが待っている。
「おかえりなさいませ、真の主。これで始まりの石の一つが目覚めましたな」
「あと六つ。腐った宝石社会を一度全部ぶっ壊さないと気が済まない」
胸元の石は今はもう黒くない。世界中のどんな宝石よりも美しく残酷な白銀に輝いている。復讐はまだ始まったばかりなのよと笑った。




