103継母は今日も健康志向!私が有名な白雪姫の意地悪な継母に転生しちゃったの?なんでぇ?〜毒林檎は作らない〜
ざまぁなし
「え、私が有名な白雪姫の意地悪な継母に転生しちゃったの?なんでぇ?」
目覚めて鏡を見た瞬間、ローゼマリー伯爵夫人、前世は三十路、愛称はローズ。は絶叫した。
鏡にはツンとした高貴な顔立ちに、いかにも悪役といった雰囲気の美しい女性が映っている。美貌の持ち主が将来、美しい娘を毒殺しようとする悪名高い継母だという事実にくらくらと眩暈が。
「冗談じゃない!毒親なんて言われたことないし、健康志向で毒なんて大嫌いなんだけど」
悪役継母として断罪される未来を想像して青ざめた。ギロチン、毒殺返し、魔女狩りどれもこれも平和主義者には耐えられない。
「こうなったら、継母らしくない継母になって」
考えたのは悪役の代名詞ともいえる毒林檎の排除だ。
「ぜひ庭に素晴らしい無農薬オーガニック林檎の木を植えましょう!ビタミン豊富で美容にもいいんですのよ!」
夫である伯爵は妻の突然の健康志向に目を丸くしたが、もともと妻には甘いので「おや、良い考えだね、ローゼマリー。君が元気になってくれるなら」と快諾してくれた。
こうして、城の庭には品種改良された甘くて美味しい林檎がたわわに実る、健康的な林檎園が誕生した。毎日、専門の庭師と農学者を招き、無農薬栽培の指導に熱心。
「林檎は一切農薬を使っておりませんから、安心して皮ごと召し上がれまして。皮に栄養が詰まっているんです」
次に目をつけたのは物語のもう一人のキーパーソン、白雪姫こと義娘のユリア。ゲームのシナリオでは継母の嫉妬によって虐げられる存在。
「よし、ユリアちゃんを絶対に虐げない!可愛がって、誰もが羨むような美少女に育て上げてみる」
早速、部屋を訪れた。ユリアは物語通り、やや内気で、輝くような美しさを持っていた。
「ユリア、最近ちょっと痩せたんじゃない?顔色も良くない。ちゃんと食事は摂っている?」
突然の継母からの心配に目をパチクリさせた。
「わ、私、大丈夫ですわ」
「ダメよ!このままじゃ美貌が台無しよ。これからはあなたの健康と美しさを徹底的にプロデュースしてあげる」
ローズは宣言した。食事を見直し、毎食バランスの取れた野菜中心のメニューを考案。特製の美肌になるスムージーを毎朝作らせ、おやつには庭で採れたオーガニック林檎を使った手作りアップルパイを出す。
「林檎はね、腸内環境を整えてくれるペクチンが豊富なの。ほら、もっと食べなさい」
ユリアは、最初こそ戸惑っていたが継母の押し付けがましいほどの優しさと健康メニューのおかげで、みるみるうちに元気を取り戻していった。顔色はバラ色になり、肌はツヤツヤ。以前にも増して美しさに磨きがかかる。
ローズの部屋から魔法の鏡は撤去されていた。
「誰が一番美しいかなんて愚問。美しさなんて人それぞれだし、健康こそが一番の美しさってもの」
ある日、満面の笑みでローズに駆け寄ってきた。
「お母様!お母様のおかげで私、最近とても元気なんです!お肌もツルツルになって、学園のお友達にも褒められましたわ!」
「あら、そうでしょう、そうでしょう。元々美しいんだから、あとは健康に気をつければ完璧」
ローズは満面の笑みで、ユリアを抱きしめた。
「さあ、今日はとれたての林檎で特製林檎ジャムを作ってあげるわ!パンに塗ってもヨーグルトに入れても美味しいのよ!」
毒林檎なんてとんでもない。ローズが作る林檎は愛情と栄養たっぷりの健康林檎ばかりだ。こうして、悪役令嬢ならぬ健康志向の継母として転生し、自らの破滅フラグを次々と笑顔でへし折っていった。
ユリアはすくすくと育ち、伯爵家は明るい笑い声で満ち溢れる。
「え?魔女?まさか私が?フフフ、家族の健康と美容を願う、意識高い系の継母ってだけ」
ローズは今日も、美肌スムージーを片手に庭のオーガニック林檎を眺めている。毒林檎を作るどころか、健康にいい林檎のレシピを考案することに余念がなかった。




