102満月の夜、最強の守護者となった黒猫の君に救われた私 ~異世界で再会した溺愛は、やがて世界を救う愛へと変わる~
番系
あらすじ
目を覚ますとそこは異世界。前世の記憶を持つミツカは、優しい村人たちに保護されるも、村長の娘ユリシナのいじめに遭い心身をすり減らしていく。命の危機に瀕した満月の夜、ミツカを救ったのは一人の美しい青年だった。彼の名はシャールン。前世を超えた愛を育み、やがて幸せな未来を歩み始める。
本編
眩しい光に包まれ、意識がふわりと浮上した。見慣れない天井、嗅ぎ慣れない草花の香り。ここはどこ?
「んぐ……あれ?私、確かトラックに……」
前世の記憶が蘇る。学生だったのに、不運にも交通事故に遭ってしまったのだ。まさか、本当に異世界に転生してしまったなんて。
あたりを見回すと、簡素ながらも温かみのある木造りの部屋。窓からは緑豊かな景色が広がっている。
どうやら、私はこの世界のどこかの村に保護されたらしい。
数日後、村の人々から少しずつこの世界のことを教えてもらった。ここは翠の月と呼ばれる自然豊かな国で、魔法や精霊が存在するという。転生したのは、その片隅にある小さな村。
新しい生活に少しずつ慣れてきた頃、事件は起こった。村長の娘である保護先にいた義理妹ユリシナが突然冷たい視線を向けてきたのだ。
「仮初の姉さん、邪魔なのよ」
理由もわからず突き飛ばされる。ユリシナの目は憎悪に満ちていた。どうやら村人たちに優しくされているのが気に入らないらしい。
それからというもの、ユリシナは陰湿な嫌がらせを繰り返すようになった。食事に毒を盛られたり、夜中に部屋に忍び込まれて物を壊されたり。
そんな日々が続き、心身ともに疲弊していく。この世界にきて、まさかこんな辛い思いをするなんて思ってもいなかった。
ある満月の夜のこと。いつものようにユリシナが部屋に侵入してきた。手に持っているのは、キラキラと光るナイフ。恐怖で体が竦む中、背後から信じられないほどの強い力がユリシナを吹き飛ばした。
「貴様、ミツカに何をする!」
低いけれど深く響く声に振り返ると、そこに立っていたのは信じられないほど美しい青年。月明かりの下、銀色の長い髪が輝き、吸い込まれそうなほど深い紫色の瞳が怒りに燃えている。
絵画から抜け出してきたよう。ユリシナは苦悶の表情を浮かべ、ズルズルと後ずさりながら部屋から逃げ出していった。
青年はゆっくりと近づき、心配そうに顔を覗き込む。
「ミツカ、大丈夫か?どこか痛むところはないか?」
声を聞いた瞬間、心臓は激しく跳ねた。なぜだか分からないけれど声には聞き覚えがある。懐かしくて温かくて、どうしようもなく惹かれる声。
「あ……あなたは……?」
青年は優しく微笑んだ。笑顔を見た瞬間、記憶の奥底に眠っていた大切な存在が鮮やかに蘇る。
「ミツカ、忘れてしまったのか?おれだよ、シャールン。お前の大切な……」
シャールン。名前を聞いた瞬間、涙が溢れ出した。シャールンは前世で飼っていた黒猫の名前。彼が人型になって現れるなんて。
「シャールン!本当にシャールン?」
問いかけにシャールンは深く頷いたら、そっと私を抱きしめると確かな温もりとなって包み込んだ。
「ああミツカ。やっと会えた……ずっとお前を探していたんだ」
シャールンによると私が死んだ後、彼は強い魔力に目覚め転生したらしい。魂の欠片を感じ取り、ずっと探し続けてくれていたという。
それからの日々は夢のようだった。シャールンは辛い思いを二度としないようにと、ありとあらゆる手段で守ってくれる。
ユリシナが再び嫌がらせをしようとしても、シャールンの強い魔力が彼女を寄せ付けない。村の人々もシャールンの存在に畏敬の念を抱き、こちらに対する態度を更に改めた。
シャールンは普段は凛々しい青年の姿をしているけれど、二人きりになると前世の猫のように甘えてくる。膝の上で丸くなったり喉をゴロゴロと鳴らすギャップがたまらなく愛おしい。
「ミツカ、今日は疲れただろう?少し眠るといい」
優しい声でそう言うとシャールンはベッドまで運び、優しく髪を撫でてくれる大きな手に包まれると安心感で心が満たされていく。
「シャールン……ありがとう」
「ミツカが笑ってくれるならおれは何でもする」
シャールンの言葉は甘く熱い。前世では言葉を交わすことのできなかった彼が、今はこうして隣にいて愛を囁いてくれる。こんな幸せが訪れるなんて転生したばかりの頃は想像もしていなかったな。
ある日、シャールンは真剣な眼差しで見つめた。
「ミツカ、おれはずっとお前と一緒にいたい。二人で生きていきたいんだ」
胸はドキドキと高鳴った。前世からの新たな感情にシャールンのことが心から好きだと気づく。
「私も……シャールンと一緒にいたい」
シャールンは満面の笑みを浮かべ、優しく口づけてくれた瞬間、前世を超えた強い気持ちを感じた。
義理の妹のユリシナはその後も時折、憎悪の視線を向けてくるけれどシャールンが側にいる限り、もう何も怖くない。
いつか兵士に突き出されるまで遠くないだろう。こっそり訴える準備も証拠も集めているから。彼の強さと優しさがしっかりと守ってくれる。
この広い世界、二人だけの小さな楽園を築き始めた。陽だまりのような温かい場所で、シャールンの甘い愛に包まれながら、きっと幸せになるんだ。
前世での別れは悲しかったけれど、再会は、何よりもかけがえのない宝物。深い紫色の瞳に映る彼女の笑顔がいつまでも輝き続けるように。




