そのXLVII
愛って受け取ることを信じるものなのかな。
それとも譲渡するだけの思いやりなのかな。
ううん、どっちも違うんだろうな……。
それはさ、気付いたらもうそこにあるものなんだよ。
毎週日曜日に投稿しています。よろしくお願いします。
「…………んっ」
私はそこで目を覚ました。
「…………」
果てしなく長い夢を見ていた気がする。
もう、上手く思い出せないけど。とても、とても限りなく続く一本道を思いのまま進んでいた気がする。
それくらい、なぜか今、心が重たくて、胸があたたかい。
ただ、この気持ちを覚えることに時間がかなり過ぎ去ってしまったことを教えるように、開いた私の目に激しい光が差し込む。
突然の眩しさについ目を窄める。
「ここ、どこ……?」
太陽の照らす光は、まるで私を溶かすように激しく、それでも影の形を鮮明に残しては私の存在証明を示す。
だんだんとその鋭い光にも慣れてきたころ、意識もはっきりとし、私の今いる場所が顕著になっていく……。
「これは……桜……」
頭の上から次々と舞い落ちてくる桜の花びらが私の全身を覆っていく。
下を見れば、すでに私の足元はその撫子色に染め上げられていた。
私は一体どれだけの時間、眠っていたんだろうか……。
そんなにも疲れている体で、どうしてここに来たんだろうか……。
起きあがろうにも、私の足は痺れていて一歩も動かない。
こんなにも満身創痍なのに……私はなぜ。
なんでこんなにも満たされているのだろうか……。
「…………今日って、こんなにも青かったっけ」
今日の空を初めて見たような感想がぽろっと漏れ出す。
ここに来た理由も、なにをしに来たという意味も、私のここに在る現状が朧げに脳内を徘徊している。
時間が経つにつれ、その進んだ秒針の数だけ、私は薄っすらとその理解と整理が追いついてきた。
「確か、愛歌のために……」
そう、きっかけは愛歌が桜を見たいと言っていたから。
「でも愛歌は風邪を引いたから……」
だから私は一人でここに来たんだ。
「あの子に、桜を見せたくて」
ここの桜を私自身の意志で見せたくて。
あ、そうか……だから私は。
ふと、手元を移動させると、例の物に触れた。
「あった……これだ」
指がその紙をなぞる音が鳴る。
どこにでも売っているスケッチブック。
でも、だからこそ、これはもう……私だけのもの。
「いつの間にこんなに描いたんだっけ……」
私の手が触れるそのページにはすでに私のタッチだとすぐに分かる一本の桜が描かれていた。
間違いなく私の絵だ。見間違えようにも目を逸らすことはできない。
ゆえに、他の誰にも真似はできないこの瞬間の私だけのそれ。
私は、これを愛歌に見せたかったんだ……。
「愛歌はこれで喜んでくれるかな……」
不安はある。実力不足が物語る緊張はもうすでに私の鼓動を強く速くどくどくと唸っている。
でも、これは私だけの気持ちだから……譲れない唯一の想いは、愛歌は笑って受け取ってくれるのだ。
もう、こんなにも二人で過ごしてきたんだ。
これくらいのことも信じれないくらい、私たちの糸は脆くない。
だから、これを持って帰ろう。
私は凝り固まった体を思いっきり伸ばして、深く息を吐く。
「ん〜〜〜っはぁ…………」
今日は風も気持ちいい。肌を撫でる春風がまたその香りが私に始まりを告げる。
ここから、私から愛歌への告白を始めよう。
ポケットから携帯を取り出し、時間を確認すると、時刻はおやつを示していた。
もうこんなにも外は明るくなったのか……と冬の感覚が離れず驚く。
それでもここから帰る頃には夕日があの色で風景を彩るんだろうと私は帰り支度を進めていく。
手元にあるスケッチブックと筆記用具たち。それと確かお昼ご飯のパン…….これは進也に頼んで作ってもらったクロワッサンだ。
中身を確認すると、まだ不細工な形をしたクロワッサンが一つ残っていた。
「そういえば私も作ったんだっけな……」
進也がいつもどんな仕事をしているのか目の前で見学してると、どうせなら作ってみたらと進也に誘われて、私もこの一個を作らせてもらったのだ。
……でもやっぱ敵うわけもなく。
「だから、私もここから」
続けなきゃ。私だけの、私だけが辿る頂に行かなきゃ。
私はそのクロワッサンを隠すように布を被せると、そのバスケットを提げようとする。
すると、同時にぽとっとなにかが落ちる音がした。
「あれ…………あ、これ?」
別にバスケットにかけた布が落ちたわけでもないと確認すると、なんの音かと辺りを見渡した。
……落ちていたのは一機の紙飛行機。
きっと誰かが飛ばしたこれは風に揺られてここまで来たんだろう。
私はついでだし……と思い出にそれを手に取った。
「なんか、書いてる……?」
近くで見ると、折り目になにか文字のようなものが書かれている風に見えた。
少し興味本位で開いてみる。作った人には少しのごめんを添えて解体していく。
やっぱり、その中身にはなにかメッセージが残されていて。
私は、その言葉を真摯に受け取る。
「バカでも、だからこそ走れ。あなたの好きは、あなたが逃す他ないから」
私は、この人のことを知らない。
顔も名前も声も……。それでも。
この言葉は、その人の物語を嘘偽りなく真に私に飛び込んできたのだった。
動け私。確かな好きがある限り、その原動力のままに。
あ、どうも無事にホロ沼に半身浴しています雨水雄です。
うはぁ……やっちまいましたよ……ホロライブ。好き。
最近は仕事から帰るとまず動画配信見て聞いて、栄養補給しております。片手間にウマ娘を育てながら……。
いやぁ……でも色んな人がいて、その中でもやっぱてぇてぇものを見ると心があったまるものですねぇ……。
近頃、雨水が一番好きな桜も咲いてきましたし、あぁ今幸せを噛み締めております。
この心満たされる思いをね、是非ね、作品に昇華してね……みなさんに届けられるよう引き続き頑張っていきますよー。
さて今週もここまで読んでくださりありがとうございます。もしかすると最後の最後は日曜日だけじゃなく連チャンで投稿するかもなのでついてきてくれると幸いです。
では来週もよければここで。




