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23グラムの旋律  作者: 雨水雄
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そのXLVI

その魂の重さってね。


23グラムなんだって。


毎週日曜日に投稿してます。よろしくお願いします。

なにかが聞こえる……いや、聴こえる。

この地平線を果てしなくなぞっていくようなほど平和な色をしたその音色は。

踊るようにこの境界線を飛び越えていくような音符達は。


あぁ、知っている……私だけのもの。

知ってるよ。分かってるよ。これはもう、私だけのもの。

誰にも譲りやしない。誰にも教えやしない。

一人で身勝手に覚えて掴んで離してやらない。

これは彼女がくれた私だけの贈り物なんだから。

だから、私だけが大切にしてあげなきゃ……。


その音で愛歌あいかの愛の主張が分かるのは私だけ。

だから早く目を覚さないと。

だから早く体を動かさないと。

だから早く……もっと早く。

愛歌あいかの元へ会いに行かなきゃ。

こんなところで道草を食べてる場合なんかじゃない。

それどころじゃないのに……私は一体なにをしてる?

さっきまで愛歌あいかの傍で、愛歌あいかの言葉をもらって…………愛歌あいかと過ごしたことは覚えてる。

でもその蓋を開けた中身が全く思い出せない。

ほかになにか邪魔することもしてないというのに……。

私たちだけの特別な時間は、私たちだけしか記憶に残せないのに………。

なんで、なんで中身がこんなにも綺麗になくなってるんだ?

こんなにも気持ちは昂っているのに。こんなにも心は高揚しているのに。こんなにも胸は熱くなっているのに……。

こんなにも、愛歌あいかを愛しているというのに。

そんな大事な証だけが私の全身に刻まれているというのに。

その起因も遠因も原因もすでに私から逃げ去っている。


それゆえ私は今どこに立っているのかすらあやふやになっている。

ここは、どこ……私が知っている教室じゃない……。

愛歌あいかと過ごした時間を見守ってくれていた背景は今は真っ新な真っ白に移り変わっている。

歩いても歩いても進まない景色は、果たして私をどこに導くというのだろうか……。


愛歌あいかはどこ? 愛歌あいかに会わせて」

今すぐ私の全力を懸けて愛歌あいかの元へ飛び出してやる。

それでも、どこへ向かってもその純白は色が一切変わることはない。

息を切らしてどこを目指しても、辿り着きたい頂きはどこにもなくて。

私は死んでしまっているんだと……その可能性を疑った。

幾度となく顔も声も交わしてきた愛歌あいかの姿は。

もう、私の目の前には現れてくれない。これはもう、現実とはかけ離れている……。


私はもう、愛歌あいかが記憶の中でしか生きれない彼女になってしまうのではないかとひどく恐ろしい危惧を抱いた。


「やぁ、透華とうかちゃん。魂と魂が結ばれる旅は満喫できたかな?」

「あなたは…………」

姿はない。見えるのは真っ黒で人の形をしたシルエット。

平面でもなくその人物を形だったような立体をしている女性の声をしたそれ。

いや、でも私はその声だけは覚えている。

私を愛歌あいかに会わせてくれた人だ。

「どうだった? ちゃんと愛は分かった?」

「……はい」

私は、愛されているんだとその重さを受け取った。

たくさんじゃなくて、いくつもでもなくて。

ただ一つだけのとびっきり重たいそれを。

「それが、生きることに必要になんだとちゃんと学んだ?」

「はい、大丈夫です」

その一つしかないけれど。

もう、私はその一つを持っているから。

せめてその宝石を壊さないように、今度は二人て大事に守っていくんだと知った。

それが結果的に、生きることなんだと、知った。

「うんうん。なんかいい眼をするようになったね」

「はい。なんか、ありがとうございます」

「でも、死んでからそんな些細で当たり前なことに気付くなんて遅いからね」

「…………すみませんでした」

「でも、それに気付けたのが透華とうかちゃんでよかったよ。あなたは本当にその意味が分かってくれた気がするから…………」

その人の顔はよく見えない。というか表情があるのかすら定かではない。

それでも、その声は悲しさを私に伝えてくれる。

この人は、もしかしたらもう…………私の生きている世の中にいない人なのかもしれないと悟った瞬間だった。

その人は、説明するように、言葉を後付けた。

透華とうかちゃん。よく覚えていて」


「死んで離れるのは、心の時間」


「その体が焼かれてなくなっても、その体が教えてくれた感触は私の中にあるから。その言葉が宙を舞ってしまっても、その意味が刻まれるのは私の頭の中。その人がこの世にいなくても。泣いても笑っても傍に駆け寄ってくれなくてもね」


「時間は流れていくの。もう一緒に過ごせないのに、また時間は進んでいくの。そして、その分だけ私はその人の分まで背負って覚えて、消さないようにしなきゃいけないの」


「それが、心の距離。胸の奥にしまってある時間は止まったままなのに、世の中はそんなのお構いなしだから。それってすごく切なくて虚しくてさ……泣くしかないんだよね」


その人が語るその内容は。

今すでにその人が抱えている後悔そのものだった。

いや、たぶんそれは、この人だけなんじゃない。

この人を失ってしまった大事な人も同じように抱えている後悔なんだ。

思い合ってるのに時間は記憶を上塗りしていくから。

必死に溢さないよう、見落とさないように抗い続ける人生が、お互いに残されているんだ。

そんなのって……やっぱりやだな。

「だからね、透華とうかちゃん」

「はい」

「その今さ、魂から結ばれた愛をね。どうかまだ大切にしてほしい」

「はい」

この人は、私がまた明日を選んだことが本当の意味で理解していると言ってくれているけれど。

私にとってはなにを理解できているのか自分では分かっていない。

それに、私自身、この人が今抱えている相当のものを想像しできてもいない。

ただ、でもこの人は正しい道草を踏み外したからこその声色をしていて。

だからこそ、美しく清らかでもないすこし生々しい色をした正しさというものも知っているから。


だから私にこんなにも言葉をくれたんだろう。


だから、私はまた歩くよ。

はいどうもーこんばんは雨水雄です。

いやもう作品のことに触れようかと思ってるんですけど、それは今あとがきで書くようなことではなく、作品の中で全部伝えるべきなんだろうと判断した結果ですね……近況報告します。

いや、別に近況報告の優先度が上がったとかではなくてですね。ただ単にここで作品の行間を語るより、読者には自由に受け取ってもらって、幅広い範疇で解釈してもらえたらな……と思ってるだけなんですよ! 本当に!

というわけで近況報告しますね。

あのですね、最近雨水の周りがホロライブにハマっておりまして……会う度にその話ばかりで雨水はいつも無言なわけですよ。でもやはり布教活動は活発化していきましてですね………雨水もちょっと観てみたわけですよ。

………ノエフレとおかころてぇてぇ…………ってなったわけですよ。まだにわかですけどね!

つまり雨水は今、この底の見えない深沼に足を踏み入れるのか入れまいかをすごく悩んである状況ということでした以上です!ご精読ありがとうございます。

さて今週もこんなつまらない話まで読んでくださり本当ありがとうございます。

では来週もよければここで。

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