そのXXXVII
人の記憶に生き続けるということは。
果たして、その人にとって最善なんだろうか……。
もし、私の死が、誰かと足枷になるのなら……。
でも、それを確認できる死なんて、どこにもない。
毎週日曜日に投稿してます。よろしくお願いします。
私と彼女が足を止めたのは、歩き出してから時計の長針が半周したころだった。
それは、同時に私と彼女の手と手が繋がれていた時間でもあった。
視界いっぱいでも足りないほどの広大で膨大なその景色は。
きっと二度と頭から離れないことだろう……。
緑地公園とでもいうのだろう。
自然に育って行く新緑をそのまま自由気ままに囲い、その中で憩いの場として利用できる広場。
そして、この季節はその緑は色を変えて。
私たちの目には今、燦然と舞う蝶のような撫子色のそれが映っていた。
「きれいね……」
隣で感嘆の声をささやく彼女。
そんな彼女が着ている服と同じ色のそれが、目の先には一面を埋め尽くしていた。
彼女は進んでいく。まるでその色の中に馴染んでいくように、私から離れていく。
当然のように千切れた私の手と彼女の手。
「……うん、きれいだね」
私はただ彼女の後ろをついて行く。
その色と彼女の色が交わる。それでも彼女は彼女だ。
溶け込んでしまいそうな最中、それでも彼女はやっぱり私の目の中には特別な存在感を放っている。
しかし彼女はそれに気付かない。その風景が美しいと、その中に体を放り込んでいく。
まるで、今この瞬間、彼女の中で私はどこにもいないのではないだろうか……。
春の風物詩。桜の花は。
咲いては散っていくだけのその無機物は。
それでもそこにいるんだと。だから美しいんだと。
彼女のその引き込まれて行く歩みが、あのときの彼の言葉を私に思い出させた。
いくら美しい人の、その美形な顔立ちも時が経てば慣れてしまうものなんだと、クラスの誰かがぼやいていたのを耳にしたことがあるが。
それはあまりにも残酷だなと、そのクラスの誰かの言葉が胸の奥で長く居続けた。
きっと美しい人というのは、その整った顔だけが美しいはずではないはずなのに……それでもその見て分かる部分だけで人に与える印象が操作されてしまうというのはひどく可哀想に聞こえる。
もっと知ってほしいものがあって、もっと伝えたいなにかがあって、もっと届けたい自分がいるはずなのに、他人に見られるのは顔ばかり。おまけに生きている時間と共に慣れたと言われて期待は薄まる一方……。
もし、人の輝ける時間というものが平等ならば、美しく生まれた人は望んでもいない形で光を放っては息途絶えてしまうことになる……美人薄命とはこういうことを言うんだろうか。
ふと、そんな余計な考えごとが頭の中を走り回る。
今、私は桜を見て美しいと感じているこの気持ちも、また1年後に来たときには、そうではなくなっているかもしれないも危惧したせいか。
彼女と並んで見るこれ以上ない眺めも、2度目には普遍的な景色に変わっているかもしれないと危惧したせいか。
「……………」
ふと隣を見る。
彼女はそこにいて、上を見上げて桜の木に目を奪われている。
おそらく、美しいと感じているから、目を離さないでいるんだろう。
けれど、それも今日で最後かもしれない……。
それはなににも変えられないほど悲しくて切ない。
でも、それくらい特別なんだと思えれば、ちょっとは報われる。
…………桜並木に囲まれて流れる沈黙。時折聴覚を刺激する風の音。
自然とは、こうして生まれてくることに羨望して、希望して渇望して誕生したわけじゃないのに、こうして私たちの言葉を奪うほど目に焼き付いてくる。
本当……ずるいと思う。でも、同時にやっぱりそんな風に生まれてきてしまった人は、無駄に背負うものがあることがあるんだなと心を寂しくさせた。
人の心と目を魅了してしまうから、ちやほやされる。でもそれもいずれは平凡になり、もしくは冷たくなる。
…………それは、なにもない私と比べるとどちらがましなんだろうね。そんな疑問が宙に舞う。
美しくも、醜くも、平等な命だ。
桜は、もし忘れてしまってもまた咲く命だ。
なら、私のこの命は、どこを彷徨うのだろうか……。
それが収まる箱を、私は想像できなかった。
どうもどうもこんにちは雨水雄です。
もう、今年に入って1ヶ月が経とうとしてますね……。
2月がやってくるとあれですね。あれ。
ば、ばばばばれん………ではなく、雨水の誕生日です!
雨水ももう少しで歳を重ねるときがやってきます……。
また始まる新しい歳の一年ですが。
やりたいことはやっていこうと思いまして、準備しております!
ということで、まぁぼちぼち頑張ってますので、もしお目にかかったときはどうぞよろしくです。
さて、今週もここまで読んでくださりありがとうございます。
では来週もよければここで。




