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第2話  作者: 穂低えんじ
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後ろ髪が切られた日のことです


『かねこまる、未知との遭遇』

会社帰りの夕暮れ時、厨房の先輩であるけむ干太さんが「ちょっとゲームセンターのUFOキャッチャーに寄っていかないか」と言い出した。

それを聞いた小丸さんは、まるで子供のようにジタバタと地べたを踏み鳴らし、どうしても自分も行きたいと猛烈に駄々をこね始めた。

けむさんと私はすっかり困り果て、ため息を隠せないまま、仕方なく小丸さんを連れて行くことにした。

ゲームセンターの喧騒の中、まずはけむさんが手慣れた様子でクレーンゲームのレバーを握り、景品を狙い始めた。

お金がないはずの小丸さんは、その横にぴったりと張り付き、けむさんの指の動きをじっと穴が空くほど見つめている。

すると、小丸さんはポケットから僅かな小銭を取り出し、私たちのプレイをそっくりそのまま真似て、勝手に隣の筐体のボタンを押し始めた。


しかし、見様見真似のクオリティは低く、あっという間に手持ちの小銭は底を突いてしまった。

何も取れずにイライラが頂点に達した小丸さんは、「もうこうなったら力技で勝負だ!」とばかりに、そのゲーム機を両手でガシッと掴んだ。

商売道具の個体を壊んばかりの馬鹿力で、ゲーム機ごとガタガタと激しく揺さぶり始めたのだ。

その凄まじい衝撃に呼応したのか、ゲーム機のガラスの奥で突如として空間が歪み、手のひらサイズの本物のUFOが出現した。

激しくシェイクされるアームが、予測不能な軌道を描きながら、その未知の飛行物体をガシッと奇跡的にキャッチしてしまう。

けむさんと私は「嘘だろ・・・・・・!?」と声を失い、ゲーム機のあり得ない光景に顔面蒼白で大焦りした。

身動きの取れなくなったUFOから、私たちの脳内に直接響くような奇妙な電子音が聞こえてきた。

「助けてくれたらお礼をします。この後、あなたたちの記憶は消させてもらいますが、お礼は必ずします」

突然のテレパシーにけむさんと私がパニックに陥る中、小丸さんだけは平然とゲーム機のレバーを握りしめていた。


小丸さんがレバーをガチャガチャと力任せに動かすと、アームがUFOを掴んだままスライドし、見事に下の景品口へとボトンと落とした。

小丸さんは内股のまま素早く手を突っ込み、取り出した本物のUFOを「ナメ」と短く呟きながら、窓の外へ放り投げて逃がしてやった。

自由になったUFOは夜空へ飛び立ちながら、「お礼は必ずします」という最後のテレパシーを私たちの脳内に残していった。

直後、ゲーム機から「ピーピーピー!」とけたたましい報音が鳴り響き、顔を真っ赤にした店員がダッシュですっ飛んできた。

店員は、大暴れした小丸さんの後ろに回り込むと、まるでUFOキャッチャーのアームのように彼の首根っこをガシッと掴み上げる。

暴れる小丸さんを宙づりにしたまま出口へと運び、「はい、さよなら!」と店外へ放り出す店員を、けむさんと私はただ呆然と見送った。

その直後、私たちの頭の中で何かがパチンと弾け、ゲームセンターでの奇妙な出来事はすべて記憶から消し去られてしまった。


翌朝、厨房に立つと、けむさんが「あれ?小丸さん、後ろ髪切られて泣いてたのに、なんで元通り生えてんだ?」と首を傾げた。

小丸さん自身も「さあ?」という顔をしていたが、なぜかその日一番の綺麗な千切りキャベツを、誇らしげに盛り付けていた。

UFOのお礼だとは誰も思い出せない出来事でした。

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