↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2話  作者: 穂低えんじ
PR
23/46

真夏の星座(かねこまる座)の誕生


「皆さま、本日は満天の星々が広がるプラネタリウムへようこそ。今夜は、夏から秋にかけて南の空、わし座のアルタイルのすぐ傍にちょこんと輝く、六つの星でできた小さな星座・・・・「いるか座』にまつわる、世にも奇妙な神話をお話しいたしましょう。......いえ、ギリシャ神話ではありません。日本の、とあるクソジジイの神話です」   

アスファルトがドロドロに溶け出しそうな、八月の猛暑日だった。


男の名は小丸(こまる)。

男は一冊の絵本を睨みつけていた。

かつて娘のカイちゃんのために幼稚園の時に買ってあげた、ボロボロの『笠地蔵』である。

「うう・・・・・・ううう・・・・・・ナメ・・・・・・」


突然、男が号泣し始めた。

「お地蔵さん、可哀想ナメ・・・・・・俺が、助けてあげるナメ・・・・・・」

何をトチ狂ったのか、このクソジジイ、真夏の炎天下にお地蔵さんを救うべく立ち上がったのだ。

絵本の爺さんは五つの笠だった。だが、かねこまるは抜かりない。男は、どこかで拾ってきたビニール傘を六本、引きずり出してきた。

「熱中症対策ナメ」

男は六本の傘を抱えて外へと飛び出した。

ジリジリと照りつける太陽の下、街道沿いに並ぶ六体のお地蔵さん。かねこまるは「トントントントン豚トントンナメ•••・」と不気味な呪文をブツブツと呟きながら、一体ずつ丁寧にビニール傘を差しかけていく。


ついでに、自分の背中から剥がした湿布(周りの人が涙を流すほど強烈な臭い)をお地蔵さんの顔面にペタペタと貼り付け

「これで日焼けしないナメ。男の約束ナメ」

すべての傘を配り終えたかねこまるは、満足してボロ小屋へと帰っていった。

その日の夜のことでございます。

ズシン・・・・・・ズシン・・・・。

熱帯夜の静寂を破り、不穏な足音が小屋の前に響いた。

こまるさんがボンドで固めた眼鏡をズラしながら扉を開けると、そこには、日傘を差され、顔面に湿布を貼られた六体のお地蔵さんが立っていた。

お礼を届けにやってきたのだ。


しかし、お地蔵さんたちも流石に、この真夏のクソジジイの放つ異様な熱気と湿布の激臭には耐えかねたのだろう。彼らは玄関先に品物をそっと置くと、そのまま、夏の夜空の彼方へと吸い込まれるように、ものすごいスピードで直上昇していった。

天に昇ったお地蔵さんたちの魂と、あの六本のビニール傘。

それらが夜空に美しく並んで固まったもの・・・・・・•。

皆さま、それこそが、今も夜空に輝く「いるか座』の由来なのでございます。

ーーえ?後日談ですか?

もちろんございます。

お地蔵さんたちが宇宙へ帰ったことを知ったこまるさん。何を思ったのか、夜空に向かって内股でカー杯ジャンプしながら、こう叫んだそうです。

「私も混ぜるナメーーーツ!!」


自分も七番目の星として、いるか座の仲間入りをしようと宇宙へ直談判しに行ったのですね。

しかし、夜空のイルカ(地蔵)たちから返ってきたのは、あまりにも冷酷なメッセージでした。

『いえ、もう六個で席は間に合ってますので。お引き取りください』

こうしてこまるさんは、宇宙から無慈悲に地上へと返却されたのでした。

翌朝、厨房には、お地蔵さんたちが置いていった「お客さんの残飯」を、お店のどの料理よりも美しく立体的なイルカの形に盛り付ける、こまるさんの姿がありました。

「トントントントン豚トントン・トントントントン

豚トントンナメ・・・・・・.」

その包丁の音を一度でも聞いた者は、夢にまであのクソジジイが現れるという、悪夢のような呪いにかけられるのです。


かねこまるの悪夢は、夜空の星になっても終わらない。

めでたし、めでたし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。