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第2話  作者: 穂低えんじ
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【第19話】恐怖の錬金術と、宇宙のバグ「お、お買い物の実地訓練・・・・・・!」


「素晴らしいファミリードラマです、山田師匠!」

物陰で涙ぐみながら、必死にメモを取る、ものかさん。私は彼女を連れて、ある男と女の子の後ろを尾行していた。

ーーなぜ、私たちがこんなことをしているのか。

話は昨日に遡る。いつものように娘のカイちゃんにお金をせびった小丸さんだが、さすがにカイちゃんも父親を甘やかし過ぎたと猛省したらしい。そこで、小丸さんが一番嫌がる『一万円の正しい使い方』を訓練することになったのだ。

一万円札を両手で恐る恐る掲げ、内股で不審な歩き方をするクソジジイ。私たちはそんな彼の頼りない背中を見守りながら、近所のおもちゃ屋へと向かっていた。


小丸さんがどうしても欲しがっていたもの。それは、レトロなプラスチック製の『ヨーヨー』だった。

「これ、よーよー、ナメ。アメリカの、おもちゃ、ナメ」

嬉しそうにヨーヨーを握りしめる小丸さん。カイちゃんに背中をグイグイと押され、ついに運命のレジ前へと立たされた。

店員がバーコードを読み取り、事務的な声で告げる。

「300円になります」

小丸さんは、まるで不発弾でも差し出すかのように指をガタガタと震わせながら、例の「意味不明な紙切れ(一万円札)」を店員に手渡した。

ここまでは、まだ良かったのだ。

真の恐怖は、ここから始まった。

レジがチーンと小気味よい音を立てて開き、店員が笑顔でこう言った。

「はい、お釣りです。九千七百円のお返しになります」


店員の手から小丸さんへ、滑り込むようにして手渡されたもの。

それは、小丸ヨネが世界で一番愛してやまない、輝かしい丸い小銭たち。

そしてー。

大好きなはずの千円札が、なぜか一気に「9枚」へと増殖しているという、悪夢のような怪奇現象だった。

小丸さんの脳内で、ありえない計算バグが発生していた。

(300円のおもちゃを買ったはずなのに、なぜか手元に千円札が9枚も増えて戻ってきたナメ。この紙切れ、増殖するナメ!呪いの錬金術ナメ・・・・・・!怖いナメ!!宇宙の、バグ、ナメ!!!)

「お、お父さん!?」

カイちゃんが叫んだ時には、もう遅かった。

大好きなはずの千円札が「身の毛もよだつ恐怖の増殖バグ」を起こしたショック。それに脳のキャパシティが耐えきれず、小丸ヨネさんは一瞬で白目を剥いた。


そして、口からカニのようにブクブクと泡を吹きながら、内股のままレジの前で「どてつ!!!!」と盛大にぶっ倒れてしまったのだ。

「お父さあああぁん!!何やってんのよ買い物してレジで泡吹いて倒れないでよ恥ずかしい!!」

頭を抱えて絶買い(絶叫) するカイちゃん。

「すごいです山田師匠!お釣りの概念が理解できなくて大爆発する主人公!こんなのライトノベルでも盛りすぎです!」

倒れたジジイをこれでもかと跨ぎながら、ノートに猛烈な勢いでペンを書き殴るものかさん。

私はただ、静かに天を仰いだ。

(お釣りの仕組みくらい、頼むから事前に予習しておいてくれよ…!)

現実世界のお買い物のルールすら自身の狂気でバグらせ、娘の前で泡を吹いて伝説を残す。

小丸よねという、本当の意味で誰も太刀打ちできない最強のクソジジイに、私はおもちゃ屋のレジ前で、心の中で盛大にツッコミを入れざるを得ないのだった。

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