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魔法使いと皇の剣  作者: 123
2章 戦乱の序曲
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女騎士ガルシア

 ジンはミエラ達が窓から出ていくのを見守り


「さて…頼むから。すぐに終わってくれよ」


 ジンは今にも近づいてくる足音と鎧の音を聞きながら部屋の扉に向かって呟いた。


 扉の向こうから響く叩く音に一瞬警戒心を高めたが、すぐにその音に応じて扉を開けると、目の前に立っていたのは、清潔感のある甲冑をまとい、金色の短髪を持つ綺麗な女騎士だった。


 彼女はジンを見据えながら、きっぱりとした口調で言葉を続けた。


「夜分に失礼。この宿で争いの音が聞こえたとの報告を受けました。さらに、宿泊者以外の者が負傷しているとの情報もあります。現在調査を行っており、宿泊者の皆様に事情を伺っています。」


 彼女の声には毅然とした態度がありながらも、抑制された冷静さが感じられた。その額には、まるで勲章のように刻まれた古い傷があり、それが彼女がただの新米ではないことを示していた。


 その瞳には鋭い光が宿り、目の前のジンをじっくりと観察しているようだった。ジンは動揺を抑え、表情を崩さないままゆっくりと頭を下げた。


「お疲れ様です。それについて事情を知っています。私が当事者ですから」


 ジンは穏やかな声だがはっきりと自分が関わってる事を告げると女騎士はジンの言葉に眉を少し動かして視線を部屋の中に移した。目は細部にまで注意を払っており、一つひとつを観察しているのが明らかだった。


「失礼ですが、貴方は事情を知っていると事ですが。それより先に一点確認があります。宿泊者のリストですと、この部屋に泊まっているのは女性2名ミエラとアイリーンでは?一人は竜族ですが」


 その問いに、ジンは一瞬の間を置いたが、すぐに微笑みを浮かべて答えた。


「はい、それについてもお話致します」


 ジンが話しの為に部屋の外に出ようとすると女騎士はそれを制して


「失礼ですが、部屋の中でお話を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」


 その問いに、ジンは一瞬の間を置いたが、すぐに頷き


「もちろんです。私の部屋ではありませんが、どうぞ」


 部屋に招きいれると、女騎士は他の騎士には部屋の外で待機するよう指示を出し一人で部屋の中に入ってきた。女騎士は部屋に足を踏み入れた後、じっくりと室内を見渡しながら慎重に観察を始めた。


 家具の配置や床にある微かな痕跡、窓の開閉状態など、彼女の目は訓練された鋭さを持ち、机の上にあったアイシャの持っていた道具に目を止めた後ジンの方に静かに目を向けた


 ジンはそんな彼女の動きを静かに見守りつつも、自身の平静を保ち続けた。


「まず、私はジンと言います。此方には旅の途中で⋯」


 女騎士はジンの自己紹介を遮るように手をあげると微かに口角を上げ話し始めた。


「貴方達の事は存じてます。なので私から名乗りましょう。私はオーデント国の七騎士ガルシアと言います」


 ジンは驚いた。

 目の前にいる女性がこの国まで共にしたバスバと同じ七騎士である事と共に、わざわざ宿の騒ぎに駆り出してきた事に



「失礼致しました。名誉ある七騎士の方とは知らず。道中バスバ様と彼を支える、騎士の方々にはお世話になりました。ですが、そんな方が宿の調査に?」


 ジンはわざと興味を装いながらも、その真意を探るように言葉を投げかけた。


 ガルシアはジンの問いかけに対し、微かに微笑みを浮かべながら、部屋の中央に立ったまま静かに応えた。


「ええ、騒ぎの内容に関して詳細を聞いていた訳ではないですが、バスバより貴方達がこの宿を目指していたのは聞いていたので出向かせて頂きました。ですが私の我儘で到着が遅れてしまったので貴方に詳細を聞かないといけません」


 ジンはガルシアの説明に引っかかる部分を感じていた何故バスバから、自分達が何処の宿泊先を目指したのか聞いたのか何故自分達がいるからという理由で深夜の要請でわざわざ来たのか


「私達がいるからですか⋯?」


 ジンの疑問にガルシアは静かに頷いたが


「はい。ですが先に何があったのかお話頂きたい」


 ジンはガルシアの問いかけに一瞬間を置き、内心の警戒心を高めながらも落ち着いた態度を崩さずに答えた。


「わかりました。まず、この宿で起こったことについてご説明します。」


 ジンはあくまで冷静に、アイシャの事は隠し、事実を選びながら語り始めた。ガルシアはジンの話をじっと聞いていた。その表情は動揺を見せることなく、鋭い観察力で彼の言葉を分析しているようだった。


「以上が事の顛末です。ミエラとアイリーンは逃げた襲撃者を追いかけていきましたので、俺も直ぐに追わないといけません」


 ガルシアはそんなジンを見据えて


「事情はわかりました。ですが私の話しも聞いて頂きます。」


 ジンは自分の話しを理解したうえで止めるガルシアを怪訝に見つめ言葉を待った


「まず、貴方をこのまま行かせる事はできません。」


「えっ?」


 ジンは思わず言葉を漏らしてしまった。

 ガルシアはそのままジンの反応を待たずに話を続けた


「ジン殿、貴方はバスバ達と共に捕らえた襲撃者を覚えておりますか?」


 忘れるわけがないとジンを思った。捕らえたのはつい先日だと


「ええ、覚えていますが⋯」


 ジンの返事にガルシアは頷くと


「私は王より命じられ捕らえた襲撃者を調べ裏で動く者を調べておりました。襲撃者の一人、ピリ厶は身元も含め調べがつき調査にも協力的でした。しかし肝心の事は得られないので、襲撃者のリーダーより話を聞こうにも語らず⋯何より身元も分からず」


 ジンは予想通りの答えにますます疑問が止まらなくなっていた。


「しかしそれはおかしい事なのです。何故なら私達は盗賊ギルドの人間はおおよそ把握しているので」


「? 把握しているというのは」


 ガルシアはジンの様子に微かに笑みを浮かべ


「この国の不穏分子の一つである盗賊ギルドを国が監視してない訳はありません。内情までは関与してませんがいざという時に動けるよう対策済みでした。」


 ジンはガルシアの話を聞きながら、必要悪で見逃されていただけかと無理やり納得させて


「ではリーダーは盗賊のメンバーではないと言う事でしょうか?」


「ええ。そこで自ら真の王と名乗る不届き者から追って調べる事にしました。自ら王を名乗るぐらいなので⋯王家ゆかりの者かと思い」


 ガルシアは蔑みが混じった馬鹿にした笑いで話を続けた


「面白い事に襲撃者のリーダーは直ぐにわかりました。第二王子レグラスの近衛兵だったと」


 ジンは話を聞いてもあまり驚きはなかった。内輪で揉め事が多いとは聞いていたのもあったがそもそも誰かわからなかった為だ



「第二王子の近衛兵が…なるほど。それが『真の王』と名乗る理由ですか。」


 ジンはあえて感情を抑えた口調で答えた。ガルシアはジンの反応を観察しながら、さらに話を続けた。


「そうです。そして我が国の近衛兵は近辺警護の為に顔を知られないよう職務につきます。ですが彼がそんな行動を取る必要があったのか、そして彼の裏にいるが第二王子なのか突き止めないといけません」


 ガルシアは一歩ジンに近づき、その鋭い瞳で彼を見つめた。


「ここから先は我が国の事。手を引いて頂きます。私が国の情報を開示してまで、貴方にお話したのは、納得頂く必要を理解しているのと、貴方達の目的を理解している為です。」



 ジンはその問いかけに対し、一瞬言葉を詰まらせたが、すぐに冷静を取り戻し、視線を逸らさずに答えた。



「勿論です。これから先はこの国の内政にも関わります。関係ない私達が踏み込むべきではない事も理解できます。」


 ジンの言葉にガルシアは満足そうに頷いたが


「ですがお話した通り、既に仲間達は盗賊を追いかけているので、合流はさせてください。出来れば何故仲間の一人を狙ったのかも知れたら嬉しいです⋯」


 ジンはその問いに対して、慎重に言葉を選びながら答えた。ガルシアはジンの言葉を受けて、深く息を吐いた。


「確かに⋯そちらに関しては構いません。ですが向かう先が盗賊アジトならば私達もこのまま同行します。貴方のお連れが既に踏み込んでいるならば危険かもしれないので。」


 彼女しばらく考え込んだ後、更に毅然とした口調で告げた。


「ですがお話を忘れないようお願いします。もしも我が国の王族が関わっているならば、これは国の恥。くれぐれも内密に、また貴方の謎が解けるように善処しましょう」


 ジンはガルシアの言葉を静かに受け止め、真剣な表情で頷いた。


「分かりました。それではご同行宜しくお願いします」


 ガルシアはその答えに満足げに微笑みを浮かべた。

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