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魔法使いと皇の剣  作者: 123
2章 戦乱の序曲
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休息にむけて

 ミエラ達は緊張した空気の中から解放され胸を撫で下ろしていた。


「ジン、大丈夫だった⋯?」


 ミエラは隣で先程まで王と剣を交わしていたジンにやっと声をかけることができた。


「うん、大丈夫だ。俺は…なんとか」


 ジンは微笑みを見せようとしたが、その表情は複雑だった。アイリーンも隣に並び、腕を組みながら溜息をついた。


「ったく、危なっかしいわよ! あの人、どう見ても本気じゃなかったけど、あんたを試してたんでしょ? よくやったって言いたいけど…もうちょっと安全な方法を考えてほしいわ。」


 彼女の言葉には、心配と苛立ちが入り混じっていた。ジンは軽く肩をすくめながら答えた。


「あれがこの国の王のやり方なんだ⋯仕方ない」


 バスバはそれを聞き、静かに頷いた。


「ケイオス様は常に戦士としての本質を見極める。お前の剣と覚悟を試したんだろう。」


 彼は少し間を置き、ジンの目を見て続けた。


「私も騎士の一人としてお前の腕前には感服したぞ、急ぐ身だと思うが、町に滞在するならどうだ?私とも手合わせは」


 輝きに満ち足りた表情でジンに申し出るバズバに

 ジンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑みをみせて

「…光栄です。でも、今はまずこの先を決めないと⋯オステリィアを目指すのはいいんですが、そもそも俺達には部外者とはいえ、襲撃者の事やベイルガルド、王の剣について、何も分からずでしたからね」



 ジンの言葉に、アイリーンはハッとした顔で


「そうよ!何かアタシ達の事ばかり話して、何もわからなかったじゃない!よく考えたら⋯何が!運命よー!」


 ミエラはアイリーンの叫びに苦笑いを浮かべていると、呆れたようにバズバが口を開いた


「お前の言い分も分かるが、ジンが言ったようにあくまで今回の事件は我が国の事だ、聞く事はあれど王からしたら話す事でもないだろう。それに王の剣についても同じだ。あくまでお前達の立場は、王に対しての質問者ではなく、王からの質問者だ」


 バスバの言葉に、アイリーンは反論しようと口を開きかけたが、ミエラはそっと制止した。


「アイリーン、今は落ち着いて。バスバさんの言う通り、私たちはまだこの国では“よそ者”だから…」


 アイリーンはしぶしぶ腕を組み直し、唇を尖らせながら黙り込んだ。


「でもさ…納得できないのよ」


 ジンはそんなアイリーンの言葉に頷きながらも、慎重に言葉を選んで返した。


「確かに納得できない部分もあるが、裏を返せば関わる必要がないって事だ、俺達の目的は繋がる部分はあるが、《《今は違う》》。もしかしたら巻き込まない配慮だったかも」


 ジンの言葉を受けてバスバは満足そうに頷いていたがアイリーンは呆れたように


「アンタ⋯さっきまで剣を振り下ろされてクセによく言えるわね、アンタが言うならアタシが言ってたら駄目じゃない」


 アイリーンが言葉を詰まらせたところで、バスバが話を引き継いだ。


「アイリーン、安心しろ。王はお前達を外敵として見てないと言うことだ、それに最後の言葉の意味でもむしろ友好な者達とし見てらっしゃる」


 バスバは腰に手を当てながら、明るい顔をした。


「せっかくオーデントに来たのだ、ここ迄の道のり楽しむということもなかった筈だ、目的は決まったようだが準備や気晴らしを行ってもよいのではないか?。」


 バスバの言葉に、一行は少し表情を和らげた。アイリーンも腕を組んだままではあったが、ようやく息を吐き出した。


「まぁ、確かにここまで来るのに緊張しっぱなしだったし、少しは休んでもいいわよね。」


 ミエラも静かに微笑みながら、バスバに感謝の言葉を伝えた。


「バスバさん、ありがとうございます。確かに今は気を張り詰めたままだと、余計なことで失敗してしまいそうです。」


 ジンも同意し、少し肩の力を抜いた。


「そうだな。準備や気晴らしができる時間は貴重だ。オステリィアに向かう前に、ここで必要なものを整えておくべきだろう。」


 バスバは満足そうに頷き、彼らを見回した。


「うむ、私はお前達を城の外に送ったら捕らえた者の元に向かう。宿の手配等に協力が出来ず、すまんが町には多数の商店や宿泊先がある。迷ったら

【光日の安らぎ】に行ってみろ。騎士達の中でも評判が良い酒場と宿が一緒になっている場所だ、夜はうるさいかもしれんがな」


「光日の安らぎ…ですか?」


 ミエラはバスバの言葉を繰り返しながら、少し安心したように微笑んだ。


「騎士の方たちに評判がいいなら、安心できそうですね。」


 ジンも軽く頷き、バスバに礼を述べた。


「ありがとうございます。宿の手配まで気を使ってもらって助かります。」


 バスバは腕を組んで満足げに頷くと、ジンに視線を向けて付け加えた。


「気を抜くなよ。表向きは平和だが、どんな街でも裏では何が潜んでいるかわからん。」


「心得ています。」


 ジンは真剣な表情で答えた。


 アイリーンは少し苦笑いを浮かべながらバスバを見た。


「そんな脅すようなこと言わなくても、ちゃんと用心してるわよ!でも、酒場の評判がいいなら楽しみね!」


「お前が騒ぎを起こさないか、それが一番心配なんだがな。」


 バスバは呆れたように言い、アイリーンは

「失礼ね!」と反論しながらも、少し得意げに笑った。


 そんな様子にミエラは笑いながら、足をとめた

 ジンとケイオスの闘いで忘れていたが、大事な事を思い出し


「バスバさん⋯このタイミングでお願いするのが心苦しいのですが、あの私は先程いた宰相の方とお話ができないかと」


 ミエラの突然の申し出に、バスバは少し驚いた表情を見せた。しかし、すぐにその目は鋭くなり、慎重に彼女を見つめた。


「宰相サイスル様と、か…?」


 バスバは腕を組み、少し考え込むように視線を落とした。


「何の用件で話をしたいんだ?」


 ミエラは深呼吸をしてから、しっかりとした声で答えた。


「母のことです。サイスル様は、私の母アルミラと同じ学び舎で魔法を学んだとおっしゃいました。私たちが目指すオステリィアの情報や、ノストールに関する手掛かりを教えてもらえるかもしれません。」


 ジンとアイリーンも、その言葉に少し驚いた様子でミエラを見つめた。


 バスバはミエラの目をじっと見つめた後、ゆっくりと頷いた。


「確かに…サイスル様なら、お前の母上について何か知っているかもしれないな。」


 彼は少し間を置いてから続けた。


「だが宰相は多忙な方だ。特に今は、王国内部の問題で動き回っている。簡単に会えるかは保証できないぞ。」


「それでも、会って話したいんです。」


 ミエラの目は揺らがなかった。


 バスバはその決意を認めるように頷き、軽く肩をすくめた。


「わかった。俺から宰相に取り次ぎを頼んでやる。それならば早い方が良いだろ、まだ我らが玉座を出てそんな時間は経っていないからな、お前達を客間に案内してから、直に話してやろう」


 ミエラは感謝の気持ちを込めて深く頭を下げた。


「ありがとうございます、バスバさん。」


 バスバは軽く笑いながら手を振った。


 そのやり取りを見ていたジンは


「だったら俺は先に宿の手配をしとくよ。身内の話しだ。部外者がいてもあれだろうし、人気なら埋まる可能性もあるからな。」


 ジンの言葉に、ミエラは一瞬迷った表情を浮かべたが、すぐに納得したように頷いた。


「ありがとう、ジン。確かに宿の手配は早めにしておいたほうがいいね。」


 アイリーンも軽く肩をすくめながら同意した。


「そうね。アタシはミエラちゃんに付き合うはアンタは一人でも大丈夫そうだし、アタシの種族に関しても聞いておきたいから」


 ジンは苦笑いを浮かべながら


「迷惑にならようにな」


「ならないわよ!」


 アイリーンは胸を張って言い切ったが、ジンはあえてそれ以上突っ込まなかった。


 バスバはそんな二人のやりとりを見て、少し笑みを浮かべた後、ミエラに向き直った。


「では、ミエラ、アイリーン。お前達は俺と一緒に城来い。サイスル様にお前の話を取り次ぐ。」


 ミエラは緊張しながらも力強く頷いた。


「宿が空いてなくても酒場があるなら、そこで落ち合おう何かあれば伝言も残せるし、夕暮れまでには待ち合わせにしようか」


 ミエラは深く頷き


「わかった。夕暮れまでには必ず戻るわ。」


 ジンは慎重な表情を浮かべながら、二人に目を向けた。


「それじゃ気をつけて、特にアイリーンはいつも目立つから」


「はいはい、わかってるって!」


 アイリーンは軽く手を振りながら、ミエラと共にバスバの後を追いかけるように城へ向かった。


 ジンは一人その場に残り、深いため息をつくと、自分の役割に集中するため歩き出した。

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