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魔法使いと皇の剣  作者: 123
2章 戦乱の序曲
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神と魔法

ミエラたちは、バスバの案内で城の客間へと向かっていた。


豪奢な装飾が施された廊下を進みながら、ミエラは自分の胸の高鳴りを抑えようと何度も深呼吸を繰り返した。


アイリーンはそんなミエラを横目に見ながら、軽く肩をすくめた。


「そんなに緊張しなくていいわよ。お母さんの話しを聞くだけなんだから!」


アイリーンの言葉にミエラは少し微笑んだが、緊張は拭えなかった。


(母のことを知るかもしれない人が目の前にいる…。きっと、今まで知らなかった何かがわかるはず。)


バスバは彼女の様子を気遣うように振り返った。


「大丈夫か?緊張するのも無理はないが、宰相サイスル様は理知的な方だ。気負う必要はない。」


「はい、ありがとうございます。」


そう答えながらも、ミエラはこみ上げる不安を必死に押し殺していた。


やがて客間に通されたミエラとアイリーンは、静かな客間で椅子に腰を下ろしながら、サイスルの到着を待っていた。


部屋には柔らかな光が差し込み、窓からは王都の街並みが見下ろせる。だが、そんな穏やかな雰囲気とは裏腹に、ミエラの心は不安と期待で揺れ動いていた。


アイリーンは緊張を和らげようとするかのように、軽く足を組み替えながら呟く。


「なんだか、お城って思ったより静かね…。もっと騒がしいイメージだったけど。」


ミエラは少し笑いながらも、落ち着かない様子で答えた。


「そうだね。でも…この静けさが逆に緊張しちゃう。」


アイリーンはミエラの肩を軽く叩きながら、励ますように言った。


「大丈夫よ!自分の家族について知りたいだけなんだから!」


ミエラはアイリーンの言葉に小さく頷いたが、その視線はテーブルの上に置かれた装飾品をぼんやりと眺めたままだった。


そのとき、扉が静かに開き、サイスルが現れた。


「待たせましたね」


低く落ち着いた声が部屋に響くと、ミエラは反射的に立ち上がった。


サイスルは以前と変わらない威厳を漂わせつつ、どこか親しみを込めた表情で二人を見た。


「改めて話を聞こう。アルミラの娘、ミエラ。君は何を知りたい?」


ミエラは深呼吸をして気持ちを落ち着けると、知りたいことを率直に口にした。


「母の事を⋯私は母が神レミアとなった経緯は知ってます。ノストールに追われ大陸を出た事も⋯でも母がノストールに狙われたのは何か訳があるはずです。そして今私が奴から狙われてる事も⋯」


サイスルはしばらくミエラを見つめた後、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。


「アルミラは、特別な存在だった。」


サイスルの言葉は静かだったが、その響きは重く、部屋の空気をさらに引き締めた。


「彼女は優れた魔法使いであると同時に、不思議な魅力に溢れていた。其れこそ君の隣にいる眷属達に好かれるような」


ミエラはその言葉に驚きながらも、サイスルの次の言葉を待った。サイスルはミエラをじっと見つめ、言葉を続けた。


「アルミラは時折悩まされていたよ、眷属達に求婚されたりと⋯ども私達はそれが不思議とは思わなかった。君もそうだが彼女は美しかったからね容姿もそうだが⋯心がね」


ミエラは息を呑みながら、サイスルの言葉を待った。


「君は魔法をどう考える?我々魔法使いは事象になった⋯世界と共になった神の力を使う。いいや違う、始まりの神。秩序と混沌の力だ!⋯と、まぁ多くの意見があるのは知っているかな?」



ミエラはサイスルの問いに戸惑いながらも、慎重に言葉を選んだ。



「魔法は…この世界の一部であり、人がその力を借りて現象を操るものだと思っています。でも、それが神の力に起因しているのかは、正直よくわかりません。」


サイスルはその答えに軽く頷いた。


「そうか。それはごく一般的な認識だな。だが一部の魔法使いの考えは違う」


彼の視線が一層鋭くなる。


「そもそも人が魔法を使う、根本がおかしいと。魔法が神の力なら何故全ての者が使えないのか⋯」


「根本…?」


ミエラは眉をひそめながら問い返した。


サイスルは微かに微笑みながら続けた。


「そう、魔法ではなく、魔法を使う【人】とは何なのかだ」


サイスルの言葉はミエラの心に重く響いた。


「魔法を使う人が何なのか…?」


ミエラは小さく繰り返した。


サイスルは頷き、静かに語り続けた。


「人は神が作り出した生命ではない。何度も議論が繰り返された事だ。何故なら人を作った神がいない。または神々すら知らないからだ」


ミエラはサイスルの言葉に息を呑んだ。

アイリーンも考える表情を浮かべ


「じゃあ、人って…何なのよ?」


サイスルはテーブルに手を置きながら、低く語り始めた。


「神々は世界を創った存在だと信じられてきた。大地、空、海、そして生命。それらすべてが神々によって生み出された。しかし――」


彼はそこで一度言葉を切り、ミエラの目をじっと見つめた。


「人間の誕生に関する記述は、神話のどこにも存在しない。神々ですら、人間がどこから来たのかを知らないのだ。」


「それを解き明かすために、多くの魔法使いたちが研究を続けた。そしてある仮説にたどり着いた」


ミエラは深く息を吸った。


「どんな仮説でしょうか⋯?」


サイスルは一瞬、言葉を濁したように見えたが、やがてゆっくりと口を開いた。


「人間は混沌と秩序の神が、作り上げた生命⋯」


「もしくは人こそが最初に神々を作り出した⋯【神】なのだと⋯」


ミエラとアイリーンは、その言葉に息を呑んだ。


「人が…神?」


ミエラは思わず言葉を漏らした。


サイスルは静かに頷き、さらに言葉を続けた。


「この仮説は長く禁忌とされてきた。神々を敬うこの世界において、人間こそが神々を生み出した存在だと示唆するなど、信仰を根底から覆すからだ。」


アイリーンは驚きと混乱の表情を浮かべた。


「待って!それってつまり、アタシたちが神を創ったってこと?でも、神はこの世界を創ったんじゃないの?」


サイスルはアイリーンを見つめ、ゆっくりと頷いた。


「そう信じられてきた。勿論そう考える者もいるって話しだ。其れこそ、人は始まりの神である秩序と混沌が作ったと言うものも」


ミエラは静かに思案にふけっていた。


信仰を捨てた、ミエラが魔法を使える意味を、何故神は人に憧れ⋯限りなく近い生命を作ろうとするのか


何故⋯神は人が作れないのか


ミエラはサイスルの言葉を反芻しながら、自分の中で渦巻く疑問に整理をつけようとしていた。


「神が人間を作ったのか、それとも人間が神を生み出したのか…。それとも、どちらも真実なのか。」


彼女の言葉には、戸惑いと理解したいという強い意志が混ざり合っていた。


アイリーンは腕を組みながら、眉をひそめた。


「なんか…難しすぎて頭が痛くなってくるわね。でもさ、結局のところ、ミエラちゃんが今ノストールに狙われてる理由が何なのかって話よね?」


ミエラはアイリーンの言葉に頷いた。


「そうだね…。それは何故かおわかりになりますか⋯?仮説でも構わないので、知りたいのです⋯!」


サイスルは重々しい表情でミエラの言葉を受け止めた。


「⋯人と眷属が交わると、より人に近い生命が生まれるのを知っているかい?」


彼はアイリーンに視線を向け、またミエラをみて言葉を続けた。

そしてミエラは思い出して船で見た一冊の本を


「不思議だと思わないかい、何故人に寄った誕生をするのか⋯そして何故その力は薄まらない。」


「それこそが、世界の謎の一つ。人間は神々すら知らない起源を持つ存在。そして眷属は、神々が人を模して作った存在―だが、その二つが交わると、なぜか人の性質が優位に立つ。」


アイリーンは腕を組みながら眉をひそめた。


「つまり、それがどういう意味を持つわけ?」


サイスルは視線をミエラに戻し、真剣な表情で語った。


「ミエラ、君も、アルミラも神の血を引いてる可能性がある」


ミエラはサイスルの言葉に驚愕し、言葉を失った。


「私が…神の血を?」


サイスルは静かに頷き、続けた。


「正確には、君の血に“神の特性”が宿っている可能性がある、ということだ。」


アイリーンは息を呑みながらミエラを見つめた。


「それって…ミエラちゃんが神と人の混血ってこと!?」


サイスルはアイリーンの言葉に軽く首を振った。


「違う。混血ではない。君たちが“神の力を受け継いでいる”かもしれない、という話だ。人間の中には魔法が使えない者もいるからこの仮説も難しいが、そう考えると何故、ノストールが君や母を狙ったのかは考えられる」


「不完全に生まれた神は戻りたいのだとね、自分の根源に⋯始まりの神に」


ミエラはサイスルの言葉を反芻し、胸の内で疑問が渦巻いていた。


「それが…ノストールが私を狙う理由ですか?」


サイスルは微かに頷いた。


「ノストールは“神に近い存在”を渇望している。君の母アルミラを狙い。そして君もまた⋯」


サイスルはミエラをみて微かに溜息をつき


「だが⋯あくまでも私の仮説。だからこそ目指しなさい。魔法の根源、魔法使いの国オステリィアに」


ミエラはサイスルの言葉に心を揺さぶられながら、静かに拳を握りしめた。


「オステリィア」


彼女は母アルミラの秘密と、自分の中に宿る“神の力”の謎を解き明かすため、その場所を目指すことを決意した。


アイリーンは腕を組みながら、ミエラを励ますように微笑んだ。


「いいじゃない、ミエラちゃん!冒険っぽくなってきたわね!その力をちゃんと理解して、ノストールをギャフンと言わせてやろう!」


ミエラは小さく笑いながらも、目の奥には決意の炎が宿っていた。


「うん。答えを、私が探す。そして、この力の意味をそしてノストールを⋯」


サイスルはミエラの決意を確認するように深く頷い

て立ち上がり、扉に向かおうとした


「ちょ、まだ終わりじゃないわ!アタシの種族について知りたいの!」


サイスルはアイリーンの突然の問いかけに、少し驚いたように振り返った。


「君の種族について?」


アイリーンは腕を組みながら、少し不機嫌そうに続けた。


「そうよ!アタシは自分の力のことを知りたいの!王様には目的とか聞かれたけど知りたい事はわからなかったわ!何処を目指すのか」


サイスルは彼女をじっと見つめた後、ゆっくりと首をふった。


「王も述べたが、竜族は運命によって導かれる存在。気ままに人の世に現れては見出した者を導いてます。何処に住んでるかは私には分かりません。」



アイリーンはサイスルの答えに肩を落とし、不満げに腕を組んだ。


「竜族が運命に導かれるっていうのは聞いたけどさ…。そんな曖昧な話で納得しろってこと?」


サイスルは静かに首を振った。


「誤解しないで貰いたい。竜族は珍しいが旅をしてれば会える筈です。今話した通り貴方達は見出した者を導いてるので会えないわけではないので、この国は眷属を立ち入らないので珍しく思われますが、他国では気にする者もいないぐらいには」


アイリーンはサイスルの説明を聞きながら、腕を組んだまま考え込んでいた。


「旅をしていれば会える、ね…。」


ミエラはアイリーンの肩にそっと手を置いた。


「アイリーン、きっと答えは私たちの旅の中で見つかるよ。私も自分の力のことを知りたいし、一緒に探していこう?」


アイリーンはミエラの言葉に少しだけ笑みを浮かべた。


「…そうね。一緒なら心強いわ!」


サイスルは二人の姿を見つめながら、静かに立ち上がった。


「では、話はここまでだ。君たちの旅路が実り多きものになることを祈っている。」


そう言ってサイスルは部屋を後にしようとした


「サイスルさ⋯様有難う御座いました」


ミエラの短いお礼の言葉をサイスルは静かに


「構いませんよ。君は本当にお母さんに似ている⋯美しい銀髪も、だけども君のお父さんにもね」


「えっ⋯」


「それでは王に呼ばれてますので私は失礼します。幸運を⋯」


そしてサイスルは静かに出ていき。

変わるように入ってきたバスバと共に客間を後にした


父についても何か知っているサイスルの雰囲気は聞いても教えてはくれないだろうとミエラは感じとっていた。

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