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魔法使いと皇の剣  作者: 123
2章 戦乱の序曲
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謁見

 ミエラはケイオスの視線を受け止めながら、緊張した面持ちで慎重に言葉を紡ぎだしていた


「私たちがこの国に来た目的は、ある神を打ち倒す為です。その神の名はノストール。病の神⋯アスケラより生まれた、歪みの神です。そして私から父を奪っただけでなく、私の身体も狙っています」


 ジンはミエラの口から出る言葉を静かに聞きながら、わずかに目を細めた。彼女の緊張と覚悟を感じ取りつつも、その内容の重さに周囲の空気が変わるのを感じた。


 ミエラの声は震えながらも力強かった。ケイオスはその言葉を一瞬も逃さないように聞き入り、彼女の目を見据えていた。


「ノストール…」


 ケイオスが静かに繰り返したその言葉には、深い思慮と疑念が込められていた。そして彼の瞳は鋭さを増し、まるでミエラの奥底に潜む真実を探るかのように見つめた。


「お前の言葉が真実であるならば、大陸の外よりアルベストに来た意味を理解できる。だが私はこの大陸、この国で育ったがノストール等という神を聞いた事はない」


 ケイオスの言葉が静まり返った玉座の間に響く。彼の疑念と探究心が、鋭い眼差しとしてミエラに向けられていた。


 ミエラはその視線を真っ直ぐ受け止め、深呼吸をしてから口を開いた。


「七騎士バスバ・デクスタ様も同じ様にお答えされ私も困惑致しました。ですが奴は実在します。私がいる大陸で⋯豊潤の神レミア、今は⋯母の身体に降り経った神はその存在を知っていました。」


 ケイオスの眉がわずかに動く。彼は目を細め、ミエラの言葉を吟味しているようだった。


「私の母がレミアになる前に父と母はこの大陸で育ちました。そして私が生まれて暫く経ち、父の故郷でノストールが顕現して母がそれを治めに行ったと聞きました。母は魔法使いであり、オステリィアの賢者だったと」


 ミエラの言葉に、玉座の間の空気を壊すようにして驚きの声とざわめきが起こった。


「オステリィアの賢者ですと⋯」


 声の主は自身に視線が集まるとバツが悪そうに

 ケイオスから離れた位置に並んでいた列から抜け出て名を名乗った。


「勝手な発言をお許しください。そしてケイオス殿下彼女への質問を引き継いでも構いませんか?」


 ケイオスは視線を声の主に向けると、鋭い眼差しを保ちながら短く頷いた。


「許す。だが、無駄な問いは控えろ。」


 声の主は恭しく頭を下げると、ミエラに向き直った。中年の男性で、その顔は痩せほけて、気だるそうな目をしていたが、瞳には知性と鋭さが漂っていた。


 彼の身なりは宮廷の学者や魔法使いを思わせ、貴族とは異なる威厳を感じさせた。


「私は王国の宰相サイスルと申します。そしてオステリィアの魔法使いでもあります。」


 ミエラは思わず息を呑んだ。

「オステリィアの魔法使い」という言葉が、自分の母に通じるものを感じさせたからだ。


 その一方で、ジンはサイスルの言葉に目を細め、内心で彼の出方を探っていた。


 サイスルはミエラの反応を見逃さず、冷静な口調で続けた。


「賢者と呼ばれる魔法使いは、この大陸では僅かです。そして大陸の外へ向かったという賢者の女性を私は知っています⋯貴方の母君の名はアルミラでしょうか?」


 ミエラは自身に語りかけてくるサイスルが母の名を知っている事に驚くと共に静かに頷いた。


 そんなミエラの様子にサイスルは懐かしむように


「貴方は母君によく似ていらしゃる⋯彼女と私は同じ学び舎で魔法を学んだ者です。」


 ミエラはサイスルの言葉を聞いて目を見開いた。自分の母、アルミラと繋がりがあるという言葉に、驚きと共に胸の奥から温かな感情が湧き上がってきた。


「母と…同じ学び舎で…?」


 ミエラはその言葉を反芻するように呟いた。サイスルは微笑を浮かべ、続けた。


「そうです。アルミラは私にとっても忘れられない存在でした。彼女は才に溢れ知識に貪欲な誰よりも優れた魔法使いでした。彼女がノストールという存在と対峙していたことは知らなかったが…あなたの話を聞くと、なるほどと思う点もあります。」


 サイスルは少し思案するように沈黙した後、再び口を開いた。


「貴方が言うノストール―その神は恐らくこの国で今起こってる事が、存在に関係していると思います。存在が知られてない神が何故この世に顕現できるのか⋯貴方達も片鱗を見たはずです。」


 ミエラはサイスルの答えを引き継ぐよう言葉を発した


「神の肉⋯」


 サイスルは視線を遠くに向けるようにしながら答えた。



「確証はありません。ただ、その可能性は高いでしょう。神の肉――それは、人の記憶と信仰が形を与えた存在です。忘れ去られた神々、そして新たに生み出された神々。いずれも、何らかの形でこの世界に影響を及ぼす媒介となる。だが、それが単に存在するだけなら問題にはならない。問題は、それを『使おう』とする者がいるということです。」


 ミエラは息を詰めた。サイスルの言葉に、彼女がこれまでの旅の中で直感的に感じていた不安が形を得たように思えた。


「使おうとする者…それがノストールを生み出した?」

 ミエラの声は震えながらも真剣だった。サイスルは頷き、低い声で言った。


「その可能性が高い。ノストールが存在しているということは、誰かがその『神』をこの世界に顕現させるために信仰を操り、神の肉を媒介として利用したということだ。そして、その者はおそらく、ノストールの力を用いて自らの目的を果たそうとしている。」


 ミエラはサイスルの言葉に唇を引き結び、彼の顔をじっと見つめた。自分が直面している問題がどれほど深刻で、どれほど多くの陰謀に絡んでいるかを再確認せざるを得なかった。


「でも、ノストールは何故、母や私の身体に執着するのでしょうか⋯?」


 ミエラの疑問の声に。


 サイスルは静かに


「執着する理由について、私にも確証はありません。しかし、考えられる可能性としては、君の家系そのものに特別な血統や力が宿っているのかもしれない。」


 サイスルの言葉は落ち着いていたが、その内容は重大だった。ミエラはその言葉に息を詰めた。


「私や母に?」


 サイスルは軽く頷き、続けた。



「神々の中には、特定の存在に依存し、その力を得ようとする者もいる。もしノストールが君の家系を狙う理由がそこにあるのなら、君の身体や力が何らかの役割を果たす可能性も考えられる。」


 ミエラはその言葉を聞きながら、胸の奥がざわつくのを感じた。


 そんなミエラを優しい目で、みながらサイスルは


「オステリィアにいきなさい。貴方の母君でも知り得ない知識を得たいならアルベストの魔法の源に」



 ミエラはサイスルの言葉に、思わず息を呑んだ。

 遠からず目指していた場所が一番の目的であってたことにミエラの決意が強まった


 サイスルはそんなミエラをみて語るべき事は終わったとばかりにケイオスに頭を下げた。



 ケイオスは玉座に深く身を預け、右手を軽く上げる仕草でサイスルに退下を命じると、そのままミエラたちを見据えた。


 その鋭い視線には、王としての責任と、この状況をどう受け止めるべきかを見極めようとする真剣さが込められていた。


「サイスルの言葉は信用に値する。オステリィアへ向かうというお前たちの目的、そしてその決意を見届けた。」


「だが他のものは何用でこの大陸にきた?」


 ケイオスの問いが玉座の間に響くと、空気が一層緊張感を帯びた。彼の視線はミエラからアイリーンに移り、鋭い目が内面を探るように見据えていた。


 アイリーンはケイオスの視線を受け止めながら、一歩前に出て静かに口を開いた。


「アタシはアイリーン。生まれ故郷に帰ってきただけ。何で私はアルベストでなくグランタリスで育つ事になったのか⋯本当の家族がいるのか知りたいだけよ!」


 アイリーンの返答に横に控えていたバスバは額をひくつかせ、周りの騎士の何人かは良い顔をしていなかった。


 ケイオスは彼女の言葉をじっと聞きながら、その鋭い眼差しをさらに深めた。


 彼の視線は、ただ彼女の言葉を聞くだけでなく、その真意や背後にある思いを読み取ろうとしているようだった。


「竜族であるお前が大陸の外に送られ、この地に戻る理由…。お前が自分のルーツを知りたいという目的は理解した。しかし、グランタリスで育ったお前が、なぜこの時期に戻る決意をしたのか、もっと明確にしてもらおうか。」


 ケイオスの問いに、アイリーンは少し考え込むような表情を浮かべた後、しっかりと彼の目を見据えた。


「そんな事、言われても困るわ⋯決意ってよりはミエラちゃんのお父さんに会って、自分の種族について聞いたからとしか、言えないわよ」


 アイリーンの言葉に、玉座の間の空気が一瞬張り詰めた。ケイオスの眼差しがますます鋭さを増した。


「つまり、偶然の巡り合わせが今の状況を作り出した、ということか。」


 ケイオスの声には疑念と興味が入り混じっていた。


 アイリーンはその言葉を受けて軽く肩をすくめた。彼女らしい無邪気な態度ではあった


「まあ、そう言われればそうかもしれない。でも、それが悪いってこと?理由が曖昧だと許されないのかしら?」


「この国は今、不安定な状況にある。竜族であるお前が戻ってきたことが、好奇心や偶然だけで説明できるとは思えない者もいるだろう。それだけは忘れるな。」


 その言葉には警告の色とは別の意味も含められていた。


 ケイオスの顔は楽しそうな笑みを携え、まるで何かを期待してるかのように、視線をアイリーンからミエラに移していたからだ


 ケイオスの視線を受けたミエラは、その眼差し困惑していたが視線は直ぐにジンへと向かっていた。



「さて、最後だな。神の力を宿した剣を持つお前は、何が目的だ⋯?」


 質問した、ケイオスの顔には王としての顔と獰猛な戦士な顔が入り混じっており


 周りの騎士や貴族たちの間に緊張が走った。

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