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Trigger〜悪霊浄化異聞〜  作者: 藤波真夏
闇の浄化師からの挑発編
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浄化師たちの休日〜It's time for feast!〜

闇の浄化師からの挑発編

浄化師たちの休日〜It's time for a feast!〜



 浄化師---。

 それは悪霊に対して唯一拮抗できる専門職のことを指す。科学が進歩した世界に現れた不確定要素が悪霊である。人間は「浄化師」というものを生み出して不確定要素に対して拮抗している。

 浄化師は子供達も憧れるヒーローなのである。

 でももし・・・、このヒーロー像が無残にも崩れ去るような出来事が起きれば・・・この世界はどう変化するのか・・・?



 午後十九時。ニシ地区。大衆居酒屋。

 ニシ地区にある居酒屋にはヤタガラスが集まっていた。今日は久しぶりに飲み会の日だ。浄化師はチームワークが必須となる職業だ。日々の中でチームワークを鍛えなければならない。こうしてたまに酒を酌み交わすことで絆を深めるのだ。

「今後のヤタガラスの活躍に、乾杯!」

 グラスがぶつかる音がした。

 喉に流れ込む酒が日々の疲れを吹き飛ばすほどに美味しくて喉が鳴った。テーブルには大量の料理が並び、乾杯してすぐに料理をつまみだした。

「美味しい!」

「たまにこうやって居酒屋でガヤガヤするのもいいやんなあ!」

 ミホが笑顔で料理を頬張る。感情の暴走を起こしたスセリもこの頃には落ち着きだして元の生活に戻りつつあった。スセリはずっと日々の任務をこなす中で自分の中で抑えきれないほどの感情の高鳴りと戦っていた。

 ようやく落ち着く頃にはあの時から二週間以上も経過していた。

「阿部! いっぱい食べろ!」

「はい!」

 するとシュンが口火を切る。

「阿部。大浜先生から聞いた。阿部の母親がツキヨミだったんだって?」

「そうです。それは私も知りませんでした。でもツキヨミであったことは分かったけど、それ以上の詳細は分からないんです」

 スセリは言った。

「私は早く知りたいです。自分の母に何があったのか、遺伝だとして母はどうやってツキヨミの力を手に入れたのか・・・」

「しかしそれを知りたいということはいずれお前が恨んでいる人ともう一度対峙することになる。お前は感情の暴走を起こすかもしれないぞ」

「その時は・・・、その時です。その時までには・・・必ず強くなります」

 スセリはそう言ってグラスに入った酒を飲み干した。うまっ! と笑顔でグラスを置き、酒のお代わりを注文した。

 シュンは静かに酒を飲んだ。

 夜も更けてほろ酔い状態でヤタガラスたちは大衆居酒屋を後にした。スセリも少しほろ酔い気分で繁華街を歩いた。酒が身体中を巡った影響による体の火照りを外の冷たい風が冷ます。

 心地いい風がスセリの髪の毛をなびかせた。

 ヒジリとシュンは二人並んで歩いており二人は話し出した。

「鳴海。お前も阿部に対してのあたりが優しくなったな」

「別に俺はあたってません。彼女には特別優しくも厳しくもしていませんが」

「あんなに阿部がヤタガラスに加入することを反対していたのにと思ってさ」

 確かにそうですけど、とシュンは言った。

 シュンは元々安全が確立されないこと、そして浄化師としての訓練も全く受けていない素人同然のスセリの加入に最初はとても反対していた。スセリの成長や心構えにシュンは次第に認めるようになってきたのだった。

 シュンはスセリがまだ未熟であることが分かっているがそれでも信頼をしている人物の一人になったのだ。

「俺が引退したらヤタガラスを頼むからな」

「引退って・・・まだまだでしょ。金山さんは俺たちのリーダーなんですから。そう簡単に引退されては困ります」

「悪かった悪かった」

 ヒジリは笑った。

 ヤタガラスは今日も笑いが絶えない一日であった。


 ヤタガラスが知らない場所。真っ暗な道。

 悪霊が通り過ぎる。そしてそれを追いかける人影がある。息がきれる音が聞こえる。どうやら浄化師のようだ。浄化師は片手に拳銃を構えて追いかける。放った弾丸が悪霊を貫通し、悪霊は無事浄化された。

「よし!」

 浄化師はガッポーズをした。

「教えてくれてありがとう。悪霊を浄化できたよ」

 浄化師は振り返ってお礼を言った、もう一人の人物がいるようだった。街灯に反射されて顔は見えない。浄化師が拳銃をしまい近づいた。

 その刹那だった。

 一発の弾丸が浄化師の体を貫通した。浄化師は体を押さえる。腹から大量の血がダラダラと流れていることに気づいた時には痛みが襲いその場にばたりと倒れてしまった。

 撃ったのはお礼を言われた人物だった。その人物が持っているのは拳銃。しかもそれは対悪霊用ではなく、本物の殺傷能力のあるものだった。平気で人の命を奪える凶器だ。

 硝煙立ち込めるその場からその人物は姿を消したのだった。



 午前十二時。チュウオウ地区。草薙館。パブリックルーム。

 今日はヤタガラスの全面休業の日。その日はパブリックルームを含めた生活スペースの掃除をしていた。草薙館の窓を開けて換気をし、掃除機をかけ始める。そして雑巾で埃や汚れを拭き取る。

 ヤタガラスは悪霊への対応が増えた影響で草薙館の掃除が最近できていなかった。これは絶好の機会と踏んで掃除に踏み出したのだった。

 スセリはパブリックルームの床を濡れたモップで拭き掃除をしていた。そこへアズミがやってきた。

「お疲れ様。だいぶ綺麗になったわね」

「はい。大浜先生も研究棟の掃除とかしなくていいんですか?」

「研究棟は私と木俣が来た時から埃かぶってたからそこで大掃除してたの。別に汚れているわけでもなかったから薬品整理だけしてきたわ」

 アズミはそう言ってテーブルを拭き始めた。

 スセリはアズミに聞いた。

「どうですか? 草薙館の生活には慣れましたか?」

「まあね。大学で研究している以上にいろんな発見があって金山所長にはとても感謝してるわ」

 アズミはそう言った。

 ツキヨミの正体はまだ分からないが、スセリと同じようにツキヨミ保有者で浄化師をしている人たちのデータを確認するという。

 スセリはよろしくお願いします、と頭を下げた。

 すると付けていたニュース番組に映っていたアナウンサーの表情が険しくなる。そして急遽手渡されたニュース原稿を読み始めた。

『番組の途中ですがニュース速報です。昨晩発生した男性が突如襲われ重傷を負った傷害事件に関して警視庁が新しく発表がありました。その続報をお伝えします。先ほど行われた警視庁の会見によりますと、昨晩男性が拳銃で撃たれ重傷を負った事件が二ヶ月前と一ヶ月前にも同様の事件が起こり、その関連性が証明されたということです』

 ニュースで流れたのは昨晩起こった傷害事件に関するものだった。そのニュースをスセリとアズミは見ていたが、そこまで驚かなかった。

 このニュースは今日の朝のニュースで見ていたからだ。

 映像が警視庁の会見の映像へと切り替わった。

 警視庁の偉い人であろう人が集まった記者に向かって話しだしている。

『昨晩発生した傷害事件に関してですが、二ヶ月前と一ヶ月前にも似たような事件が起こっていることが捜査で判明しました。その事件との類似点は多く、同一犯による犯行ではないかと考えられます』

 スセリは物騒ですね、と話した。拳銃なんて銃刀法のある日本ではあまり考えられないわね、とアズミは言葉を返した。いつの間にか二人は掃除の手を止めてテレビを見ていた。

『類似点は凶器が拳銃であること。そして襲われた被害者が全員浄化師であることです。被害者全員が拳銃で撃たれ重傷を負いましたが命に別条はないとのことでした。今後は浄化師連続傷害事件として襲われた被害者の浄化師たちに話を伺いながら、事件解決へと進めていきたいと思います。また、今回連続して浄化師が襲われた件を全国の悪霊対策部へと緊急通告をしております』

 浄化師が襲われた。

 それにスセリは言葉を失って立ち尽くすばかりだった。

 すると階段を駆け上がる音が聞こえてきてスセリが振り返るとそこにはミホがいた。

「スセリちゃん! アズミ先生! 出かけるで!」

「出かける?!」

「ヤタガラス全員悪霊対策部へ緊急招集らしいで! もうみんな車に乗ってるからはよう!」

 ミホに言われてスセリは持っていたモップを立てかけ、換気していた窓を閉め、テレビの電源を切った。スセリはアズミと一緒に階段を降りて行ったのだった。

 ヤタガラス移動用の車に全員乗り込んだ。運転席に座ったヒジリが言った。

「全員揃っているな」

「はい」

「動くぞ」

 ヒジリがハンドルを切った。

 ヤタガラス全員を乗せた車は動き出した。

 この時のヤタガラス全員は分からなかった。悪霊よりももっと恐ろしいものの存在とその悪魔のような脅威がヤタガラスの平和と命を脅かすことになるとも知らずに。



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