↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Trigger〜悪霊浄化異聞〜  作者: 藤波真夏
オフィスに潜む追跡者編
PR
68/130

悪霊侵入の秘密〜Start exploration〜

悪霊侵入の秘密〜Start exploration〜



 チュウオウ地区で多発する悪霊騒ぎ。

 早くなんとかしなければチュウオウ地区の平和が脅かされる。しかし、手がかりがほとんどない状況だ。

 なんとしてでも悪霊がチュウオウ地区に侵入する証拠をつかまなくては。



 午前十時。チュウオウ地区。株式会社キュテリア。オフィス。

 出社時間となり株式会社キュテリアのオフィスにはぞろぞろと人が入ってくる。そしてハルカもだ。ハルカはカバンをデスクに置いて大事な資料を取り出してデスクへ置いた。

「香山さん。最近悪霊騒ぎがあるから残業禁止って部長が言ってたよ」

「分かりました。まあそうですよね」

 ハルカは苦笑いをした。

 パソコンを開いて資料の打ち込みを始める。頭の中に浮かんだのはスセリの警告。

「スセリ。大丈夫かな」

 ハルカはそう呟いた。

 そして同時刻。ヤタガラスは昼にも関わらず仕事をしている。パトロールではなく、悪霊が他地区へ侵入している可能性を掴むためだ。

 場所はシバ地区の大通り。

 向かったのはスセリ、ミホ、シュンの三名だ。この場所は以前悪霊出現の兆しが出た場所となった場所でまた悪霊が出現する可能性があるため、もう一度確認しに来たのだ。

「阿部。いいか?」

「はい。いつでも」

 シュンが聞くとスセリは答えた。シュンはスセリの小型拳銃を取ると道路に向かって撃ち込んだ。その瞬間に浄化水晶が砕け散り周囲に散漫する。その瞬間にスセリのツキヨミの力が動き始める。

「阿部。周囲に悪霊がいるか見てくれ」

「ラジャ」

 スセリは周囲を見渡した。するとスセリは目を見開いた。悪霊と思われる黒い靄が二体見えたのだ。まるで悪霊はこちらの様子を伺っているかのようにこちらを見ている。

 スセリはシュンの真横に平行移動し、小さな声で伝えた。

「二体います」

「そうか。どのような様子だ?」

「こちらを伺っているようです」

 スセリはそう伝える。すると悪霊がニヤリと笑ったように見えた。スセリはその後悪霊が何かに引っ張られるような形で消えてしまったのを目撃した。スセリは驚いた表情で走り出した。

 突如として走り出してシュンとミホは驚いている。

「スセリちゃん?!」

「阿部?!」

 スセリの真横を通過のしたのは車だった。スセリは振り返って車の方を見る。悪霊は確かに何かに引っ張られているように見えた。しかし車には悪霊の姿はなかった。

「どうしたん?!」

「悪霊が吸い込まれていったような気がしたんだけど・・・」

「悪霊が? あの車に乗り込んだん?!」

「それが・・・、車の中を見たんだけど悪霊は見えなかったの。一体どこに行ったのかな・・・」

 スセリがそう呟いた。

 わずかな情報を持ってスセリたちは草薙館へ戻って行ったのだった。



 午後十九時。チュウオウ地区。オフィス街。

 同時刻。チュウオウ地区。カワグチステーション付近。

 チュウオウ地区では同じ時間に悪霊が出現し、現場にはスセリとヨシキが対応していた。オフィス街にはスセリ、カワグチステーション付近にはヨシキだ。

 事の発端は悪霊の緊急通報だ。実は二人はチュウオウ地区で悪霊を浄化してすぐだった。スセリは悪霊を裏路地へ誘い込んだ。

「ようやく大暴れできるっていうのに、なんでお前は邪魔をする?」

「暴れられては困るので! シバ地区から来た悪霊ならどうやってチュウオウ地区に入り込んだか教えなさい!」

 スセリは小型拳銃を構えた。

「やれるもんならやってみな!」

 悪霊はスセリを挑発し、スセリの油断を狙ってくる。しかしスセリはその挑発には乗るまいと気をしっかりと持つ。

 スセリは突進してくる悪霊をギリギリまで引きつけた。そしてスセリは悪霊を避けた。悪霊はスセリの動きに驚き、動きを止めようとするが突進の勢いに逆らうことはできなかった。

「何?!」

 悪霊が油断した次の瞬間には悪霊にスセリの小型拳銃の銃口が向けられていた。スセリはまるで人殺しのような鋭い目つきで悪霊を睨んでいた。

 スセリは脅しをかけようとしたが、悪霊はそれでも吐くことはせず、スセリを襲わんとする。スセリは仕方ないと引き金を引いて悪霊に浄化水晶を撃ち込んだ。

 悪霊は浄化水晶の力でだんだんと力を失って消えていく。スセリはため息を吐いた。

「また分からなかった・・・」

 するとスセリのインカムが作動した。スセリの耳に人の声が入る。

『こちら熱田。阿部、そっちは大丈夫か?』

「こちら阿部です。はい、悪霊は無事に浄化しました。怪我した人もいません」

『そうか。それはよかった』

 ヨシキだった。

 ヨシキはカワグチステーションの前にいてそこからスセリに連絡を入れている。スセリはヨシキに悪霊がチュウオウ地区に流れ込んでくる理由を悪霊から聞き出そうとしたが教えてくれなかったことを話した。

 ヨシキはそうか、と呟いた。

『悪霊はやすやすと教えるほどアホじゃないからな。とりあえずカワグチステーションの悪霊も一掃した。草薙館へ戻るぞ。気をつけて戻ってこいよ』

「ラジャ」

 スセリはそう言ってヨシキからの通信を切った。

 スセリは振り返ってまたため息をついた。その足で草薙館へ戻ったのだった。



 翌日。午前十一時。草薙館別館研究棟。

 研究棟の中ではアズミがチュウオウ地区の悪霊大発生の謎を解明すべく、統計などを集めている最中だった。

 その中へタイコウが入ってきた。

「木俣。悪霊の被害状況は?」

「ヤタガラスの浄化師たちによれば、チュウオウ地区の悪霊出現が多発していて一体浄化してもチュウオウ地区の別の場所で悪霊発生の通報が入って体が持たないと」

「そう・・・」

「ただヤタガラスが尽力していることもあって被害者はまだいません」

「それが不幸中の幸いね。早く糸口を見つけないと・・・」

 アズミは頭を抱えた。

 タイコウは資料が大量に乗ったテーブルを見るとアズミが様々な考察を巡らせているのがわかった。明智大学大学院で悪霊・浄化水晶研究の第一線で活躍しているアズミですらこの迷いようにタイコウも頭を抱えていた。

 タイコウは一つの資料に目が入る。

 それは悪霊が出現した場所と時間、対応した浄化師の名前が書かれた資料だった。

 そこに書かれていたのはほとんどがチュウオウ地区の場所だった。それを眺めているとタイコウが「ん?」と声を漏らした。

「大浜先生」

「ん?」

「最近シバ地区の悪霊出現めっきりなくなりましたよね?」

「それがどうしたっていうんだよぉ」

 アズミが唸るように言うとタイコウは今までの記憶を遡る。ヤタガラスの浄化師たちと交わした会話の中身を急いで引き出す。すると「あっ!」と声を漏らした。何かを思い出したようだった。

「チュウオウ地区に悪霊が多発し始めた頃ってシバ地区の悪霊出現が全くなくなったじゃないですか!」

「は?」

「だから! みんな言ってたんです! シバ地区には確実に悪霊がいるって昼のパトロールで目星をつけているのに現れるのはいつもチュウオウ地区。シバ地区には全く悪霊が出現していない! これって、シバ地区の悪霊がチュウオウ地区に流れてきてるってことですよ!」

 タイコウの言葉にアズミは改めてよくよく考える。

 するとアズミもハッとなる。

「そういえば阿部さんが前にシバ地区にパトロールに行った時に悪霊が何かに吸い込まれて消えたって言ってたわ・・・。もしかしたら・・・」

 アズミは勢い良く立ち上がり、カワグチの地図を広げた。頭の中が活性化してぐるぐると回転し始める。

「木俣。この後すぐに浄化師付き添いでシバ地区に行ってくれる?!」

「わ、分かりました! でも根拠は?」

「それは・・・」

 アズミは仮設段階ではあるがタイコウに話した。それを聞いたタイコウは驚いた表情をした。再確認のためにもう一度アズミに尋ねる。

「大浜先生。それは本当ですか? それが本当ならば、完全な盲点じゃないですか!」

「ええ。悪霊も姑息な手段ばかり使うわね。でもこれが証明されればチュウオウ地区の悪霊大量出現の謎も納得がいくわ」

 アズミはそう言い切った。

 アズミはタイコウを連れて急いで草薙館本館へ移動する。そして所長室の扉をノックもせずに開けてヒジリに頼み事をしたのだった。



 二日後。午後十九時。チュウオウ地区。オフィス街。

 会社のオフィスがたくさんあるビルの中からぞろぞろと帰り出す会社員たちが見え始める。そしてその中にはハルカの姿もあった。

「もう暗いから早く帰らないと・・・」

 ハルカは腕時計の時間を確認して早歩きをしだす。

 その刹那だった。

 オフィス街に悲鳴が響いた。ハルカが振り返るとそこには大きな靄がいた。人よりもはるかに大きい悪霊に帰宅ラッシュのオフィス街は恐怖で包まれた。

「嘘でしょ・・・」

 ハルカが呟いた。

 ハルカがうろたえているとハルカから伸びる影が一瞬歪み、明らかに人ではない何かが這い出る様子があった。

 その刹那だった。

 一発の銃声がハルカのそばで弾けた。ハルカは驚きのあまり耳を塞ぎその場で伏せた。ゆっくりと振り返った自分の影が明らかに歪んでいる様子が見えた。そして何かによって押さえつけられているようにも見えた。

「ハルカ!」

 聞き覚えのある声が聞こえた。ハルカが声のした方を見ると、そこには紺色の制服、腕章、手には小型拳銃。見覚えのある顔で今一番期待していた顔が現れた。

「スセリ!」

 スセリがハルカの方へ駆け出す。するとハルカの影に向かって小型拳銃を向けた。一体どうなっているのかをハルカは何も分からない。ハルカは一般人だ。スセリと同じツキヨミでもない限り悪霊の姿を正確に見ることができない。

 大きな悪霊のそばにはサトミやシュンといった浄化師のベテラン勢が包囲する。スセリとミホは帰宅ラッシュの会社員たちの安全確保へと回っているのだ。

「ハルカ、怪我してない?」

「私は大丈夫! でも・・・」

 ハルカはスセリがハルカの影に銃口を向けているのかどうかが気になって仕方ない。スセリに聞くとスセリは口を開いた。


「ハルカの影の中に悪霊が潜んでいたの。ハルカだけじゃない。ここにいる多くの人々の影の中にも悪霊が潜んでる」


 ハルカは驚いて言葉も出なかった。そしてスセリの目には分かった。オフィス街で立ち止まる人々の影の中に蠢いている異質な存在を。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。