巡回
戸部洋はごく普通の警備員である。毎日ビル内を巡回し、毎日休憩時間にカップ麺を食べる、齢30の警備員である。今日も今日とて、忘れ物のカバンを警察に届けた後、行きつけのコンビニで消臭剤とシーフードカップ麺を買って帰路についていた―――のだが。
ギュ―――キュキュキイッ!!キキキィィィィイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!ぐわしゃぁああ!!ぶちゅ。
真っ白な空間。戸部洋の魂と、女神が対面している。
「戸部洋さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます。」
「はあ。」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
戸部洋(30)
レベル18
称号:転生者
保有スキル:巡回
HP:40
MP:15
「というわけで、いきなり草原に放り出された俺はいったいどうしたらいいのかね。」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が警備員の前に現れた!
「う!スライムっ?!武器も何もない、いや警棒はあるけど、これで戦う?!無理やんけ!!!」
うろたえる、警備員。
「そうだ!保有スキル!巡回?!どこをどうまわれと?!そもそもレシーバーも…ある!!あーあー、もしもし?状況説明どうぞ?」
≪草原にモンスターが徘徊している、状況報告を密にせよ、以上≫
「目の前にスライムが一匹、武器は無し、動きはあるがやや遅い、支援願う。」
≪了解≫
ずがっしゃ―――ん!!
スライムに雷が落ちた!!スライムは倒れた!
てれれてっててーーー!!!レベルが上がった!警備員はレベルが20になった!
雷の音を聞いて草原のモンスターたちが何事かと集まってきたぞ!!あれはサイクロプス!あっちにはワイバーン!こっちからはゴブリンの群れが!!向こうには色気がハンパない軍団が!!あれはもしやサキュバスとかインキュバスとかの類では?!ヤバイ!ここは全年齢版だ!!
「うわ!!目の前に大量のモンスターが!!支援!支援はよ!!」
≪具体的に種別を報告どうぞ≫
「えと、ええと、エロいのとでかいのとっキモいのにとんでるやつ・・・」
≪具体的に種別を報告どうぞ≫
「あ、あわわ。。。はよ!はよ!!」
ぶちゅ。
警備員はサイクロプスに踏みつぶされて絶命した。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
警備員は時間を巻き戻されて、コンビニ入り口前に立っていた。コンビニ前で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが、それに気づく様子はない。
警備員はコンビニで消臭剤とシーフードカップ麺を買って帰路についた。自宅近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あとちょっと早く通りかかってたら今晩警備なしになるとこだったな…。」
警備員は、たまに警察に間違われつつも穏やかにビルの安全を見守り続けていたのですが、ある時プロポーズが成功してテンションが上がってしまいステップを踏んで巡回していたのをたまたま一般人が撮影してアップした動画が信じられないほどバズってしまってからはずいぶん落ち着かない警備をするようになり、仕事を引退した後も落ち着かない毎日を過ごしたのち67歳でこの世を去ったという事です。




