第三章 one's stage(三)
またしても、目の下にクマを作ってしまった。
姿見の向こうから、くたびれた美少女が見つめている。
秀の野郎、まじで一睡もさせやがらなかったぜ。
あの情熱は、どこから湧いてくるんだ。少しは、あやかりたいものだね、まったく。
紫のニーハイブーツにミニスカート、頭に尖がりハットと来て、最後にマントを羽織って仕上げる。トップにハート飾りの付いたステッキまで持つよう要求された。極めつけは、ピンクの巻き髪ウイッグだ。胸元まで、ふわふわしていて、落ち着かない。
「よし。我ながら最高の出来栄え。この僕がプロデュースしたんだ。もう、美麗さんだと気付く人はいないよ」
「そうでしょうか」
殿方とふたりにするわけにいきませんと、シスターも院内の魔女っ娘委員会本部事務所で貫徹レースに参加したのだ。
「そうに決まってます!」
秀くんの自信は、そうとうなものである。
☆☆☆
やばい。この俺が全校生徒の前でバガなステージ衣装を着て踊る?公開処刑もいいところだろ。
さっさと星を上げて、棄権してやる。
容疑者は、憤慨中の秀くんを除く関係者12名。そのうち、事務所の鍵を持たない者、メールが送信された時間アリバイのある者を差し引いて、さらに大会に出資した人物を除外すると、残り3名まで絞り込むことができた。
一人は、魔女っ娘コンテスト歴代優勝者。言わずと知れた我が校の人気女性体育教師 瑞木ゆう(みずきゆう)女史である。
二人目は、事務所のお荷物と虐げられている雑用係の男子生徒。
三人目は、事務所の顔といわれる宣伝部のイケメンルーキー。
舞台そでが、騒がしくなっできたぞ。覚悟しろ。役者は、もうそろってんだ。
☆☆☆
お荷物くんは、身体が横に大きいために立っているだけで多方面から叱られていた。さぞや、うっぷんがたまっているだろうと思ったが、恍惚としたその表情で理解できた。彼は、結構なマゾ体質だった。
一方、宣伝部のイケメンルーキーは、もうずっと魔女っ娘たちのご機嫌取りで忙しい。これも、仕事のうちなのか、はたから見れば、女の子に囲まれて、イケメンライフを楽しんでいる光景である。
ふたりは、人の目を引くという意味では、共通していた。この状況で簡単に尻尾を出すとは考えにくい。さて、どうしたものか。
残るは、美魔女体育教師だが、彼女は今舞台に立っていた。
デモンストレーションとして、コンテスト前に演技を披露しているのだ。
バンとはち切れそうな太腿を振り回して、箒と空中ポールダンス。ううん、なかなか。激ミニのショートパンツからはみ出た下尻の、なんとも羨ましいことか。
「魔女っ娘のみなさんは、そろそろ、スタンバイしてください」
いかん。吸い込まれるようにそのまま、舞台に上がってしまうところだった。会場からは手拍子がはじまり先生が観客の心を掴んでいることを伺い知れる。さすが、惚れさせてなんぼだね。こんなところで涎を垂らしている場合ではないぞ、俺。
スタッフの動きが機敏になり、いよいよ本番の熱が伝わってきた。その中心で指揮をとっているのは、もちろん、秀くんだ。戦国武将顔負けのオーラを放っている。なんか、俺、お前が羨ましくなってくるわ。
「いやあああああ!」
瑞木先生?!




