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第三章 one's stage(二)

「美麗さん、一緒に探してくださって、ありがとうございました」


「いや」


止めろよ。余計、落ち込むではないか。

結局、(ほうき)の居所はつかめないままである。シスターは、俺に責任はないというが、簡単に割りきれないのが持ち前の性格だ。ちゃんと錠をかけたと思ったけどな。



俺は、焼きそばパンを食いちぎった。青々とした空の日は、中庭のベンチがいい。青い風は不思議に、ちっぽけな(わだかま)りをさらってくれるように思えた。

隣のシスターが手のひらサイズの弁当箱を広げて、卵焼きをつついている。


遠くのグラウンドでは、昼ご飯を食べ終わった生徒たちがもう駆け回っているようだ。若いな。


校舎のガラス窓に反射した自分と目があって、そういえば、今は、自分も中学生であったと思い出す。せっかくの美少女も緑のジャージで胡坐を組んでいては、台無しか。




「美麗さん!ここだったんだ。随分、探したよ」


彼に探されるとは思わなかった。滌田秀男できたひでお、学校一の秀才である。クラスメイトだが、今まで、そう仲良く話した記憶はない。


「どしたんだよ。んな血相変えて」


「や、内密にお願いしたいことがあってね。君にとっても悪い話ではないと思うんだ」


秀くんは、ちらりとシスターに目をやった。


彼女は気付かないふりをしている。


「大丈夫(訳:今お前と二人きりになりたくない。長年築き上げてきた勘がいう)。続けて」


「あ、ああ。実は、今朝がた、こんなものがパソコンに送られて来たんだ」


「どれどれ」



俺は、プリントアウトされたコピー用紙を広げた。



『西の舞台燃ゆるとき、16番目の女王を神に捧げよ


我、白の騎士を喰らう者なり』



「“西の舞台燃ゆるとき”、つまり、明日の夕方開催されるミスコンのことだ。“16番目の女神”、これは、当大会が今年で16回目を迎えることからして、


この文章は、


“明日開催のミスコン優勝者に危害を加える”と読み取れる。


実はね、僕は、この大会の実行委員長なんだ」


「え、ミスコン?!」


驚く要素は、まだまだあるのだが、俺は一番印象に残った単語に反応した。


「美麗さん、まさか、忘れていたわけあるまいね。僕にとっては、守り神の生誕祭より威厳あるイベントだ」


秀くんは、やはりシスターの目を気にした。


「そこで、ここからが本題なんだが、君、このコンテストに出場してもらえないだろうか」


「俺がミスコンにか?!」


「ただのミスコンと侮ってもらっちゃ困るよ」



秀くんは、ピンクのペラ紙を読むよう促した。



『第16回 魔女っ娘コンテスト開催決定!


今年のテーマは「めためたメタモルフォーゼ」


栄光の王冠は誰の手に!目撃者はキミだ。



主催:魔女っ娘推進委員会


開催日:××年×月×日


場所:当学院グラウンド特設ステージ※雨天決行』



魔女っ娘……好きなんだね……


学年一のきみが、乙女の像の守り手に選ばれなかった理由が少し理解できたよ。


「早い話が、美麗さんには、参加者に扮して、犯人を捕らえてもらいたい」


「もし、彼女が優勝してしまったら、どうなさるおつもりですか」


シスターが横から口を出ししてきた。ばっちり聞いていたのか。



「それは、どうかな。ただのミスコンなら、美麗さんが優勝候補になるだろうが、これは魔女の品格を問われる選手権だからね。ふっ」



お前は、俺に頼み事をしているのか、(けな)しているのか。



「だが、潜入調査という点では、美麗さんをおいて、他には考えられないね。魔力、容姿、経験値、どれを取っても、きみの右に出るものが居ないのは明白だ」


そうまで、言われると悪い気がしないな。


「もちろん、ただでとは言わない」

彼は、ブレザーの胸ポケットからメモリーステックをちらつかせた。


「学年一位の僕が過去5年分のデータベースを元に割り出した予想問題集だ。これさえあれば、きみは、今後一年間、中間テストや期末テストの対策に時間を取られることはないだろう」


「おい、滌田、コスチュームはどうする?」


「美麗さん!滌田さんも滌田さんですよ。そもそも、どうして、コンテストに紛れ込む必要があるのです。出場者に危険が迫っているなら、イベント自体を取りやめるのが常識ではありませんか」


「お言葉ですが、シスター!これは、僕たち、魔女っ娘推進委員会の、いや、全生徒に対する裏切りです。


実は、さきほどの脅迫メールの発信元が事務所に固定しているパソコンにありました。全9台のうち、唯一、立ち上げのパスワードさえ知っていれば、自由に使うことができる機種です。ちなみに、パスワードは、委員会の者と一部のゲスト参加者のみで共有していました。


お分かりいただけるでしょうか。私は、身内からこのような犯罪者を出してしまったことが悔やまれてならないのです。この恥ずべき行為を自分達で討伐せねば、僕たちに明日はありません」


魔女っ娘に対する彼の並々ならぬ情熱が伝わってくる。これで、断ったら、今度は俺が血祭りだ……



「はい、美麗さん、これ持って。コスチュームは、後でサイズ調整しよう。こっちが薬草の調合についての資料だろう。で、これが魔女の歴史クイズ模範解答例。箒の訓練は、夜になるな」


「おい、滌田。“ハートずっきゅん。あなたにめらりんこ”とか書いてある妙な紙が紛れ込んでるぞ」


「ああ、最終審査で歌ってもらう歌詞だ」


じょ、冗談きっついな……はは。


あれ、秀くん、目、目が怖いよ。


「美麗さん。今夜は、寝させないよ!」


シスターは、不機嫌そうに唇を尖らせた。



【クエスト01 潜入捜査で犯人を取り押さえ、魔女っ娘コンテストを成功させよ!】

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