第三章 one's stage(四)
秀くんの指示で、ステージ脇に待機していた運営スタッフが先生の元に飛び出した。
グラウンドがざわつき始める。
「箒が、箒が」
俺が、ステージに駆けつけたときには、スタッフによりかかって、わなわな人差し指を震わせている先生と、その指し示す先に白光する箒が浮遊していた。
『あなた、いい歳して、まだ誰かにしがみついてるの』
子供の声?
箒が強く光を放ち、半透明な女の子に変容した。
「あれは!伝説の魔女っ娘まみりん」
俺の背後から追いついた秀くんが口を半開きにして前に出た。
「なんだ、伝説の?」
「ああ、伝説の魔女っ娘まみりん、豊富な知識と魔力を有し、その実力は、悪魔をも恐れるといわれた。ところが、ある日、こつ然と姿を消し、今や伝説の魔女として語り継がれている。信じられない。俺は、今、彼女と同じ空気を吸っているんだ」
秀くんが感極まっているなか、先生とまみりんの緊迫状態は続いている。
「わたくしに会えてそんなに嬉しいのかしら。その怯えた表情、そそられるわね」
「知らなかったのよ。私をコンテストに優勝させようとした彼が勝手にしたことなの。あなたを箒の中に封じ込められるような力、私にあるはずないでしょう」
「お前はそれを知りながら、私が、消えるのをただ黙ってみていたというのか!あの愛の言葉は偽りか!」
「……」
「わたくしの心を踏みにじった罪は重くてよ」
もしや、これは!ガールズラヴのもつれ?!
「お待ちください」
秀くん。お前、勇者だな。
「お噂はかねがね聞いております。魔女っ娘まみりんといえば、魔女の中の魔女。さきほどの話、私も心を痛めました。ここは、どうでしょう、御二方で魔女対決をなさっては」
「ほう。お主、なかなか良いことを言うたな」
ただ見たいだけだろ。生で試合を観戦したいだけだろ。
「よし。では、窒素爆弾対決といこうか」
アホか!!!!んなもん、地球規模でお陀仏だぜ。魔女がなんで核兵器なんだよ。
会場の歓声が後押しして、ステージ場は、今にもゴングが鳴り出しそうな熱気に包まれている。
お前ら、何も考えてねーだろ。
くそう、俺が早く謎を解き明かしていたら、こうなる前に事態は収束できたかもしれないのに。箒が犯人だなんて有りかよ。ただ、あの予告状に書かれていた16番目の女王というのはなんだ。先生が女王として輝いたのは、確か第4回大会から三年間。
おい。もしかして、あの箒は、昨日、体育館から逃げ出してきたものではなかったか。先生が踊っているとき、先端に微かだが緑の繊維が見えた気がする。俺のジャージ?!なら、魔女っ娘まみりん(=箒)が自由になるその前に犯行声明文が送信されたことになるぞ。
『ちょっと見て見て』
『空に誰か跳んでる』
『黒い翼に山羊の角、威厳ある獣の風格』
『おい、あれってまさか』
グラウンドのだれかがつぶやいた。
「“悪魔バフォメット”だ」




