初依頼と隠された才能
第二話 初依頼と隠された才能
翌朝。
王都の空は雲ひとつない青空だった。
宿屋の小さな部屋で目を覚ましたレインは、昨夜の出来事を思い返していた。
「夢……じゃ、ないよな。」
恐る恐る手をかざす。
すると、目の前に金色の文字が静かに浮かび上がる。
⸻
【神眼鑑定 Lv.MAX】
使用者:レイン・アルフォード
称号:世界に唯一の神眼継承者
能力
・真名鑑定
・未来鑑定
・潜在能力鑑定
・アイテム真価鑑定
・進化条件表示
・隠しダンジョン探知
・危険予知
・スキル解析
⸻
「本当に使えるんだ……。」
胸の鼓動が早くなる。
昨日までは「役立たず」と呼ばれていた自分が、今では誰も持たない力を手にしている。
だが、力があっても金がない。
財布を開けば、銀貨が三枚。
宿代を払えば数日しか持たない。
「まずは依頼を受けないと。」
レインはギルドへ向かった。
昨日追放されたばかりの場所へ戻るのは気が重かったが、生きていくためには仕方がない。
ギルドの扉を開くと、何人かの冒険者が彼を見てひそひそと話し始めた。
「昨日追放されたやつだ。」
「Sランクをクビになったらしい。」
「何しに来たんだ?」
レインは聞こえないふりをして受付へ向かう。
「依頼を受けたいのですが。」
受付嬢のエマは少し驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔になった。
「もちろんです。今はソロですよね?」
「はい。」
「でしたら、薬草採取か、ゴブリン討伐がおすすめです。」
レインは依頼書を眺める。
薬草採取。
報酬は銀貨五枚。
ゴブリン討伐は銀貨八枚。
「……ゴブリンにします。」
戦闘経験がないわけではない。
荷物持ちだったとはいえ、四年間ダンジョンへ同行してきたのだ。
剣くらいは扱える。
「お気を付けて。」
依頼書を受け取り、王都近くの森へ向かった。
森へ入ると、神眼が勝手に反応した。
⸻
《北へ三百二十メートル》
ゴブリン群れ 七体
危険度:低
推奨討伐人数:一名
⸻
「場所まで分かるのか……。」
驚きながら歩く。
すると、さらに別の表示が現れた。
⸻
《左手の茂み》
薬草:十七株
市場価格:約金貨二枚
⸻
「えっ?」
依頼とは別に、売れる薬草まで表示されている。
しかも、価値まで。
レインは夢中になって採取した。
十分ほどで袋いっぱいになる。
「これだけでも結構なお金になるな。」
さらに進むと、今度は赤い警告が浮かぶ。
⸻
《危険》
落とし穴。
五歩先。
⸻
レインは立ち止まる。
枝を投げると、地面が崩れ、大穴が姿を現した。
「危なかった……。」
もし昨日までなら、そのまま落ちていただろう。
神眼は敵だけではなく、罠まで見抜いていた。
やがてゴブリンたちのいる場所へ到着する。
木陰で七体のゴブリンが騒いでいた。
レインは剣を抜く。
「落ち着け……。」
その瞬間。
⸻
《個体名:ゴブリン・リーダー》
弱点:首の左側
初撃命中率:九十八・七%
推奨行動:右へ一歩移動後、横薙ぎ。
⸻
「行ける!」
レインは飛び出した。
神眼が示した通りに剣を振る。
ゴブリンの首へ吸い込まれるように刃が走る。
「ギャアッ!」
一撃だった。
「本当に……!」
残る六体が襲い掛かる。
⸻
《次行動予測》
一体目:正面
二体目:左
三体目:飛び掛かり
⸻
表示通りだった。
レインは無駄なく回避し、一体ずつ確実に倒していく。
十分後。
七体すべてが倒れていた。
「勝てた……。」
息は上がっている。
だが、怪我一つない。
神眼は敵の動きすら先読みしていた。
戦闘が終わると、再び文字が浮かぶ。
⸻
条件達成。
初討伐を確認。
新機能を解放します。
【経験解析】
対象を倒すことで能力成長率を可視化できます。
⸻
「まだ増えるのか……。」
レインは思わず苦笑した。
すると近くの岩壁が淡く光る。
⸻
《隠し通路》
発見率:〇・〇〇〇一%
奥に古代遺跡あり。
⸻
「隠し通路?」
よく見ると、ただの岩にしか見えない。
しかし神眼は「入口」と表示している。
恐る恐る手を触れる。
岩が波のように揺らぎ、その向こうに暗い通路が現れた。
「本当にあった……。」
普通の冒険者なら一生気付かない場所だ。
レインは剣を握り直す。
「少しだけ、見てみよう。」
ゆっくりと足を踏み入れた瞬間、背後の岩が静かに閉じた。
薄暗い通路の奥から、青白い光が漏れている。
そして神眼が、これまでにない赤い文字を映し出した。
⸻
《警告》
神代遺跡を確認。
最奥部に伝説級存在を検知。
推奨実力:SSSランク以上。
ただし──
神眼継承者のみ、安全に最深部へ到達可能。
⸻
レインは思わず息をのんだ。
「神眼継承者だけが、入れる遺跡……?」
追放された青年の運命は、この遺跡との出会いによって、大きく動き始めようとしていた。




