役立たずはいらない。
王都の冒険者ギルドは、今日も依頼を終えた冒険者たちで賑わっていた。
その一角で、一人の青年が深く頭を下げている。
「申し訳ありません……。」
レイン・アルフォード。
二十歳。
Sランクパーティー『蒼天の剣』の一員だ。
……もっとも、そう呼ばれていたのは今日までだった。
「謝れば済むと思ってるのか?」
リーダーであり勇者でもあるカイルが机を叩く。
「お前が宝箱の罠を見抜けなかったせいで、俺の鎧は壊れたんだぞ!」
「ですが、罠は解除しました。」
「解除した後じゃ意味がない!」
酒場中に笑い声が響く。
「ははっ、またレインが怒られてる。」
「いつものことだ。」
レインは唇を噛む。
彼の固有スキルは【鑑定】。
敵の能力や武器の性能を見ることはできる。
だが戦えない。
攻撃魔法もない。
回復もできない。
そのため、長年「荷物持ち」として扱われてきた。
隣にいた魔法使いリリアがため息をつく。
「正直、あなたがいる意味ってある?」
僧侶ミーナも続く。
「経験値だけ吸ってるようにしか見えないわ。」
槍使いガルドは鼻で笑った。
「ギルドでも笑われてるぞ。Sランクに寄生虫がいるってな。」
一言一言が胸に刺さる。
それでもレインは反論しなかった。
この四年間、仲間だと思っていたから。
信じていたから。
しかし。
カイルは一枚の紙を机に置いた。
「追放通知だ。」
その言葉で、空気が凍る。
「え……?」
「お前は今日限りで蒼天の剣を追放する。」
「ま、待ってください!」
レインは思わず立ち上がった。
「俺は今まで……。」
「荷物を運んできました、だろ?」
カイルは鼻で笑う。
「犬でもできる。」
再び酒場が笑いに包まれる。
「四年間ありがとうございました。」
その一言だけを残し、レインはギルドを後にした。
夕焼けが王都を赤く染めている。
手元に残ったのは、安物の剣と少しばかりの金貨。
「これから、どうしよう……。」
彼は空を見上げる。
すると、不思議な声が頭の中に響いた。
条件達成。
神級鑑定スキルの制限を解除します。
「……え?」
目の前に金色の文字が浮かぶ。
⸻
【神眼鑑定 Lv.MAX】
・対象の真名を閲覧可能
・未来適性を閲覧可能
・隠し能力を閲覧可能
・アイテム真価を閲覧可能
・世界の法則を閲覧可能
・進化先を閲覧可能
・スキルコピー条件を閲覧可能
・神格存在を閲覧可能
⸻
「な、なんだ……これ?」
今までの【鑑定】とは比べものにならない。
試しに近くの石ころへ視線を向ける。
⸻
《賢者の霊石》
神代に作られた超希少鉱石。
市場価値:約五億ゴールド。
覚醒素材。
⸻
「えぇぇぇっ!?」
思わず叫ぶ。
今まで誰も見向きもしなかった石ころが、伝説級素材だった。
さらに足元を見る。
⸻
《古代竜の骨》
《世界樹の種》
《神鉄》
⸻
「この世界……宝だらけなのか?」
いや、違う。
今まで誰にも見えなかっただけだ。
見えるのは、自分だけ。
その瞬間、レインは確信する。
「俺……追放されてよかったのかもしれない。」
その頃。
蒼天の剣は新たなダンジョン攻略へ向かっていた。
「レインなんていなくても楽勝だ。」
そう笑っていた彼らは、まだ知らない。
レインだけが見抜けていた致命的な罠。
レインだけが見つけていた安全な道。
レインだけが判別できていた偽物の宝。
それらを失った彼らを待ち受ける未来を。
そして、追放された青年が、やがて「世界最強の鑑定士」と呼ばれることになる未来を――。




