第9話:4月18日「会ってみたいとは思わない?」
《マッチアプリ画面》
千佳:
こんばんは。
今日はなぜか、1日中眠かったです…
リョウさんは大丈夫でした?
リョウ:
こんばんは。お疲れさまです~
僕もです…午後、会議中に意識飛びそうになって、
自分のメモが象形文字になってました(笑)
千佳:
わかる(笑)
意識ギリギリのメモって、
後から見返すと「誰…?何の話…?」ってなりますよね。
リョウ:
そうそう(笑)
しかも、今日の会議、たぶん出なくても何も変わらなかったんじゃ…
って思うくらい、内容が薄くて(笑)
千佳:
あるあるすぎる(笑)
なんであんなに人数集めたがるんですかね…
あの空気の中で眠くなるなって方が無理です。
リョウ:
共感してもらえて救われます(笑)
ちなみに、今は何してるんですか?
もう布団入ってます?
千佳:
うん、ベッドでごろごろしてるだけです。
眠いけど、寝るにはまだ惜しい時間って感じで(笑)
リョウ:
わかるなあ、それ。
なんか、こういう夜って…不思議といろんなこと考えたりしません?
千佳:
しますね。
ちょっとセンチメンタルになるというか(笑)
リョウ:
で、ふと気になったんですけど、
千佳さんって…
このアプリで誰かと実際に会ってみようとか、思ったことあります?
千佳:
……おぉ、急に真面目なやつきた(笑)
リョウ:
ごめんなさい、変な意味じゃなくて(笑)
なんとなく、千佳さんって「このままがちょうどいい」って感じがするから、
あえて会わないタイプかなって思って。
千佳:
うーん、たしかに。
会ったら、きっと何かが変わる気がして。
良い方向に変わるかもしれないけど、
このバランスが崩れるのがちょっと怖いかも。
リョウ:
わかる気がします。
声を聞いたら、イメージと違って…とか、
話してみたら、なんか続かなくて…とか。
そういうの、怖いですよね。
千佳:
そうそう。
いまの、この距離感が心地いいから、
無理に変えたくないって気持ちはありますね。
リョウ:
でも、逆に考えると──
もし、いまのやりとりがずっと続いたら、
それってすごく幸せなことかもしれませんよね。
千佳:
うん、たしかに。
“顔も知らない誰かと、ちゃんと心のやりとりができる”って、
すごく贅沢なことかも。
リョウ:
だから、無理に「会うか会わないか」って話じゃなくて、
この関係のままでも、何かがちゃんと届いてる気がして。
それだけで十分な気もしてます。
千佳:
うん、私も。
今は…これで、いいのかも。
リョウ:
でもまあ、もし、
「ちょっとだけ会ってみるのもアリかも」って気分になったときは、
こっそり教えてください(笑)
千佳:
ふふ、わかりました(笑)
そのときは、まずは「見るだけ」とかにしましょうか。
お互い気づかれずに見てみる、とか(笑)
リョウ:
いいですね、それ。
なんか、映画のワンシーンみたいで(笑)
千佳:
やっぱりちょっと夢見がちかも、わたし(笑)
でも…リョウさんとだったら、
そういう約束も、ちょっと面白そうだなって思ってます。
リョウ:
じゃあいつか、“見に行く日”が来たら、そのときは。
千佳:
うん、そのときは。
リョウ:
さて、そろそろ眠りの準備に入ります(笑)
おやすみなさい、千佳さん。
千佳:
おやすみなさい、リョウさん。
また明日、ですね。
◆◇◆
(和人は、布団に潜りながら、
「見るだけなら、怖くないかもな」とふと思った。
声をかけなければ、笑わなくてもいいなら。
このままの“関係”を守ったまま、相手の姿だけを見られるのなら──)
(真子は、スマホのライトを消して目を閉じる。
会いたいわけじゃない。けれど、一度だけ見てみたい。
誰かと“心で繋がる”って、思っていたよりずっと、
不思議で、面白いものかもしれない)




