第7話:4月16日「ちょっとだけ黒歴史」
《マッチアプリ画面》
リョウ:
こんばんは。日曜の夜ですね。
この時間帯、若干さみしさが出てくるのは僕だけでしょうか(笑)
千佳:
わかります(笑)
日曜の22時って、妙に現実に引き戻されますよね…。
「あれ、今日何してたっけ?」ってなるやつ。
リョウ:
まさにそれ。
午前中は掃除して、午後は昼寝して、気づいたら暗くなってました(笑)
千佳:
最高じゃないですか(笑)
むしろ理想的な休日の過ごし方だと思いますけど?
リョウ:
いや~、なんか最近「僕って昔からこんな感じだったかな…」って思うことが多くて。
もっと動ける人間だったような気がするんですよね。
千佳:
え、リョウさんって学生の頃とか、アクティブ系だったんですか?
ちょっと意外(笑)
リョウ:
いやいや、そんなキラキラではないです(笑)
むしろ根暗寄りだったと思います。
中学の頃は昼休みに図書室で小説読んでるタイプでした。
千佳:
わ~、ちょっと想像できるかも(笑)
でも静かな人って、ちゃんと周り見えてるから好きですよ。
私はどっちかっていうと、空回り系でしたけど。
リョウ:
空回り系?それはそれで興味ある(笑)
千佳:
部活でリーダーシップ取ろうとして、張り切りすぎて嫌われるやつです(笑)
指示出しとか得意なタイプじゃないのに、
「頑張らなきゃ!」って力入りすぎて、すべったこと何度もあります。
リョウ:
うわ、それめっちゃリアル(笑)
周りからちょっと引かれて、でもやめ時も分からなくなって、
どんどん空気が悪くなっていくやつだ…。
千佳:
そうそう!(笑)
今なら「やめとけ!」って過去の自分に言いたい(笑)
リョウ:
じゃあ、千佳さんの黒歴史第一位はそのへんですか?
千佳:
うーん…でも本当に黒歴史なのは、
高1の時に好きだった先輩に渡せなかった手紙、かな(笑)
リョウ:
おっ、なんか青春。
で、結局どうなったんですか?
千佳:
いや、何もないです。書いたままカバンに入れっぱなしで、
ある日、親に読まれました…。
リョウ:
えっ、それ一番つらいやつじゃないですか(笑)
千佳:
帰ったら、母親が「文章は丁寧だけど重いね」って言ってきて、
一生引きずるトラウマになりました。
リョウ:
それ、たしかに第一位にふさわしい(笑)
でもなんか、そういうのもちゃんと話せるの、いいですね。
千佳:
リョウさんは?黒歴史あります?
リョウ:
僕はですね…高2の時、
クラスの女子に「君に告白された夢を見た」ってうっかり口走って、
半年くらいネタにされました。
千佳:
えっ、なにその青春爆弾(笑)
なぜ言ってしまったのか…
リョウ:
ほんとに。たぶんテンションおかしかったんですよね…。
今でも思い出すと、胸が苦しくなります(笑)
千佳:
でも、そういうのも全部ひっくるめて、
今の自分があるって思えば…まあ、笑える範囲ですね(笑)
リョウ:
ですね。
それに、こういう話ができる相手って、けっこう貴重ですし。
千佳:
お、またちょっと良いこと言った?
リョウ:
今回は褒めてません(笑)
ただの事実です。
千佳:
了解です(笑)
ではでは、そろそろ寝ます~。
明日からまた平日ですね、お互いがんばりましょう。
リョウ:
うん、がんばりましょう。
おやすみなさい、千佳さん。
千佳:
おやすみなさい、リョウさん。
◆◇◆
(和人は、布団に入ってスマホを胸に乗せたまま、うっすら笑った。
過去の話を誰かに話すのって、勇気がいるはずなのに。
どうしてこんなに軽く出てくるんだろう──そう思いながら、目を閉じた)
(真子は、メッセージの履歴をふとスクロールしながら、
「ちゃんと毎日やりとりしてるな…」とつぶやいた。
誰かと日常を重ねるって、こんな形でもできるんだ。
そう思えた今夜は、少しだけ穏やかな気持ちだった)




