第6話:4月15日「理想の休日って、どんなの?」
《マッチアプリ画面》
千佳:
リョウさん、おはようございます。
今日はお休み取れましたか?
リョウ:
おはようございます。
はい、めずらしく何の呼び出しもなく(笑)
ちゃんと休みです!
千佳:
よかった~。
わたしも今日はお休みです。
久しぶりに目覚ましかけずに寝たら、
見事に10時半でした(笑)
リョウ:
それは見事ですね(笑)
ちなみに今日はどんなご予定で?
千佳:
うーん…洗濯して、掃除して、あとは近くのカフェでのんびりしようかなって。
カウンターだけの小さなお店があって、
そこでコーヒー飲みながら文庫本読むのがちょっとした贅沢なんです。
リョウ:
めちゃくちゃ優雅ですね…。
朝起きた瞬間から「今日は終わった」と思った自分とは真逆(笑)
千佳:
え、なにしてたんですか?(笑)
リョウ:
起きて、ベッドでスマホ見ながら1時間潰して、
そのあと冷蔵庫見たら何もなくて、コンビニ行って、
カップラーメン食べながらテレビ観てました。
千佳:
それはそれで“休日の王道”って感じしますけどね(笑)
カップラーメンも、あえて食べると美味しいですよね。
リョウ:
わかってもらえて嬉しい(笑)
たまに無性に食べたくなるんですよね、あの味。
で、午後はどうします?
千佳:
うーん…洗濯物取り込んだら、
さっきのカフェに行って、夕方にスーパー寄って帰るかな。
冷蔵庫がちょっと寂しいので(笑)
リョウ:
お、意外としっかりしてる。
千佳:
“意外と”ってどういう意味ですか(笑)
リョウ:
いや、なんとなくです(笑)
でも、そういうちゃんと生活してる感じ、
ちょっと憧れますね。
僕はすぐサボっちゃうので…。
千佳:
それもそれで、ちゃんと自分のリズムがあるってことじゃないですか?
理想の休日って、正解ないですよね。
寝たい人は寝ればいいし、動きたい人は動けばいいし。
リョウ:
たしかに。
でも、たまに「これでよかったのかな…」って不安になるんですよね。
せっかくの休日、もっとちゃんと楽しむべきだったのかなって。
千佳:
それ、ありますよね…。
“せっかく”って言葉に振り回されるやつ(笑)
でも、何もしなかった日も、
なんとなく満たされてたら、それでいい気がします。
リョウ:
うん、そうかも。
“なんとなく満たされてる”って、今のこのやりとりみたいな感じですね。
千佳:
あ、それはちょっと上手いこと言いましたね(笑)
でも…わたしも、こうしてメッセージのやりとりをしてる時間、けっこう好きですよ。
だらだらしてても、誰かと繋がってる感じがあるって、
すごく貴重かもしれません。
リョウ:
ほんとに。
お互い、名前も顔も知らないのに、
こんなに普通に喋ってるの、不思議ですね。
千佳:
不思議だけど、変じゃない。
それってたぶん、お互い変に背伸びしてないからかなって思ってます。
リョウ:
うん。
“ちゃんと話せる誰かがいる”ってだけで、
休日の満足度、ぐっと上がりますね。
千佳:
それ、わたしもメモしときます(笑)
ではでは、そろそろ洗濯物取り込んできます。
リョウ:
いってらっしゃい~。
午後ものんびり、いい休日を。
千佳:
リョウさんもね。
◆◇◆
(千佳=和人は、スマホをソファの上に置きながら、ふと空を見た。
風に揺れるカーテンと、乾きかけた洗濯物。
少し前まで、こんな休日は「ただの空白」だった。
でも今は、その空白を一緒に眺めてくれる相手がいる。
それだけで、色のついた一日になっていた)
(リョウ=真子は、コンビニの袋を片手に部屋へ戻り、
ふとメッセージを見返して微笑む。
「ちゃんと誰かと繋がってる」っていう安心感。
それが今、自分の一番求めていたものだったのかもしれない)




