第28話:5月7日「友達だったら、会えたのかな」
《マッチアプリ画面》
千佳(10:12)
おはようございます。
休日初日なのに、
いつも通りの時間に目が覚めちゃいました(笑)
リョウ(10:15)
おはようございます。
わかります(笑)
体がもう“百貨店仕様”になってますよね。
千佳(10:17)
ほんとそれです(笑)
でも今日は、何も予定入れずに
洗濯して、部屋片付けて、
あとはのんびりしようかなって思ってます。
リョウ(10:20)
いい休日ですね。
自分も似た感じです。
コーヒー淹れて、
ベランダでちょっとぼーっとしてました。
千佳(10:23)
ああ…その光景、
なぜか想像できちゃいます(笑)
静かな朝って、いいですよね。
リョウ(10:26)
ですね。
こういう時間があると、
いろんなこと考えちゃいますけど。
千佳(10:28)
……うん。
考えちゃいますね。
(少し間が空く)
千佳(10:31)
ねえ、リョウさん。
ちょっと変なこと言ってもいいですか。
リョウ(10:32)
はい。
変じゃなければOKですし、
変でも聞きます(笑)
千佳(10:35)
最近、
リョウさんと話してると楽しいのに、
同時に、
ちょっとだけ胸が苦しくなる時があって。
リョウ(10:38)
……
自分も、同じです。
千佳(10:40)
なんでだろうって考えたら、
たぶん、
“ちゃんと話してるのに、ちゃんとじゃない部分がある”
って感じがして。
リョウ(10:44)
……
それ、すごく分かります。
言葉は正直なのに、
立場というか、設定というか…
そこだけが、少しズレてる感じ。
千佳(10:47)
うん。
嘘をついてるわけじゃないんだけど、
全部本当でもない、みたいな。
それが、
だんだん気になってきちゃって。
リョウ(10:50)
自分、
最近それを“罪悪感”って呼んでます。
千佳さんに向けてる言葉は本音なのに、
自分が“リョウ”でいることが、
ちょっとだけ後ろめたい。
千佳(10:53)
……
リョウさんも、そう思ってたんですね。
リョウ(10:55)
はい。
だからこそ、
もしこれが…
同性同士だったらって、
何度も考えました。
千佳(10:58)
……!
それ、
わたしも同じこと考えてました。
リョウ(11:01)
ですよね。
もし同性で、
ただの友達として出会ってたら、
「会おう」って、
もっと簡単に言えた気がして。
千佳(11:04)
うん…。
友達だったら、
お茶するだけでもいいし、
仕事の愚痴言い合うだけでもいいし。
変に構えなくて済んだのに、って。
リョウ(11:07)
そう。
今は、
“会いたい”って思う気持ちに、
意味が乗っかりすぎてしまうから。
千佳(11:10)
わたし、
恋愛したいとかじゃないんです。
ただ、
リョウさんがどんな人なのか、
ちゃんと知りたいだけで。
リョウ(11:13)
……
それ、
自分も全く同じです。
だから余計に、
この気持ちの置き場が分からなくて。
千佳(11:16)
相手が男性だから、
踏み込んじゃいけない気がして。
でも、
同性だったらって考えると、
すごく自然に思えてしまう。
リョウ(11:19)
本当は、
友達として会えたら一番いいんですよね。
でも、
今の関係だと、それが許されない気がして。
千佳(11:22)
……うん。
会いたいのに、
会わない方が優しい気がしてしまう。
リョウ(11:25)
それが、
今の自分たちのジレンマなんでしょうね。
千佳(11:28)
でも、
こうして話せてること自体は、
大切にしたいです。
リョウ(11:30)
自分もです。
だから、
答えを急がなくていい気がしてます。
千佳(11:32)
うん。
今日は休日だし、
この話はここまでにしましょうか。
リョウ(11:34)
そうですね。
少し、コーヒーでも飲みましょう。
千佳(11:36)
はい(笑)
またあとで、
他愛ない話しましょう。
リョウ(11:37)
ぜひ。
◆◇◆
(和人はスマホを置いて、
胸の奥に残る“正直でいられない自分”の感覚を噛みしめていた。
もし相手が男だったら、
どんなに楽だっただろう。
そう思ってしまう自分が、
いちばんの嘘つきなのかもしれない、と)
(真子は、
「友達だったら会えた」という言葉を、
何度も頭の中で繰り返していた。
自分が女であることを知らない相手に、
その未来を想像させてしまったことが、
少しだけ、胸を締めつけた)




