第26話:5月5日「“本当の自分”だったら、もっと仲良くなれたかな」
《マッチアプリ画面》
リョウ(19:45)
こんばんは。
あと2日…あと2日でGW戦線終了です…!
今日は気力だけで立ってました(笑)
千佳(19:49)
こんばんは。
ほんとそれです(笑)
お客様の「GWもあと少しね」ってセリフに、
「私たちは今が山場です」って心の中で返してました。
リョウ(19:51)
あはは(笑)
それ、めっちゃ分かる。
GW最終日の夕方には全スタッフに表彰状あげてほしい…。
千佳(19:55)
むしろ賞与が欲しい…(笑)
でも、やっぱりこの仕事って、
疲れるけど、ちょっと“好き”かもしれないって思います。
忙しすぎる日は特に。
リョウ(20:01)
自分もです。
バタバタしてると、逆に変なテンションで回せるというか(笑)
お客様に「ありがとう」って言われると、
一瞬でエネルギー満タンになりますよね。
千佳(20:03)
うん、ほんとに。
あと、お客様がリピートで来てくれた時の“信頼された感”とか。
小さなことなんだけど、ちゃんと自分が仕事してるって感じられる。
リョウ(20:07)
千佳さんの言葉って、いつも丁寧で好きです。
なんか、ちゃんと物事を感じながら働いてるんだなって伝わってくる。
千佳(20:08)
うわ、急に褒められると照れます(笑)
でも、そう言ってもらえるの嬉しいです。
リョウさんも、よくそうやって言葉を丁寧に選んでくれてる気がして。
そういうの、ちゃんと伝わってますよ。
リョウ(20:11)
ありがとう…。
たぶん学生時代とか、
言葉がうまく使えなくてうまく人と関われなかったぶん、
今は“ちゃんと伝えたい”って気持ちが強いのかも。
千佳(20:14)
……それ、分かる気がします。
わたしも、昔は人に合わせてばかりで、
気づいたら“自分の本音”ってどこにあるんだろうってなってたことあって。
リョウ(20:17)
それっていつ頃ですか?
千佳(20:21)
大学生の頃ですね。
女の子同士の空気って、けっこう複雑で…
本当は行きたくないコンパにも付き合ったり、
“楽しいフリ”してる時間が長くて。
リョウ(20:26)
なんだか、
今の千佳さんからは想像できないですね。
いつも自然体で、
ちゃんと自分を持ってる印象だったから。
千佳(20:29)
ふふ、それ“演じてるリョウさん”が言う?(笑)
でも、
たぶんわたし、リョウさんと話してる時だけ、
“本当の自分に近いところ”でいられてる気がします。
リョウ(20:33)
……自分もです。
どんどん“素の自分”が出てきてる気がして。
おかしいですよね、本当は…
千佳(20:37)
おかしくないです。
むしろ、
そんなに素って出せないですよね?
ちゃんと“心”で話してるからこそじゃないかな。
リョウ(20:39)
……千佳さん、ほんとすごいですね。
言葉の選び方が、たまに心にすっと染みる。
千佳(20:41)
それ、リョウさんがいてくれるからですよ(笑)
たぶん、誰にでもこうじゃないです。
リョウ(20:44)
…ねぇ、千佳さん。
もし、
もしもお互いが“本当の姿”だったら──
もっとちゃんと、仲良くなれてたと思いますか?
千佳(20:47)
……うん。
たぶん、すごく仲良くなってた気がする。
友達としても、
もっとたくさん一緒に笑えたかもしれない。
リョウ(20:50)
うん、
自分もそう思います。
(“本当の姿”を素に置き換えてみたけど…
でも、今の会話は確実に、
それを暗黙のうちに共有しているやりとりだった)
千佳(20:54)
でも、
こうして出会えたことが嬉しいって気持ちは、
変わらないです。
リョウ(20:55)
自分もです。
きっとそれが“答え”なんでしょうね。
千佳(20:56)
うん。
明日もあと一日、頑張りましょうね。
おやすみなさい、リョウさん。
リョウ(20:57)
おやすみなさい、千佳さん。
今日も、あなたと話せてよかったです。
◆◇◆
(和人は、
「もし本当の自分で千佳と出会っていたら」と、
何度目かの“ありえた未来”を思い描いた。
でも同時に、
“今こうして繋がっていられるこの関係”を壊したくなくて、
やっぱり今日も言えなかった──自分が千佳ではないことを)
(真子は、
「リョウの言葉が、なぜこんなに優しく届くのか」と思いながら、
画面を閉じた。
そこにいるのが“本当の男”じゃなくても、
その言葉は、たしかに心を抱きしめてくれていた)




