第20話:4月29日「今日、何も話せなくても」
《マッチアプリ画面》
リョウ:
こんばんは。
ついにGW突入ですね。
今日はもう、言葉が出ないくらい疲れました(笑)
千佳:
こんばんは。
わたしもです…
朝からお客さんの波が途切れなくて、
気づいたら昼休憩、15時半でした(笑)
リョウ:
おつかれさまです……。
なんだかんだ、やっぱり百貨店って連休は別世界ですね。
千佳:
うん…
“人の多さで耳が疲れる”って久しぶりに思いました(笑)
リョウ:
わかります(笑)
声が多すぎて、空気に音が染みてる感じしますよね。
千佳:
その表現、めっちゃ分かる(笑)
しかもGWって、みんなテンション高めだから、
売り場全体がちょっと浮いてる感じ。
リョウ:
そうそう(笑)
お客さんの“買うぞ”モードに、
こっちも自然と押し流されるというか。
千佳:
それでも、
こうしてメッセージできる時間があるの、ちょっと救われます。
リョウ:
ほんとに。
言葉数は少なくても、
このやりとりが続いてるだけで、なんか落ち着く。
千佳:
リョウさんも、
今日はちゃんと休んでくださいね。
睡眠って、ほんとに偉大ですから(笑)
リョウ:
はい(笑)
お互い、あと何日かこの“戦い”続くけど、
なんとか乗り切りましょう。
千佳:
うん。
そして平日の静けさを噛みしめたいですね(笑)
リョウ:
静けさ、待っててくれ~って感じです(笑)
でもほんと、
こうして話せるだけで今日も悪くなかったです。
千佳:
わたしも、そう思います。
じゃあ、また明日も「今日も疲れたね」って言えるように、
がんばりましょう(笑)
リョウ:
その約束だけで十分です(笑)
おやすみなさい、千佳さん。
千佳:
おやすみなさい、リョウさん。
お互い、無事に明日を終えられますように(笑)
◆◇◆
(和人はスマホを見つめたまま、
“もうこの会話をしない日が来たら、自分はどうなるんだろう”と考えていた。
でも、その考えはすぐに追いやった。
今は、ただこのやりとりを続けることだけを願っていた)
(真子は、洗面台で顔を洗いながら、
鏡の中の自分に「今日もリョウだった」と呟いた。
でも、“リョウ”でいられる時間が、
今の自分をいちばん支えていることに、もう気づいていた)




