第18話:4月27日「失敗して、自分に冷たくなった日」
《マッチアプリ画面》
千佳:
今日は、ちょっと落ち込み気味です。
仕事でミスしました…。
しかも、わりと初歩的なやつです。
リョウ:
こんばんは。
大丈夫ですか…?
どんなミスだったんですか?
千佳:
お客様に渡すはずの予約特典、
入れ忘れてしまって。
そのまま帰られて…
数時間後にクレームの電話が来て、
私、完全に固まりました。
リョウ:
ああ、それはきつい…。
お客さんにも悪いし、
何より自分が一番ショックですよね。
千佳:
はい…。
その後、先輩に指摘されて、
「千佳さんらしくないね」って言われて、
それが一番効きました。
リョウ:
わかる…。
責められてるっていうより、
“信頼されてた分、がっかりさせた感”が痛いんですよね。
千佳:
まさに、それです。
自分で自分に「何やってんの」って何回も思って、
気づいたら、
今日ぜんぜん笑ってなかったなって。
リョウ:
……
でも、それだけ落ち込むってことは、
ちゃんと責任感持ってやってたってことだと思います。
自分に厳しいの、悪いことじゃないけど──
たまには、自分にも「よくやってるよ」って言ってあげてください。
千佳:
……
それ、
今の私には、すごく染みます。
ありがとう、リョウさん。
リョウ:
どういたしまして(笑)
でも、ほんとにそう思ってるんですよ。
千佳さんって、
たぶん「できる人」って思われることに慣れてる分、
ちょっとつまずくと、自分をすごく責めちゃうタイプな気がして。
千佳:
……なんで、そんなにわかるんですか(笑)
初めて言われたのに、
妙にしっくりきました。
リョウ:
なんとなく、
自分もそうだからです(笑)
「ミスしない自分」でいようとして、
完璧じゃない瞬間が許せなくなるっていうか。
千佳:
……
もしリョウさんが女の子だったら、
絶対仲良くなってたと思います。
愚痴とか言いながら、
コンビニスイーツとか一緒に食べてそう(笑)
リョウ:
それ、完全に想像できました(笑)
お互いのミスを報告し合って、
「そんなの気にすんなよ~」って言ってる未来。
千佳:
あー…そういう友達、
今ちょっと欲しいなって思いました。
(和人:
まただ。
“同性だったら”って、
それが本当だったら、
この距離をずっと保てるのに──
って、思ってしまう自分がいる)
(真子:
こんなに、心の内をさらけ出せる相手なのに。
“リョウ”としてじゃなく、
“真子”のまま出会ってたら、
もっと普通に寄りかかれたのかもしれない)
リョウ:
もし次、ミスしそうになったら、
「リョウが見てる」って思ってください(笑)
千佳:
それはちょっとプレッシャー(笑)
でも…嬉しいです。
誰かにそう言ってもらえるだけで、
ちゃんと次がんばろうって思えるので。
リョウ:
じゃあ今日は、
ちゃんとミスした自分にも「お疲れさま」って言って、
あったかくして寝てください。
千佳:
はい…。
リョウさんも、お疲れさまでした。
今日の言葉、ほんとに救われました。
リョウ:
良かった。
じゃあ、また明日も話しましょう。
千佳:
うん。
おやすみなさい。
リョウ:
おやすみなさい。
◆◇◆
(和人はスマホを置いて、深く息を吐いた。
人に優しい言葉をかけながら、
自分がその人を“騙している”という事実だけが、
夜になると濃くなっていく。
それでも、
今日の千佳の「ありがとう」は、
まっすぐに響いていた)
(真子は、ベッドに潜り込んで天井を見た。
リョウとして励ました言葉は、
不思議と“真子自身”にも向けられていた気がする。
「自分も、自分に優しくしなきゃな」──
そんなふうに思えた夜だった)




